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33:旅の提案・・・

 数日後私はクロワッサンのレシピを伝えるために、魔道航空機ジャイロさん1号に乗り、エインズワース料理研究所へ向かうことになった。

 ジャイロさんは街の付近にある野営地から出発させることになっている。


 野営地にはジャイロさんを一目見ようと、エテール家の人々を初め、多くの人々が集まっている。


 

「おう! 今日は世話になるぜ!」



 今回はパンの技術を伝えるということで、ビリーくんが同乗するのだ。



「ワタシも行くよ!」「オレもだ!」



 リンデルとアイリンは、なぜか私がどこかに行こうとすると付きまとうんだよね。

 まあジャイロさんに乗りたいだけかもしれないがね。



「早く乗れ嬢ちゃん! 離陸するぞ!」



 すでにジャイロさんの運転席に乗り込み、そんなことを言ってくるのはクマさんだ。

 どうやら魔道列車の開発も粗方カタがついたようで、昨日ふらりとエテールの屋敷に帰って来たのだ。

 なぜそんなにジャイロさんを操縦したいのかは知らないが、今日は操縦席を譲ってあげたよ。


 そして多くの人々が見守るなか、ジャイロさんはエインズワースの街へと向けて、飛び立った。





 エインズワースの街の前の野営地につくと、UFO型ゴーレムヘンツさんに乗り換えて、エインズワース料理研究所へ向かう。


 今回はエインズワースの屋敷には向かわず、直接エインズワース料理研究所へ向かう予定となっているのだ。


 

「ようこそおいでくださいました。調理場に案内しますので、中の方へどうぞ」



 エインズワース料理研究所に到着すると、メイアちゃん、シェリーちゃん、コーリーちゃんが出迎えてくれた。


 エインズワース料理研究所では、昼と夜に高級料理店をやっているそうなのだが、この朝の時間帯は仕込みを使用人に任せ、料理研究に勤しんでいるようだ。


 その時間帯を利用して、クロワッサンのレシピを伝える予定なのだ。



「やあ、しばらくぶりだね。パン作りはこれからなのかな?」



 しばらくしてお屋敷からクリフォードくんと、奥さんのエリザベス夫人もやってきた。

 衛兵がエインズワースの屋敷に、私達の到着を伝えたのだろう。


 そしてビリーくんによる、クロワッサン作りの講義が開始された。


 クロワッサンは、その食感から皆には、サクサクパンとよばれるようになっていた。


 サクサクパンの講義が終わると、その後はエインズワース料理研究所での会食会となるのだ。


 ちょうど昼時を迎え、お客さんも来店してくるが、私達は特別に用意された個室に案内された。


 昼食にはサクサクパンと、サクサクパンに合うと思われる料理が多数用意され、少しずつ小皿にとって、確認し、意見を出し合いながら食べていったよ。





「実は2週間後に港町ノースポーに、ホウライの魔道船が来るのだよ」



 会食会が終わりに差し掛かるころ、クリフォードくんがそう伝えてきた。



「わあ! ワタシ見に行きたい!」「オレもだ!」



 するとそれを聞いたアイリンとリンデルが騒ぎ出す。



「もしかしてホウライの醤油やお米などの物資を、取引できるんですか?」



 私は以前エインズワース家の方々に案内されて、ホウライの商人と取引したことがあるのだ。

 またお米や醤油が入手できるなら、私もその日港町ノースポーに、行ってみたいと思う。



「私も丁度王都に用事ができてね。その帰りに港町ノースポーに行ってみようと思っているんだよ。もしよければ、リンネ殿もどうかね」


「それは願ってもないお誘いです。ぜひその日私も同行させてください」


「「わああい!!」」



 それを聞いたアイリンとリンデルが、なぜか大喜びだ。

 まあリンデルはともかく、アイリンを連れていくには、エテール家の皆やエマちゃんに相談が必要かな?

 

 この後話し合った結果、クリフォードくんとは王都で落ち合うことになった。


 そしてこの時私は、別のことも考えていた。


 あのホウライの魔道船に同乗できないかと、思っていたのだ。

 






