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45:アイリーナ聖帝

 第三者視点~


 その日、エテール聖国聖帝アイリンは、長い銀髪を後ろでまとめ上げ、ポニーテールにして、いつものように執務に励んでいた。

  アイリンは格式ばった服装を嫌い、シンプルでファッショナブルな、動きやすい服装を好んで着ることが多い。

 その日のアイリンのコーデも、カジュアルなブラウスに、黒いパンツという、軽めのスタイルであった。


 そんな彼女の習慣もあってか、市街にもパンツスタイルの女性が、よく見かけられた。

 イーテルニル王国の風習を色濃く残すエテール聖国では、女性は一般的にスカートという風潮があったが、その常識を最初に塗り替えたのが、このアイリンだったのだ。


 そして二十歳手前になろうという、長くすらっとした足をもつ、長身の彼女は、その美しさもあってか、国民からの人気も非常に高かった。



「アイリーナ聖下・・・・お客様が参られております・・・・」



 そんな中アイリンに知らせをよこしてきた、神人の女騎士がいた。


 ちなみにアイリーナとは、アイリンの貴族的な呼び名である。

 アイリンはその呼び方を、あまり好ましくは思ってはいなかったが、最近は眉一つ上げるのも諦めていた。



「すでに承知しているわ。従弟のアルバートにその友人のトニー、それに聖獣のクマジロウに、リンネでしょ? 後の二人は知らない気配ね? 狼? の少女の方はとても強そうね」


 

 アイリンにはリンネ譲りの魔力感知が使えるため、周囲の魔力を探るたけで、人物を特定することが出来た。



「さすがですアイリーナ聖下・・・それではさっそく・・・」


「お待ちなさい!」



 すると去ろうとする女騎士を、引き止める女がいた。

 

 エテール聖国の宰相である彼女は、クラレッタという名のアラフォーである。

 ところがアラフォーにも拘わらず、彼女の見た目は、精々20代前半といったところであった。


 彼女はアイリンから神気を賜り、神人となった影響で、若いままの姿でいられるのだ。



「アイリーナ聖下・・・・リンネ様は神の一柱に数えられる存在です。そのような方が来られるならば、正装をされてからそちらに赴くべきです。当然その迎え入れ方も考えねばなりません」



 アイリンの生みの親であり、このエテールで数々の偉業と奇跡を成したリンネは、神として崇められるほどの存在となっていた。

 それはあの絶対的な神、アイテールと肩を並べる程である。

 そんなリンネをただ迎え入れるだけでは、不敬に当たるとして、宰相クラレッタはそう提案したのだ。



「ああ・・・いいのいいのクラレッタ! リンネそういうの嫌うから。それにどうせ本人もふらっと遊びに来ただけのつもりでしょうし・・・」


「はあ・・・・! 嘆かわしいですわ! それでもあの方が立ち寄られた先では、数々の恩恵を受けられ、幸せになった人々も沢山おられます! その感謝を忘れてはなりません!」


「はいはい・・・。クラレッタは少しお堅いのよ。そんなことではリンネに嫌われてしまうわよ?」


「それでもせめてお会いされるなら、謁見の間になさいませ!」


「ああ~・・・・フランシス、今の聞いてた? そのようにしてちょうだい・・・・」


「は、はい! 只今!」



 こうして慌ただしく謁見の準備は進められ、リンネ一行はアイリンとの会合を、果たすことになったのだ。




 葵視点~


 アイリーナ聖帝は意外にも、歳の若い女性だった。

 長く美しい銀髪をポニーテールにまとめ、長身で小顔で、まるでモデルのような容姿をしている。

 

 そのカジュアルな服装から、とても聖帝程の人物とは思えないが、その神々しい気配から、只者ではないと感じることだけは出来た。


 アイリーナ聖帝は壇上にある王座の前に立ち、こちらの様子を窺っている。

 その壇上のすぐ下には、神経質そうな女性が、こちらを厳しい目で見ていた。

 護衛だろうか? 周囲には鎧を着た神人の女性が数人おり、まるで騎士のようにたたずんでいた。



「久しぶりだなアイリン!」


「相変わらずねアル・・・・。でもその挨拶は不敬よ。まあ従弟のよしみで許してあげるけど」



 唐突に放たれたアルバートの、不敬な挨拶にはヒヤヒヤさせられたが、アイリーナ聖帝が、怖い人物ではないことはわかった。

 その表情からは幼さも感じとれ、もしかしたら私と、近い年齢ではと思わせた。



「で? リンネは何の用でここへ来たの? 遊びの準備ならいつでもできるけど? どうする?」


「ちょっと酷いなアイリン・・・・。それじゃあ私がいつもここへ遊びに来ているみたいじゃない?」



 そんなアイリーナ聖帝の冗談ともとれる挨拶に、リンネはニコニコしながらも答えた。

 しかもリンネはまるで友人であるかのように、アイリーナ聖帝と気安く接した。

 リンネは色々謎の多い子だが、いったい何者だろうか?



