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48:リンネ vs ヘカテー

「リンネ!! 葵からそのきちゃない手を離せええ!!」



 そうのたまうのは、私を睨みつける、ヘカテーちゃんだった。

 どう見ても私の小さな手を、両手で掴んでいるのは葵ちゃんだ。

 私は掴んでいないので、その手を離しようもないのだが・・・・。


 そのヘカテーちゃんの剣幕を見て、葵ちゃんも目を丸くしている。



「先輩・・・・?」


「手は外から帰ったら必ず洗っていますので綺麗ですよ?」



 外から帰ったらまず、石鹸で綺麗に、手を洗うのは当たり前だ。

 当然この城に入った時にも、私は手を洗っている。


 何をもってヘカテーちゃんは、私の手が汚いというのだろうか?

 洗い残しでもあるというのだろうか?



「ふうううう~! そういう意味じゃないのん!!」



 するとさらに怒りを露わにするヘカテーちゃん。

 いったい何だというのだろうか?



「いちゅもいちゅもいちゅもいちゅも! 葵と仲良くして許せないのん!」


「つまり嫉妬ですかヘカテーちゃん? みっともないですよ?」


「言ったのんな!? リンネのくせに生意気なのん! たかだか40年足らず生きただけの原初のロリババアのくしぇに!」



 こいつ! 私の実年齢を公言しやがった!

 しかも私はまだ40手前であって、けっして40歳ではない!



「え!? 嘘・・・・リンネちゃんって!?」



 するとその話を聞いた葵ちゃんが、私に対して少し引き気味となる。



「うっそだろ! その見た目で40かよ!」


「原初っつうことは神だよな? 神だから歳をとりにくいのか?」


「かかかかか・・・・神だにゃんて!! リンネが・・・・!!」


「ぶひゃひゃひゃひゃ!!」



 そして羞恥心にぷるぷると震える私に対して、皆勝手なことを言いだした。

 この仕打ちに対して、さらに臨界に達した私の感情が、ぷっつんと音を鳴らす。



「10000年以上生きている超絶ロリババに言われたくないですよ!」


「それを言ってはだめよリンネ!!」



 私が怒りのままに言葉をぶつけると、アイテールがまるで悲鳴のような声で、私に制止を呼びかける。

 でももうすでに手遅れだけどね。



「だれがばばあなのん・・・・・」


 ドカアアアン!!



 ヘカテーちゃんは、底冷えのするような声と共に、巨大な魔力を発し始める。

 だが私も魔力だけでは、負けてはいない。



「ふあああああああ!!」


 ドドドド~ン!!



 強大なヘカテーちゃんの魔力に対し、怒りの魔力を溢れさせ対抗する。



「いいでしょう! ここで決着をつけてやりますよ!」


「望むところなのん!!」



 私とヘカテーちゃんは、強大な魔力をぶつけ合い、威嚇しあう。



「ヘカテー姉さま落ち着いてください!!」


「嬢ちゃん止せ! この世界を滅亡させる気か!?」



 いやいや・・・なんで私が滅ぼす前提なんだよ?



「安心してくださいクマさん。ちょっと目の前のわからずやのロリババアを、拳でわからせるだけですから・・・・」


「妾に拳で挑もうとはいい度胸なのん!」



 そして皆が見守る中・・・・二人の決戦は、幕を開けたのだった。

 

 場所はシーワン国の城の謁見の間だ。

 この謁見の間は、決闘なども視野に入れているため、広めに造られているのだ。

 しかも壁には数々の魔法も施され、丈夫に設計されている。


 ここでならある程度暴れても、問題はないだろう。


 問題は強大な魔力と知識を有する、あのヘカテーちゃんが相手だということだ。

 ここはある程度、本気で挑む必要があるだろう。


 私が魔拳流の構えをとると、それに対してヘカテーちゃんは、どこぞの暗殺拳法家のように、まるで流れるように両手を動かし、こちらの様子を窺う。



「何ですかその動きは? 見たことない流派ですね?」



 前世から今まで、数々の格闘技を見てきたが、目の前のヘカテーちゃんのような動きは、アニメくらいでしか見たことがない。

 まさか本当にあの暗殺拳法が、使えるというのだろうか?



「リンネは魔拳流が得意なようだけど・・・・妾が生きた長い生涯の中で、いくつ魔拳流以上の拳法があったと思うのん? そのいくつかを妾は、極めているのん・・・・」



 確かにヘカテーちゃんが、生きて来た長い生涯の中に、強大な格闘技が数々存在しただろう。

 ただそれでもなお、私はこれだけは言える。


 いや! 言ってやるのだ!



「なんとでも言えばいいです! 魔拳流こそが歴史上最強であることをわからせてあげますよ!」



 私の中で拳法最強は魔拳流!

