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02:海底ダンジョン

『あれが海底ダンジョンですか?』



 私はそうクマさんに、念話を送り尋ねた。


 クマさんの後に続き海底を進むと、そこには青白い光を放つ、ダンジョンの入り口があった。

 海底ダンジョンの入り口は、四角く口を開け、まるで古代の遺跡のように見える。

 辺りはサンゴや海藻に、覆われており、色とりどりの魚が泳いでいた。



『中に入ってみようぜ! お宝があるかもしれねえ!』



 クマさんはそう私に念話を返すと、泳いでダンジョンの中に向かった。

 ちなみに念話は、直接相手の頭の中に、言葉を送る精神魔法の一種である。

 私が習得したのは、かなり前になるが、今まで使う機会のなかった魔法だ。


 念話はおくる相手も、特定できるので、諜報的に優れた魔法と言える。

 今回はクマさんと、海中で会話をするために、使用することになったのだ。


 クマさんは魔法で作った、空気の膜から下半身を出して、足をばたつかせて器用に泳いでいる。

 その遊泳速度は、なかなかのものだ。


 対して私は、空気の膜で全身を覆い、見えざる手によって移動しているので、少し遅れ気味となっている。

 まあ着ているエプロンドレスが、濡れるのが嫌なので、全身膜で覆うしかなかったのだがね。

 クマさんにはそんな格好で、海に入るなとか言われたが、異世界の淑女は、常に優雅でなければならないのだ。

 ドレスを脱いで肌をさらけ出すなど、あってはならない行為だ。はしたにゃい!!


 だがなんとかクマさんと、同じ速さで移動する方法を見付けないと、さらに距離を離され、最悪置き去りになる可能性もある。

 こんな海底の不気味なダンジョンで、置き去りは勘弁願いたい。


 見えざる手を背中ら生やして、魚の尾ヒレの形にして動かせば、もっと速く進めるかもしれない。

 そう思った私は、早速その方法を試してみた。 



『おお! 上手くいった!』



 すると私は直立したまま、海底を速く移動することができた。



『嬢ちゃんそれなんか不気味・・・・』



 するとクマさんに、不気味がられた。

 どうやら薄暗いダンジョン内を、直立で移動する幼女は、不気味に見えるようだ。

 ドレスの淑女は、海底ダンジョン内でどう移動するのが、正解だろうか?


 そのダンジョンの壁は、所々が青く発光しており、その光が海底に漏れでて、入り口を照らしていたようだ。

 中にはサンゴや海藻が生え、魚やクラゲなども泳いでいる。

 まだ見えざる尾ヒレを使いなれないせいか、すぐに道を外し、壁が上下左右から迫って来る。

 その道幅は狭くはないが、どうにも狭く感じるのはそのせいだろう。



『クマさんこの先に生き物の気配を感じますよ?』



 しばらく奥に進むと、私の魔力感知が、複数の生き物の気配を感じとった。



『こりゃあ・・・・人間に近い気配だぞ』


『そうですね・・・・でもなんでこんな海底のダンジョンに人間が?』



 その気配の正体は、なんと複数の人間の気配だったのだ。


 こんな異世界の海底のダンジョンで、ダイビングでも楽しんでいる人たちがいるのだろうか?

 だとしたら非常識極まりない。


 あ・・・・ここにも二人いるね・・・・ダイビングしているクマさんと私が・・・・



『あの気配近付いてきますよ!?』


『ああそうだな・・・向こうもこちらに気付いたようだな』


 

 どうやら人間の気配は、こちらに気付いて、近付いてきているようだ。

 そしてその気配の主は、ゆっくりと影のように現れ、やがて私達の前に姿を現したのだ。



『尾ヒレに人間の体・・・・?』



 見るとその人達には、尾ヒレがあり、胴体は普通に人間であった。

 人間の気配の正体は、どうやら彼らの上半身にあったようだ・・・・


 って!! もしかしてこの人たちは!?



『人魚ですよクマさん!! あの人達人魚です!!』



 なんと彼らは、あの異世界テンプレ生物の、人魚だったのだ。


 この異世界にやってきて40年・・・・ついに私は、人魚と遭遇したのだ。



『はいはい・・・・。わかったから落ち着こうな嬢ちゃん・・・・』


 

 そんな興奮冷めやらない私と裏腹に、クマさんは淡白な反応だ。

 まあそれも無理はない・・・・


 人魚と言えば私の中では、長い髪の美女だというイメージがあったのだが、現実はそう上手くはいかないようだ。


 私達の遭遇した人魚は、4人の銛を手にした、ゴリマッチョな野郎どもだったからだ。

 どうしてこの異世界は、いつも私の期待を裏切るのか?

 


 ストンッ!!


 

 そして人魚の中の一人が、私達に向けて、銛を投げつけて来た。

 その銛は、私の空気の膜の手前の、地面に突き刺さった。


 プレゼントだろうか?


 私はそのプレゼントを受け取ろうと手を伸ばす。


 

『いや・・・どう考えても威嚇だろ?』



 すると呆れ顔のクマさんに、そう突っ込まれてしまった。

 どうやら心の声が、聞こえていたようだ。


 人魚は投げつけた銛を、取り付けられた紐で引っ張り、再び手にすると、こちらにその先を向けて来た。



『立ち去れってことでしょうか?』


『多分な・・・・。長いこと孤立していた部族には、閉鎖的な連中もいるからな』



 単一種族の部族の中には、毛色の違う他種族を警戒して、閉鎖的な政策を行っている者達もいる。

 かつてエルフと出会った時にも、彼らは結界によって、他種族の侵入を、拒んでいたのだ。

 魚人族の中には、テリトリーに侵入してくる船を、次々と沈める者達もいた。

 目の前にいる人魚達も、そんな閉鎖的な考えをもつ、部族なのだろう。

 

 ところが私はどうしても、人魚との交流がしたかった。

 人魚と仲良くなれば、彼らの家にも、招待してくれるかもしれない。

 人魚の家はきっと、竜宮城で、タイやヒラメが舞い踊っているに違いないのだ。

 

 亀によって玉手箱が運ばれてきて、きっとその中には、色とりどりのご馳走が、入れられているに違いない。

 それはきっと、楽しい出来事なのだろう。


 その時私は、この幼女の体の影響か、思考がメルヘンチックな妄想に支配されていた。


 クマさんはそんな私を、何やらしかめた表情で見つめていた。

【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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