23:エテールのさらなる発展
翌日宿場街を後にした私達は、魔物などの襲撃もなく、順調にヘンツさんを走らせる。
「リンデル坊ちゃま!! 違うざます!! 紳士の挨拶はこうざます!」
「なんだよリンネ。そのしゃべり方・・・?」
「嬢ちゃんが壊れた!」
「黙るざます!!」
途中退屈だったので、ヘンツさんを走らせつつ、リンデルに貴族の礼儀作法などを教え込んだりした。
そして夕方までにはエテールの街に到着した。
エテールの街の関所に行くと、新しく建て替えられ、関所が綺麗になっているのを感じた。
関所の入り口は2つに分けられ、貴族専用のものと、一般のものとに区別されているようだ。
昔は簡素な造りの入り口が1つだけだったので、これだけでもエテールの街の発展を感じる。
一般の人達が並ぶ列には、商人や旅人冒険者などの、長蛇の列が出来ていて、街の活性化ぶりも見て取れた。
私は貴族なので、貴族専用の入り口に向かう。
「こ、これはリンネ様! お帰りになられたのですね!」
関所の入り口に向かうと、衛兵のおにいさんにそんな感じに迎えられた。
見覚えのない新しい衛兵のようだが、なぜ私のことを知っているのだろう?
「えっと・・・私のことをなぜご存じで?」
とりあえず衛兵のお兄さんにその理由を聞いてみた。
「領主様やエマ様が、貴女様は必ずお帰りになるとおっしゃっていましたから、似顔絵と特徴を書いた紙が配布されているのです!」
つまりこのエテールの街で、再び私の手配書が、復活しているということなのかな?
「とりあえず屋敷の方に先ぶれを出しますので、屋敷から迎えが来るのをお待ちください・・・」
私達はヘンツさんから降りると、客室のような寛げる部屋へ案内された。
貴族用の待合室のような場所だろうか?
「昔はこんな場所に案内されませんでしたのに、今回は違うんですね?」
「大方屋敷の方に、嬢ちゃんが来たら伝えるようにとでも、通達してあったんだろう」
まあ皆には心配をかけたし、死んだと思われていてもおかしくはなかった。
そんな中皆は、私の生存を信じていてくれたのだろう。
「リンネちゃん!!」
そして私を迎えに来たのは、目に涙をいっぱいにためた、アレクシア夫人だった。
アレクシア夫人は白髪も多くなり、ずいぶん老けたようだ。
年齢的には、50代手前くらいだろうか?
「ご心配をおかけしました。無事に生きて帰還しました・・・」
私は座っていた椅子から静かに立ち上がり、アレクシア夫人に帰還の挨拶をした。
「生きて帰って来てくれて、本当に良かったわ! ローレンス様は貴女が亡くなったって言うし・・・エマは100年は回復しない怪我を負って、聖獣様に連れていかれたって言うし・・・本当に心配したのよ!」
アレクシア夫人は、ボロボロと涙を流しながら、私を抱きしめる。
彼女にはずいぶんと長い間、心配をかけてしまったようだ。
「久しぶりねリンネちゃん。無事な貴女を見られて良かったわ」
そしてアレクシア夫人には、エイリーン夫人がついてきていた。
エイリーン夫人は、エインズワース侯爵家から、エテール家に嫁いできた女性で、子供のころからの私の旧友でもある。
「そのファイヤーガン・・・まだ持ってくれていたんですね?」
エイリーン夫人は子供のころに私が作ってあげたファイヤーガンという武器を、今も護身用として持ち歩いているようだ。
「ええ。わたくしの宝物よ・・・」
そう言いつつエイリーン夫人は、腰にぶら下げているファイヤーガンを優しくなでた。
「えっと・・・クマジロウと・・・その黒髪の男の子は?」
アレクシア夫人はひとしきり泣くと、落ち着いたのか私への抱擁をとき、今度は後ろにいたリンデルに注目する。
「お、お初にお目にかかります。オレは・・・・リ、リンデル・イーテル・・・」
私が旅の途中で、色々と紳士の挨拶を教えたためか、リンデルはアレクシア夫人とエイリーン夫人に、かしこまって紳士の挨拶をしようとする。
「リンデルです! 私の息子なんですよ!」
私はそんなリンデルの肩を、ニンマリと笑顔で抱き、その紳士の挨拶を遮るようにそう紹介した。
ここでリンデルが王子として挨拶をすれば、2人は堅苦しい態度になると思うんだよね。
そういうのはリンデルも好まないようだし、ここはあえてラフな挨拶に切り替えた方がいいだろう。
「相変わらずね。リンネちゃんは・・・」
「嬢ちゃんだからな!」
そんな私の様子を見て、アレクシア夫人とクマさんは、呆れた様子でそう口にした。
関所をくぐりエテールの街に入ると、その街並みは昔とはずいぶん様変わりしていた。
新しい住宅や、高い建物がひしめいて、まるでどこか知らない国の、大都市にでも来たような感覚を受けた。
「あら!? どうしましょう!? 迎えの馬車は4人乗りだったわ! 小さい子達が詰めれば、5人乗れないかしら?」
迎えの馬車を見ると、どうやら4人乗りのようで、確かに私達が詰めれば、乗れなくはないように思える。
「せっかくなのでヘンツさんで行きましょう」
私はそんなアレクシア夫人に、そう提案した。
馬車はがたがたと揺れるし、乗り心地はお世辞にもいいとは言えない。
この世界の人達には当たり前の乗り物なのだが、それでも私には不便に感じるのだ。
ヘンツさんの後部座席は、広々としているし、大人3人でも余裕で座れる。
それになにより揺れたりがたついたりしないので、ゆったりと乗ることが出来るのだ。
「いいわね! そうしましょう!」
「え~! オレ馬車にも乗ってみたかったのに!」
アレクシア夫人はその意見に賛同するが、リンデルは馬車に乗ってみたいようだ。
リンデルは馬車に乗ったことがないようで、馬車に興味を惹かれているようだ。
「じゃあ貴方はうちのメイドと馬車に乗ってみる?」
アレクシア夫人が、リンデルにそう提案する。
「え!? いいのか!?」
「もちろんいいけど・・・馬車は揺れるわよ?」
「かまわないぜ! オレは一度馬車に乗ってみたかったんだ!」
リンデルはそのアレクシア夫人の提案に、大喜びする。
まああの揺れとがたつきは、経験してみないとわからないよね。
リンリ~ン! リンリ~ン! シュシュシュシュ・・・!
