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37:王都再び

 王都に到着した私達は、寄り道せずまっすぐに、王宮へと向かった。

 今回は関所を何事もなく通過できたが、私達が到着してすぐに、衛兵の1人が先ぶれを出すために馬を走らせるのが見えた。

 おそらく私達の到着を、王宮に知らせるのだろう。


 きっとアリスちゃんの耳には、すぐに私達の到着が、知らされるようにと指示してあったに違いないのだ。

 まあ前回のこともあるし、これは仕方のないことなのかもしれないがね。


 王宮に到着するとすぐに応接間に案内された。

 本来国賓などをもてなす部屋なのだろうが、いちおうリンデルは王子で、私はその親でもあるから、これが当たり前の待遇なのかもしれない。



「ちょっと! なんで最初が王宮なのよ! まだ心の準備も出来ていないし、緊張するんですけど!」


「そうか? ただうちの母ちゃんに会うだけだぞ?」


「母ちゃんってあんたね!」



 リンデルのその言葉を聞けば、まるで近所のおばさんに会うような感覚を覚えるが、これから会うのはこの国で一番偉い女王なのだ。

 アイリンが緊張するのも無理はない。


 だがそのアイリンの態度からわかるが、国の王子でありながら、全くその扱いを受けていないリンデルの立場はどうなのだろう?


 まあ本人は気にした様子が微塵もないし、リンデルにしてみれば、どうでもいいことなのかもしれないが・・・。



 バタ~ン!!


「お姉さま!! リンデル!! クマジロウ!」



 気付くとアリスちゃんが目の前で手を広げ、私達に抱き着くところだった。



「ちょ! 止めろよ母ちゃん! 恥ずかしいだろ!」


「よせアリス!! くびがしまるだろぅう!!」



 そしてアリスちゃんのほっぺたすりすりが始まる。

 その影響で狸寝入りを決め込んでいたクマさんも、目を覚ましたようだ。


 後ろの方で宰相のチャールズのおじさんが、こわばった表情で見ているので、そろそろ止めた方がいいと思うのだがね。



「よく帰ってきたわね! リンデル、お姉さま、クマジロウ!」



 しばらくすると抱擁を止めて、立ち上がって姿勢を正し、取り繕った様子のアリスちゃんは、改めてそう挨拶をした。



「そしてひさしぶりねアイリン! 大きくなったわね!」


「ええ!? ワタシ女王様に会ったことはないと思うのですけど・・・」


「貴女が生まれて1年後に、1度会っているのよ。まだ赤ん坊の時だったから、覚えていないのも無理はないけどね・・・」



 なんとアリスちゃんとアイリンは、私がいない間に1度会っているようだ。



「あ~! うっ、うん!」


「あら・・・そうだったわねチャールズ宰相・・・」



 チャールズのおじさんが咳払いすると、アリスちゃんは何かを思い出したような仕草をした。

 いったいなんだというのだろうか?



「実は4日後に貴族に爵位を与える、授与式を執り行うわ」



 たしかあのクリフォードくんも、正式に父親であるチャールズのおじさんから、侯爵位を受け継ぐ目的でこの王都に来ているはずだ。

 チャールズのおじさんは宰相の地位はそのままで、爵位だけを譲るそうなので、今と状況はそんなに変わらないと思うのだがね。



「その授与式ですが、実はお姉さまを王配として紹介するはずの場でもあったのですよ・・・」



 なるほど。もし私が王配になっていれば、その場で貴族達に私のことを、王配として広く周知していたことだろう。



「なのでそれは諦めて・・・お姉さまをリンデルを授けてくれた、わたくしの夫として紹介することにしましたの!」



 それは王配として紹介するのと、あまり変わらないような気もするが、今までどおり旅ができるのなら、それでもいいのかもしれない。



「そしてその紹介の場で、お姉さまには天使モードになっていただきたいのです!」


「ふぁ?」



 私はそのアリスちゃんの唐突な申し出を聞いて変な声が出てしまった。



「おいおい! 嬢ちゃんを政治利用するつもりか!?」



 するとそれを聞いていたクマさんが口をはさんできた。



「当然です! お姉さまはこの国最強の戦力なのですよ! そのお姉さまがこの国の背後にいることを、貴族達に示さなければなりません! それにわたくし1人に(まつりごと)を押し付けて、楽しい旅にでるのですから、これくらいはしてもいいのではなくって?」



 別に私は王族になったつもりはないし、リンデルの親になったのも、予想だにしない出来事だった。

 だから初めからこの国の政治に、参加する予定などはなかったのだ。

 だがそれはそれで、後ろめたい気持ちがないわけではない。



「はあ~・・・。しかたないな~。クマさん・・・ここは黙ってアリスちゃんの頼みを聞いてあげましょう!」


「はあ!? もしかしてオイラまで参加させるつもりじゃあないよな!?」


「当然クマさんも参加ですよ! なぜならクマさんも私と同罪ですから!」



 アリスちゃんがリンデルを産むことになった責任は、聖獣5柱にもある。

 そもそもあの時希望の卵を、アリスちゃんに渡してさえいなければ、リンデルは生まれていなかったのだ。

 私自身そのことに、感謝はしていないと言えば嘘になるが、それはそれこれはこれである。


 それを聞いたクマさんは、私の顔をぐぬぬ顔で見ていた。


 こうして4日後に私は、リンデルの親として、アリスちゃんの夫として、貴族達に紹介されることとなったのだ。




【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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