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01:異世界の海で潮干狩り

 ざざ~ん・・・・ ざざ~ん・・・・



 波が押しては引いていき、その度に静かにメロディーを奏でる。

 砂浜には色とりどりの貝殻や、ヒトデが流れ着いていて、それが海を幻想的に演出している。

 太陽はサンサンと輝き、暗い海の底を、ゆらゆらと照らしているのだ。


 その日私は海で潮干狩りを、楽しんでいた。


 ここらの海は魔物の生息地となってる。

 さらにたどり着くためには、魔物ひしめく危険な森を、何日もかけて、抜ける必要があるのだ。

 私にはフェニックス由来の飛行魔法があるし、ここらの魔物には負ける気はしないので、簡単にたどり着くことが出来るが、普通はそうではない。

 それこそ命がけで挑む旅となるのだ。


 なのでこの海岸には、誰も立ち寄らないため、常に貸し切り状態となっている。

 しかも前世の海のように、漁業権がないので、貝や魚も獲り放題だ。


 現在私がいるのは、シーワン国から東にある、岩山に囲まれた砂浜の海岸だ。

 その海の浅瀬で、貝や魚をとっているのだ。

 浅瀬と言っても、その深さは2メートル以上はあるので、潜るために私は魔法を使っている。


 それはどんな魔法かというと、空気の膜を張り、水を遮断する魔法だ。

 それはかつて私が、ルドラの呪いを倒すために、宇宙へ向かう目的で、習得した魔法だ。


 それは大きな泡の中に、いるような感じだろうか?


 なので幻想的な海の底の様子を見物しながら、優々と潮干狩りに励むことが可能だ。

 まあこんな幼女が青いエプロンドレスを着て、海底にいるのを目撃したら、皆目が飛び出るくらい驚くだろうね。


 この海にはそんな私に、物怖じすることなく、襲い掛かって来る魔物がいる。


 ここらの魔物で危険なのは、巨大な海鳥の魔物シムルグや、小さいが群れで襲ってくるリトルシャークなどだろうか?


 シムルグはその全長が人間の大人ぐらいのサイズで、その翼を広げた長さは優に4メートルを超える。

 こいつは私が海底にいても、気にせず海に飛び込んで、そのくちばしで攻撃してくるのだ。

 いつ魔法で作った空気の膜が、破られないかと、毎度ハラハラしている。


 まあ土魔法の操鉄を使って、銛を2本操作し、周囲に浮かべているので、毎回その餌食にしているのだがね。

 シムルグは赤身と脂肪のバランスがよく、唐揚げや焼き鳥には最適なので、毎度良い臨時食料となっている。


 またリトルシャークは、リトルといっても1メートルくらいの大きさはある。

 それでも奴らは、魔物にしては小さい部類に入るが、その牙は鋭く、群れでなくても十分に危険な存在だ。

 一匹銛の餌食にしたら、それ以降は近寄らなくなったが、今も群れが私の周囲を遊泳している。

 油断した途端に、襲い掛かってくるつもりなのかもしれない。


 リトルシャークの肉は唐揚げや刺身に最適だが、時間の経過とともにアンモニア臭を発するので、新鮮な状態でないと、食べることが出来ないのが難点だ。

 

 その味は淡白だが脂がのっていて非常に美味い。

 刺身で食べた時には、ご飯何杯でもいけそうな感じだった。

 唐揚げも白身魚のような感じで、ふっくらとしていて、ジューシーでその上クセがないため、美味しく頂けた。

 その味を思い出しながら、奴らを見つめると、途端に周囲から姿を消した。

 まあ魔力感知でその位置を探れば、いつでもとり放題だ。

 食べたくなったらこちらから出向くとしよう・・・・じゅるり・・・


 今回の旅では、シーワン国の東にある海岸から、海に沿って砂漠の猫人国辺りまで、行ってみるつもりでいる。

 まさに海の幸食べ放題の、海鮮三昧の旅いや・・・バカンスである。



「ここらのサザエも大き目ですね・・・・」



 私の今回一番のねらい目は、鳥でもサメでもなく、主にサザエだ。

 地味でいて、その上大衆的な貝であるサザエを、ぜひ研究してみたいと思ったのだ。

 ところがここらのサザエはどれも巨大で、最大で1メートルくらいは、あった気がする。

 その中でも私は、20センチくらいのを、獲っているのだ。

 というか前世で見たような、10センチ以下のサザエは、ここらでは全く見かけない。


 ところが大き目のサザエはどれも硬く、刺身で食べる場合には、工夫が必要となってくる。

 その工夫には、湯通しが最適だった。

 下茹でも試したが、その場合お湯に味が溶け込み、薄められてしまうのだ。

 あのコリコリ感を残すのであれば、下茹ででも問題はないが、やりすぎるとあのコリコリ感は失われてしまう。

 湯通しならばあのコリコリ感も、味も申し分なく、残すことが可能だ。

 最後に冷水に浸すと、さらにその美味しさが増すようだ。



「嬢ちゃん・・・・またターバンシェルばっかとってんじゃないだろうな?」


 

 初日の夕食をサザエ三昧にしたのが、そんなに嫌だったのだろうか?

 サザエご飯も、刺身も、唐揚げも、吸い物も、あんなに美味しかったというのに・・・・


 クマさんが言うターバンシェルとは、サザエのことだ。

 ここらでは皆サザエを、ターバンシェルとよぶのだ。

 その由来は知らないが、おそらく英語であるからだろう。

 この異世界の人々が話す言葉は、かつてこの異世界で、セイクリカ正教語とよばれた英語なのだ。

 その大元となった、セイクリカ正教国はすでにないので、その呼ばれ方もすたれつつある。


 そんなクマさんだが、今回の旅にはついてきた。

 いつもアイテールにべったりだったクマさんが、この旅に同行したのは正直意外だった。


 それは一週間程前のことだった。

 私とクマさんが、シーワン国の城にある、畳部屋で寛いでいた時だ。



「クマさん・・・・久しぶりに二人で旅にでも出ませんか?」



 寝そべって本を読んでいるクマさんに、不意に・・・・私がそう声を掛けたのがきっかけだ。



「ああええよ・・・・」



 クマさんは、それがさも当然の答えのように、その言葉を口にしたのだ。

 私はその言葉が意外で、クマさんを目を丸くして見てしまった。


 正直クマさんに断られても、一人で旅には出るつもりではいた。

 最近新たな食材研究に飢えていた私は、旅をしながら出会った食材をテーマに、研究と美食三昧の毎日を送るつもりでいたのだ。


 ここのところアイテールは、シーワン国で経営している魔法学校にご執心だし、クマさんとも離れがちとなっていた。

 なのでクマさんにとっても、これはいい機会だったのかもしれない。


 こうして私とクマさんは、葵ちゃんとヘカテーちゃんに続き、皆に見送られながら、シーワン国を後にしたのだ。



「嬢ちゃん~・・・向こうで未発見の海底ダンジョン見つけた!」


 

 そしてこのタイミングでクマさんが、そんなことを報せて来た。



「は~・・・・探索するなら数日だけですよ・・・・」


「よっしゃ~♪」


 

 私がそう許可を出すと、クマさんは嬉々として、そのダンジョンに向かった。

 そして私も、その後に続いた。


【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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