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46:ヘカテーの召喚者「葵」

 葵ちゃんが魔拳流の修行を始めて、一ヶ月が経過した。

 フェンリルの獣人であり、人の能力を遥かに凌駕する葵ちゃんが、魔拳流で頭角を現すのには、そう時間はかからなかった。


 初日に習った基本の正拳突きで、神人の一人をノックアウトし、一週間後には、熟練の魔拳流使いであるアイリンとも、まともに打ち合える程となっていた。


 それは高い運動能力もあったが、物事を習得する学習能力が、ずば抜けて高いこともあった。

 獣化する前の葵ちゃんは、並かそれ以下だったと、自己評価を下している。

 それが獣化した途端、知力も運動能力も、遥かに倍増していたのだ。

 魔拳流を始めたことで、葵ちゃんはそれを自覚し始めていた。



「リンネ・・・・アオイちゃんを私にくれないかな?」



 そんな葵ちゃんにアイリンが、興味を持つのは無理もなかった。

 アイリンにとって同格で、切磋琢磨できる相手は、身近にそういるわけではない。

 葵ちゃんは魔拳流において、アイリンにとっては、お互いを高め合うには、うってつけの相手だったのだ。


 しかも葵ちゃんは日本での知識があり、有用な簿記などの資格を持っていたために、さらに幅広い知識を、このエテール聖国にもたらしていた。

 そんな葵ちゃんを、アイリンが手放したくない気持ちも、わからなくはない。



「えっと・・・・。前にも言ったけど、葵ちゃんはヘカテーちゃんがこの世界に召喚させた娘だからね・・・・」


「そうね・・・・。そこが問題なのよね・・・・」



 思い悩む娘の願いは叶えてやりたいが、原初のエルフであり、古き神である、強大なヘカテーちゃんに、抗うわけにもいかない。



「やった!! ついに元の姿に戻れた!!」



 それから程なくして、葵ちゃんはようやく元の姿を、取り戻したのであった。

 

 現在学生用のジャージ姿の葵ちゃんは、両手を上げて、その喜びをあらわにしていた。

 その時葵ちゃんが、あのセーラー服姿でないのを、少し残念に感じたのは私だけだろうか?



「へ~。黒目黒髪なんて珍しいじゃない。その姿もなかなか可愛いわよ」


「ありがとうアイリン! でもいくら私が小さくなったからって、頭をなでるのは止めてくれないかな?」



 葵ちゃんの身長はもともと160cmいかないくらいで、アイリンに比べれば、大人と子供くらいの差があった。

 そんな葵ちゃんが可愛く見えたのか、アイリンはその頭を、なでていたのだ。



「それじゃあ今度はその姿でやるわよ!」


「いいよ! いっくよお~アイリン!」



 今度は葵ちゃんは人間の姿で、アイリンと模擬戦を始めてしまった。

 このところ葵ちゃんが、バトルジャンキーになってきていて少し心配だ。

 そしてそんなことを、自信たっぷり口にする葵ちゃんだったが、そう上手く行くはずもない。

 


「体が重~い! 上手く動けないよ~!」



 久々に元の体に戻った反動か、その体を動かすのに、四苦八苦していた。

 葵ちゃんはアイリンの攻撃が何度も命中し、その度に地面を転がり文句を、言っていたのだ。


 獣化して運動能力が上がった状態から、並み? の女の子に戻れば、それも無理のない話である。

 

 ただ葵ちゃんの今の体が、凄まじく丈夫なことだけはわかったよ。

 普通の女の子が、アイリンの攻撃を何度も受けて、文句を言いながら立ち上がるとか、ありえない話だからね。


 あの娘はヘカテーちゃんに召喚されて、明らかに普通でない体にされているね。





「相変わらず活かした乗り物だぜ!」


「ひゅぅうう!!」


「なんニャ! あの巨大な魔道航空機は!?」



 大型の魔道航空機を前にして、皆興奮冷めやらない様子だ。


 あれから数日後、私達はエテール聖国にある、ハーピー国際空港に来ていた。

 それはシーワン国とエテール聖国をつなぐ、唯一の魔道航空機がある空港なのだ。

 その魔道航空機は巨大で、300人からの搭乗が可能だ。



「いつでも戻ってきていいわよ! ここは貴女のもう1つの故郷なんだからね!」


「うん! ありがとうアイリン!」



 アイリンと葵ちゃんの2人は、固く握手を交わすと、お互いに別れを告げた。

 こうしてシーワン国への航空機は飛び立ち、私達の旅は、終わりを迎えようとしていたのだ。





 第三者視点~



「リンネばっかり狡いのん!!」



 その頃シーワン国で、リンネ達の旅の様子を見守るヘカテーは、畳を転げまわり、悔しさを露わにしていた。

 リンネが葵と旅を共にし、ともに友情を深め合う様子が、妬ましくてしょうがなかったのだ。



「仕方ないわよヘカテー姉様・・・・」



 それをなんとか慰めようと、四苦八苦するアイテールがいた。

 ヘカテーはここのところ毎日のように、白い空間からリンネと葵の様子を覗き見ては、悔しがっていたのだ。

 あの葵の隣にいるのは、自分だったはずだと・・・・。

 ところが葵を、()のつくくらい、甘やかす可能性のあったヘカテーを、向かわせるわけにはいかなかったのだ。


 葵にはこの異世界の厳しさと、真実を知ってもらう必要があり、甘やかすことで、悪い方向に導かれることを、アイテールは危惧していたのだ。

 それをヘカテーも理解しており、リンネとクマジロウのみを、葵のもとに向かわせたのだ。


 原初に転移させられた者は、大きな力を持っているため、悪い方向に導けば、とんでもない事態を招く可能性もあった。



「そんなことより、あの様子ではもう2、3日で、あの子達が到着してしまうわ。お迎えする準備をしないと!」


「そうなのん! 膨大な準備(・・・・・)が待っているのん!」



 そう言うなりヘカテーは物凄い速度で、畳部屋から飛び出した。

 アイテールはその膨大な準備(・・・・・)という言葉に、一抹の不安を覚えた。

 あの子らを迎えるだけで、いったい何をしでかすつもりなのかと・・・・



「ヘカテー姉様! お迎えはシンプルなものになさいませ! あまり派手だとあの子達が驚いてしまうわ!」



 こうしてヘカテーとアイテールは、皆を迎え入れる準備に、取り掛かるのであった。

【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


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