「ん? なんの音ですか?」
その時自転車のベルのような音が鳴り、電車が走るような機械音が響いてきた。
「魔道列車の試運転ね」
「魔道列車ですか・・?」
ゴゴゴゴ~!!
音がする方を見ると、まるで煙突のない機関車のような乗り物が、街中を走っているのが見えた。
「すげえ! なんだありゃあ!?」
「ほう!? もう試験走行を始めているのか・・・」
「すごく大きいですね! なんであんな乗り物が!?」
私達はその大きな魔道列車を、目を丸くして見ていた。
大きいといっても、バスくらいの大きさなのだが、その時の私には、それがすごく大きく感じたのだ。
「ゴドウィン卿がエテール領にやって来て、あれの実験を始めたのよ。来年には人が乗れるんじゃないかしら?」
「ゴドウィン宮廷魔導士が?」
「ゴドウィン卿はすでに宮廷魔導士を引退したのよ。今では夫婦でこのエテールの街で生活をしているわ」
どうやらあの魔道列車の試験走行は、ゴドウィン宮廷魔導士改めゴドウィン卿が行っているようだ。
王都はいろいろなしがらみもあり、ああいった実験には、色々な事情を抱えた貴族の反対がつきものなのだ。
もちろんその中には、私利私欲で動いている貴族もいることだろう。
そんなことで、王都での魔道列車の実験は頓挫しているままだと、聞いたことがあった。
まさかその実験を、エテールの街で行っているなんて・・・。
「オレあれにも乗ってみたい!」
「今は馬車でしょ」
そんな興奮冷めやらない様子のリンデルを馬車に乗せ、残りの皆は、悠々とヘンツさんでエテールの屋敷を目指す。
「げ! ぎゃ! なんでこんなに揺れるんだ!?」
リンデルは馬車の窓から顔を出しながら、ヘンツさんに乗る私達に、そんなことを聞いてくる。
「馬車なんてそんなものよ。リンネちゃんのこの乗り物がおかしいのよ」
アレクシア夫人は、そんなリンデルに優しくそう答えた。
でもヘンツさんはおかしくない!
「へ~。ずいぶんと改築しましたね」
エテールの屋敷の前に来ると、新しく綺麗に、改築された様子が見て取れた。
「リンネ様!!」
そして門の前に来ると、開け放たれた門から、飛び出してくる人影が見えた。
その人影は私に触れると、絡みつくように抱き上げた。
「だれ?」
その顔を見ると、大粒の涙を流したエマちゃんであることがわかった。
「うわあああああん! もう一度会えるなんて! まるで奇跡のようです!! うわあああああん! わん・・・!」
エマちゃんは大泣きすると、そのまま私をぐいぐいと抱き寄せ、頬ずりし始めた。
その涙で私はぐちょぐちょになるが、それを今言うのは、野暮というものだろう。
「ごめんねエマちゃん。心配かけたよね・・・」
私はそうあやすように、語り掛けながら、エマちゃんの頭をなでなでした。
「え・・・あ・・・」
エマちゃんに抱き上げられながら、その先をふと見ると、エマちゃんの後ろには7歳くらいの銀髪の女の子がいて、呆然とした様子で私を見ていた。
「フフ。ごめんねアイリン。突然泣いたりしてびっくりしたよね?」
エマちゃんは私を抱き上げたままで、涙を拭き、アイリンとよばれるその女の子に、微笑みながらそう言った。
え? 誰・・・・?
【★クマさん重大事件です!】↓
お読みいただきありがとうございます!
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「面白い!!」
「続きが読みたい!」
「クマさん!」
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