26:リンネvsアイリン
「はあ~・・・。あの子最近、わたくし以外には負けたことがないのですよ。すっかり天狗になっちゃって、困ったものね・・・」
エマちゃんは困ったように頬に手をやり、ため息をつく。
現在私達は、エマちゃんの魔拳流道場に、アイリンを迎えに来ている。
その過程でリンデルとアイリンが組手をやることになり、リンデルが負けてしまったのだ。
「じゃあ次は私がやろうか?」
そんなエマちゃんの様子を見て、私はそう答えていた。
それはアイリンが、あの歳で天狗になるのも、あまりよくないと思ったからだ。
自らを過信しすぎて、努力しなくなったり、心の成長に問題が出たりするかもしれない。
「もう一度勝負だアイリン! 次は負けねえぞ!」
「いいわよ! いくらでも相手になるわ!」
リンデルはもう一度、アイリンに挑むつもりのようだが、今回は諦めてもらおう。
「リンデル、次は私が出るよ」
私はそんなリンデルの肩に手をかけそう口にした。
「仕方ねえな・・・。リンネがやるってんなら引くしかねえか・・・」
リンデルはそんな私の申し出を素直に聞いて身を引く。
「あら? 貴方妹さんが恐いの? そんなに簡単に譲っちゃって・・・」
「別にそんなんじゃねえよ。それにリンネはオレの妹じゃねえ」
「はあ? それじゃあ親戚か何かかしら? 貴方ほどその小さな子が、戦えるとは思えないけど?」
「やってみればわかるさ・・・」
アイリンは仕方ないなと言わんばかりに、肩をすくめた。
そしてアイリンと私が向かい合う。
「それじゃあやろうかアイリン?」
「えっと・・・ワタシと同じ素手で大丈夫なのかしら?」
どうやらアイリンは、私が素手で戦うことに対して、心配をしているようだ。
「どちらかといえば木剣の方が得意ですけど、今回は素手で十分です」
「ふ~ん。まあいいわ。好きな時にかかってくれば?」
アイリンは余裕な感じで、誘うように手を振りながらそう口にした。
私はアイリンのその動作を合図に、トテトテとアイリンに歩み寄り、徐々に間合いを詰めていく。
「ふふ! なにその遅い歩みは? やる気あるのかしら?」
その私の歩みに、アイリンが苦笑する。
「はあ・・・。こんな茶番はすぐに終わらせてあげるわ!」
アイリンはそう言うや否や、私に接近を始める。
すると私の魔力感知が、アイリンが右手で私の肩を押して、転ばせようとする未来を伝える。
べつにその1撃で、私が転ぶとは思えないが、ここは躱しておくことにする。
「え!?」
私がノロノロとその突き出された右手を躱すと、アイリンの表情が驚愕に変わる。
カツ! コテン!
そして躱すと同時に、突き出された彼女の右足を、すれ違いざまに左足でひっかけて、前のめりに転倒させる。
その状況が理解できないのか、アイリンは両手を地面について、座り込んだまま動きを止めた。
アイリン視点~
信じられない・・・。ワタシがあんな小さな子に、転倒させられるなんて。
あの子はノロノロと歩いて来て、弱そうに見えたから、ワタシはその肩を軽く押して、倒そうとしたの。
でもあの子は途中でふらついて、偶然ワタシの突き出した右手は外れたわ。
それどころかあの子の足に、ワタシの足がもつれて、ワタシが前のめりに転倒したの。
あのひ弱そうな小さな子は、今そんなワタシを見下ろしているわ。
「あ~・・・。リンネのあの歩みに騙されたか・・・。実際何度見ても弱そうに見えるんだよな」
リンデルはそう言うが、そんなはずはない。
今のは偶然よ! そうに違いない!
今からそれを証明してやる!!
「やああああ!!」
ワタシは跳ねるように立ち上がると、その子に猛烈な連撃を放ち始める。
右左の拳のコンボ! 回し蹴り!! 下段回し蹴り!
しかしどんなに攻撃を当てようとしても、その子はノロノロと、まるで揺れる柳のように、全ての攻撃を躱していく。
ドカ!
そして気付くとワタシは、尻もちをついて、倒れていたのだ。
その子が指を突き出していることから、ワタシはその指に軽く押されて、転倒したことが理解できた。
「あ、貴女いったい何なの!?」
ワタシは驚愕に目を丸くしながら、その子にそう尋ねた。
「リンネを見た目で判断すると痛い目見るぜ。そのリンネは見た目はそうだが、れっきとした大人なんだ」
するとリンデルがそう答えたのだ。
目の前のその小さな子が、大人ですって!?
そういえばワタシが生まれるずっと前に、幼女の見た目の凄腕の冒険者がいたという噂を聞いたことがある。
もしかして今目の前にいるのは、その幼女なのだろうか?
「貴女もしかして巨剣の幼女!?」
「おや? それは私の昔の二つ名ですね。まだそんな二つ名が残っていたんですね・・・」
まさか目の前にいるのが、あの悪名高い巨剣の幼女であるなどと、思いもよらなかった。
だがそれが本当であれば、あの強さも頷ける。
「その見た目で、まさか本当に大人なんて驚きだわ。じゃあリンネ・イーテ・ドラゴンスレイヤーは同姓同名のお兄さんとかなのかしら?」
「ふぁ? 何を言っているんですか? リンネ・イーテ・ドラゴンスレイヤーは、この国に私1人だけしかいませんよ?」
「え? ちょ?」
ワタシはそのリンネの言葉が信じられなくて、確認も込めて生みの母である、エマ師匠の顔を見る。
するとエマ師匠は、目をそらしてしまった。
再び確認を込めて育ての親であるおかあさまの顔を見る。
するとおかあさまも、目を逸らしてしまったではないか。
ワタシはその2人の様子を見て、それを肯定であると認識した。
ではワタシの本当のお父さまは、いったいどこにいるというのだろうか?
今まで屈強な男である、リンネ・イーテ・ドラゴンスレイヤーがワタシの父親であるはずだったのだ。
それが実は見た目幼女の大人の女性で、父親にすらなりえない存在だったのだ。
「まあ嬢ちゃんは色々と特殊だからな。幼女の身で、大人の女性に子供を産ませることも可能なんだぜ?」
するとクマジロウがワタシの肩に手を置き、そんな信じられないことを口にした。
それを聞いたエマ師匠とおかあさまが、落ち着きがなくなり、そわそわし始める。
リンネは恥ずかしそうに頬を指でかきだした。
その様子からさらにそのありえない事実が、真実味を増してくる。
しかしどうしても私は、その事実を信じたくなかった。
「そんなの信じられるかああああ~!!」
気付くとワタシは、クマジロウに向けてそう叫んでいた。
「スキあり!!」
コテッ!
「ぎゃ!!」
その時リンデルの不意をついた1撃で、再び転倒してしまう。
「へへ~ん! これでおあいこだな?」
「なにおおお!?」
そしてワタシはやけになり、リンデルと再び激しい組手を開始した。
次はなかなか決着がつかず、途中で標的をリンネに変えたら、そのワタシの意をくんだリンデルも、リンネに標的を変えた。
そして2対1のバトルになったが、2人仲良くリンネに地面に転がされた。
「2人とも何やってんの?」
「「いや・・・なんとなく・・・」」
今回はそんな感じでうやむやに終わったが、ワタシは目の前の幼女が父親であるという奇妙な事実を、どう受け止めればいいのだろうか?
【★クマさん重大事件です!】↓
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