「えっと・・・・リンネちゃんはアイリーナ聖帝とは、愛称でよぶほど仲が良いの?」


「うん・・・・まあね! リンネ、アイリンで呼び合う程にはね!」


「・・・・・」



 アイリーナ聖帝はそのリンネの言葉に、何か言いたげだったが、それを口に出すことはなかった。



「それでは改めて自己紹介しておくわ。エテール聖国聖帝、アイリーナ・エテールよ」



 そして改めてアイリーナ聖帝は、私達に向けて挨拶をした。





 リンネ視点~



「で・・・・そちらの猫人はいいとして・・・・そちらの狼少女は何かしら? もしかして新たな聖獣なのかしら?」



 挨拶とある程度の会話を交わすと、アイリンは葵ちゃんの只ならぬ魔力に気付いらしく、私に尋ねて来た。


 そしていいと言われたニャーさんが、卑屈にしょげている。

 まあ可もなく不可もない、ごく普通の猫人に、アイリンの食指が動かなかっただけだろう。



「アオイはそんなんじゃねえ。ただ特殊な存在であることは確かだ」



 するとその問いにはクマさんが答えた。

 聖獣であるクマさんがそう答えると、信憑性も出てくるというものだ。


 まあ葵ちゃんは聖獣ではないが、特殊な存在だというのは否定できない。

 あの原初のエルフであるヘカテーちゃんが、この世界に召喚した、唯一の選ばれし存在なのだから・・・・。



「そう・・・・。聖獣ではないのね? その特殊な存在というのは色々気になるけど・・・・ただその娘を紹介にきただけというわけではないわね?」



 アイリンは私達にいぶかし気な表情で、そう尋ねて来た。



「実は葵ちゃんは獣化してしまっているんだよ。その状態が一ヶ月以上も続いているんだ」



 葵ちゃんは一ヶ月以上前に、獣王の攻撃を受けたことで覚醒し、フェンリルの獣人となった。

 それ以降ずっとこの姿のままなのだ。

 それはその神聖な気配から、神気が原因であることはわかっている。


 葵ちゃんは神気がコントロールできれば、元の姿に戻れるはずなのだ。


 かつてアイリンも天使の姿から戻れなくなり、神気のコントロールを身に着けたのだ。

 神気のコントロールを身に着けたアイリンは、天使の姿にも、人の姿にも、自由自在に変身可能になった。

 

 神気を得たと同時に、人にも天使にもなれた私には、その神気のコントロールについては、説明が難しいが、独自に神気のコントロールを可能にしたアイリンならば、それも容易いことだろう。


 私はそれをアイリンに、これまでの冒険譚も含めて説明した。

 もちろんシーワン国のことや、私がアイテールの命令で葵ちゃんの側にいることは、伏せてはいるがね。



「なるほど・・・・。それじゃあ貴女・・・アオイだったわね?」



 アイリンは壇上を降りと、葵ちゃんに近付きそう尋ねて来た。

 クラレッタさんがそれを見て、眉をひそめたが、アイリンにはどこ吹く風である。


 ちなみにクラレッタさんは私の知人だ。

 クラレッタさんはセイクリカ正教国がまだあった時代に、そこでしばらくお世話になった人だよ。


 そして改めて見ると、アイリンは本当に大きく育った。

 獣化して巨大化した葵ちゃんは身長が180cm以上はあるのに、その葵ちゃんよりもさらに身長が高いのだ。

 あの高い身長はお母さんのエマちゃん譲りだろう。

 エマちゃんの身長は2mに届く勢いだったからね。



「はい聖帝様・・・・」



 葵ちゃんはそんなアイリンに、まるで子犬のように、かしこまってそう答えた。



「その聖帝様ってのは止めてくれる? アイリンでいいわ」


「そ・・・それではア、アイリン様!」


「まあそれでいいわ・・・・」



 葵ちゃんの様呼びに、納得いっていない様子のアイリンだが、それで妥協したようだ。

 まあ本来聖帝という立場の人は、それではいけないんだけどね?

 シーワン国の国王だった時に好き勝手していた私が、どうこう言える立場じゃないけどね。



「それじゃあ貴女・・・魔拳流をやりなさい」


「はあ? なぜ私が格闘技を?」



 唐突に放たれたそのアイリンの言葉に、困惑する葵ちゃん。

 神気をコントロールするのに、なぜ魔拳流をやる必要があるのだろうか?



「私も魔拳流のある技を極めたことで、神気のコントロールが上手くできるようになったのよ」



 魔拳流のある技?

 私も魔拳流の数々の技を極めているが、どの技がそうなのか、いまいちピンとこない。

 だがその技で神気のコントロールが、出来るというのなら、葵ちゃんは魔拳流を習うしかないのだろう。



「それに貴女はいまだかつてない程の逸材よ? 魔拳流をやらずにいったい何をやるというの?」


「えっと・・・・。女の子らしい刺繍とか・・・・料理の勉強ですかね?」


「女の子らしい刺繍? 料理の勉強? そんなのはおまけ程度にしておきなさい! あ、でも料理の勉強は楽しいわよ! 時々はやるといいわ!」


 

 それで良いのかわが娘よ・・・・。


 そう言うわけで葵ちゃんは、しばらくエテール聖国で、魔拳流を学ぶことになった。

 そのついでにアルバートとトニーも、魔拳流をやりたいと言い出して、入門していた。


 さすがにニャーさんは、しばらく商売の勉強をすると言って、どこかへ消えていったがね。

 クマさんと私は、ここからは自由行動だ。


 この機会に楽しい料理三昧の日々を送るのだ。

 クマさん? クマさんは研究者仲間のゴドウィン卿のところへ、行ってしまったよ。

 どうせ最近興味を示した魔道車の開発で、盛り上がるつもりなのだろう。 

【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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