 それだけは変わらない事実だ!


 己の勝利を信じて突き進む!

 負けるな、決して折れるな!


 その信じる力こそが、私の魔拳流なのだ!!


 こうしてヘカテーちゃんと私の超絶バトルが、幕を開けたのだった。





 ヘカテーちゃんと私は、間合いを空けて睨み合い、お互いの様子を窺う。


 まず初手に放つなら、予備動作なしからの、高速のソバットキックが有効だろう。

 私のソバットキックは、数々の魔物を葬って来た、初見殺しの蹴りでもある。


 風魔法と身体強化を駆使して、静止状態から、爆発的に遠心力を発生させ、高速の蹴りを放つのだ。


 このソバットキックは、私独自の魔拳流ではあるが、魔法を絡めた、立派な魔拳流の技と言ってもいい。


 だが魔力感知の未来視で見たところ、その蹴りですら、ヘカテーちゃんに通用する未来は見えない。


 それではと次は、スナップをきかせた、過剰な威力を発生させる裏拳、内魔衝を繰り出すことにする。

 内魔衝は、魔力に波紋のような衝撃を伝えることで、防御やバリアの内側から、相手に爆発的なダメージを与える技だ。


 だがその裏拳すらも、ヘカテーちゃんには通用しないようだ。


 ならばとヘカテーちゃんの動きを予測し、カウンターに徹してみる。

 私の魔力感知の未来視は、相手の動きの未来を、予測することが可能なのだ。


 この魔力感知の性能を最大限に活かすなら、やはりカウンターを狙うのがいいだろう。


 そしてヘカテーちゃんが、最初の一撃を放とうと、予備動作に移ろうとするのを感じ取る。

 初手ヘカテーちゃんは両眼から光線を放ち、私を攻撃しようとしているようだ。

 

 目から光線!? 初手から拳法ですらねえ!?


 だがその単純な直線なら、躱せなくはない!


 ところがヘカテーちゃんは、私にその光線が当たらないと予測したのか、その攻撃を途中で中止する。


 わかってはいたが・・・・やはりヘカテーちゃんも、私と同じような未来視が使えるようだ。


 次にヘカテーちゃんが繰り出そうとしたのは、離れた位置から相手の心臓を、瞬時に抜き取る技だ。


 だがその心臓を抜き取るための、隠ぺいされた見えざる手が、私の魔力感知に見えないはずもない。


 ヘカテーちゃんもそれを感じ取ったのか、瞬時に次の行動に変更する。


 続けてヘカテーちゃんが繰り出そうとした技は、触れた相手をバラバラにする技だ。

 この技は主に医療行為に使われる技で、メスとして使われる場合が多い。



「どの技も物騒すぎるわああああ!!!」



 私はそのヘカテーちゃんの、物騒な技の数々に戦慄し、突っ込まずにはいられなかった。



「リンネに言われたくないのん!! 城を一撃で崩壊させる蹴りってなんなのん!? パンチでドラゴンを一撃で倒すとか可笑しいのん!? そんな技妾のような幼女に使って心は痛まないのん!?」


 

 え? あのソバットキックにそんな威力はないはず・・・・だよね?


 内魔衝は人間は倒せても、ドラゴンを一撃で倒す程の威力はなかったはず・・・・。

 いや過去に闇龍が一撃で沈んでたけど、あれは土剣つかってたし、素手でそれは可能ではない・・・よね?


 お互い動きの読み合いで、出かけた技を、出しては引っ込めての応酬が続く。

 その動きがいつしか調和を生み、まるでダンスのようになっていく。


 そのうちリズムに合わせて踊り出す。



「ふぁう♪」「ひょう♪」



 やがてヘカテーちゃんの、流れるようなムーンウォークが飛び出し、私のエアートラックスが華麗に決まる。

 そしてお互い動きが阻害されることへの、フラストレーションが溜まっていき、やがて絶頂を迎える。


 私が牽制で繰り出したソバットキックが空を切り、凄まじい衝撃波が生まれる。



 ガガガガガ!!!



 ヘカテーちゃんが目から光線を放ち、まるでそれをすり抜けるように、私が躱していく。


 

 ドドドドド~ン!!!



 その最高のダンスにお互いの高揚感が増していく。

 これが原初同士が戦うということ・・・・これが神々の戦い・・・・。


 それがまるで、永遠に続くかに思われたその時・・・・。



 ガッシャアアアアン!!



 光と轟音と共に、衝撃が私を襲った。



「ふぁあ?」



 気付くと私は、地面に倒れ伏していたのだ。

 魔力感知を掻い潜る攻撃・・・・それは私にとって、まったく未知の攻撃であった。

 私はいったい・・・・どんな攻撃を、受けたというのか?


【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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