「クマさん、私ホウライの魔道船に、乗せてもらおうと思っているんです」



 その夜、私はエテールの屋敷に用意されている私の私室で、クマさんにそう切り出していた。



「はあ? 嬢ちゃんは何言ってんだ?」



 その色々と要領を得ない私の発言に、クマさんが困惑の表情で問いかけてくる。



「ホウライの魔道船は、世界各地を巡っていると聞きます。それに同乗すれば、まだ私達の知らない、色々な地域や食材に出会えるかもしれないのですよ?」



 私はホウライの魔道船に同乗して、まだ見ぬ国々を、見て回りたいと思っていたのだ。



「ジャイロサンじゃ駄目なのか?」


「ジャイロさんではちょっと・・・」



 ジャイロさんに乗れば、さらに速い速度で世界を巡ることは出来るだろう。

 だがピンポイントで知らない場所にある国々を巡るのは難しいだろう。


 それになにより、そこが聖獣を崇拝する国などであればクマさんがいればなんとかなるが、そうでなかった場合、たどり着いたとしても、トラブルになる予感しかしない。

 魔道船であれば一度巡った国では信用もあるし、国々を見て回りやすいと思ったのだ。



「まあ・・・。オイラ嬢ちゃんがそう決めたんならそれでいいが、リンデルの意見も聞いてみねえとな?」

 


 クマさんはすでにいびきをかいて寝入っているリンデルを見ながらそう口にした。





「ええ!? 魔道船に乗れるのか!?」



 翌朝朝食のおりに、リンデルに昨晩のことを持ち掛けると、そう言葉を返してきた。

 やはりリンデルも、魔道船には乗りたいようだ。



「ちょっと待って! なんでリンデルが魔道船に乗れるわけ!?」



 それを聞いていたアイリンが、どうやら納得できないようで、話に割り込んできた。



「忘れているのか? オレ達は旅の途中なんだぜ? 冒険者は自由にいろんな場所に行けるんだ」



 リンデルはアイリンの言葉に、そう得意げに返した。



「じゃあワタシ冒険者だからリンネと一緒に旅に出る!」



 するとアイリンがそう言ってごね始めたのだ。

 アイリンは実はあの歳でFランク冒険者なので、言っていることに間違いはない。

 だが彼女はまだ子供なのだ。

 保護者に相談もしないで、勝手にあれこれ決めていい年齢ではない。

 これは各所に相談が必要だね。





「ちょっと貴女何を言っているのかわかっているの!?」



 アイリンが旅に出ることを相談したらエイリーン夫人にさっそく反対された。

 現在エテールの談話室に、エイリーン夫人とエマちゃんをよんで、アイリンが魔道船に乗って旅に出る話を相談中なのだ。



「旅に出れば私達はもちろん、家族全員にしばらく会えなくなってしまうのよ! 貴女はそれでも1人で自分のことができるの!? それに勉強はどうするの!? 礼儀作法もしっかり学ばないと、立派な貴族にはなれないのよ!?」



 エイリーン夫人は、さらにアイリンにまくし立てるように言葉を重ねる。

 その反面、エマちゃんはアイリンを見つめながら、腕を組み押し黙ったままだ。



「勉強や礼儀作法は旅から帰ったらしっかりやるよ! それに今を逃したら、自由に旅をする機会なんて、二度と訪れるかわからないじゃない! 10歳を過ぎたら魔術学園だし、卒業したらすぐに仕事につかなきゃいけないでしょ?」



 アイリンはそんなエイリーン夫人に、今の気持ちをぶつけるように反論する。


 アイリンは7歳という年齢で、もう将来について考えているようだ。

 この世界の子供は早熟だ。12歳過ぎたら、学生でもない限り、働くのが当たり前なのだ。

 だからある程度自由になる今のうちにアイリンは、冒険に出てみたいのかもしれない。



「貴女がそこまで言うのならわたくしは反対しないわ・・・」


「エマ!?」


「でも冒険はそんなに生易しいものじゃないわよ? つらいことも沢山あるし、危険なこともいっぱいある。それでも貴女が冒険に出たいというなら、実際に森で野宿でも経験してみるといいわ」



 エマちゃんがそう言い終わると、エイリーン夫人とエマちゃんは、確認するようにアイリンの顔を、ただ静かに見つめた。


 

「わかったわ! 森で野宿でもなんでも、やり遂げてやるわ!」



 アイリンは少し考えた後に、そうはっきりと答えた。



「はあ~。悪いけどリンネちゃん、クマジロウ・・・・。しばらくアイリンの面倒を見てくれないかしら?」



 エイリーン夫人は、次にクマさんと私の方に向き直ると、そう頼んできた。

 エイリーン夫人は商業ギルド長であるために多忙である。

 またエマちゃんも魔拳流道場に加え、実はエテールの騎士団の団長も務め、多忙な立場にあるのだ。

 そのために2人は、野営の訓練には立ち会えないのだ。


 他に使用人や護衛の騎士や、冒険者に依頼するという手もあるが、私達に頼む方が、安全で信頼できると考えたのだろう。


 どうやら数日間、アイリンの森での野営訓練の、面倒を見ることになりそうだ。

【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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