22:聖獣の氷を生む神殿は今・・・・
「すげえな! まるでダンジョンの入り口だぜ!」
リンデルが宿の庭先にある、神殿の入り口を見て、はしゃぎまわる。
そういうところを見ると、やはり子供だなと思う。
翌早朝に私達は、ラッセルさんの案内で、私の建てた例の氷を生む聖獣の神殿の前に来ていた。
この神殿は20年も前に、ラッセルさんが気軽に氷を使えるようにと私が建てた、氷室のつもりが、大掛かりな神殿のようになってしまった建物だ。
建てた責任もあるので、メンテナンスをしておくことにしたのだ。
「えっと・・・。なんでこんな早朝なんですか?」
私は早朝にと約束をして、私達を案内してくれた、ラッセルさんに尋ねた。
「2の鐘が鳴ると、参拝者が多く訪れますので、お2方には都合が悪いと思いまして。」
参拝者? 私の建てたこの建物が、神社みたくなっているのだろうか?
2の鐘とは前世時間で朝の8時をさす。
異世界の人は基本早起きなので、前世の感覚で行くと、朝9時か10時くらいの感じだろうか?
今ではこの建物は、聖獣の氷神殿とよばれ、訪れる参拝者が後を絶たないようだ。
そんな人混みの中で、聖獣であるクマさんと、アイなんちゃらと勘違いされている私が現れれば、大騒ぎになる可能性があるのだそうだ。
「え? では氷を使うのに、支障があるのではないですか?」
参拝者が後を絶たないのであれば、氷が必要なタイミングで、取りに行きにくいのではないのだろうか?
「その心配はありませんよ。実はうちの宿でも、話題のミスリル冷凍庫を買ったんですよ。いまではその冷凍庫で、氷を作っておりますので・・・」
ミスリル冷凍庫? たしかその冷凍庫は、私が18年も前に開発して、特許登録した記憶がある。
ドラゴノイドの村で砂糖と引き換えにするために造った例の冷凍庫だ。
しばらく頼まれるままに造っていた記憶があるが、そのうちに面倒になって、商業ギルドに、製造販売を委託していたのだ。
そのうちクマさんの聖獣印のあるものが、私が直接作ったものだ。
模造品なども出回っていたらしいので、実際にこの宿にあるものが、本物かどうかはわからないが、後で確認させてもらおう。
「参拝者が多いなら、あの入り口が狭いのは、少し不便ですね?」
見ると氷の神殿の入り口は、人が2列に並んで入れるかどうかの広さだ。
「そうですね。もう少し入り口が広ければ、人の出入りもスムーズになって、混雑もしなくなるかもしれませんね」
「では入り口をもう少し広くしましょう」
私はそう言うと、神殿の入り口に、トテトテと歩いて近付いた。
すると以前にはなかった、2つの石像の存在に気づく。
氷の神殿の入り口には、今ではクマさんとアイテールらしき幼女の石像が、左右に設置してあるのだ。
「この石像は?」
「信心深い彫刻家の方が、置かせてくれと頼み込んできまして・・・」
なるほど。どこかの彫刻家が、寄付した石像のようだ。
ズズズ…
「おおすげえ! 石像が動いた!」
私が魔法で石像を動かすと、リンデルがその様子に驚愕する。
ゴゴゴガン! ゴゴゴガン! ゴゴゴ・・・・
私はそのまま下に続く階段を下りながら、神殿の入り口を広げていった。
ついでに壁や柱の欠けた部分や、カビの生えた部分を修繕しておく。
「こんな感じでどうでしょうか?」
「いやはや! このような奇跡を、またもや目にしようとは・・・」
私がそう聞くと、ラッセルさんは何か感激しながらそう口にした。
そして私がふと目をやると、神殿へ続く道の途中に、開けた場所があるのが気になった。
あの場所で屋台でもやるのだろうか?
「いえ。あそこはたまたま、ああなっているだけで、屋台などは開きません」
聞いてみると、ラッセルさんからは、そういった答えが返ってきた。
「それはもったいないですね・・・」
私の記憶にある神社といえば、七福神などを形作った、デコまんなどを売る店があったものだ。
確かデコまんは、鉄の型を裏表作り、焼いてから合わせるんだったか?
私は手本にと、聖獣5柱を形作った、デコまんの鉄の型を、操鉄で作ってみた。
「それはいったい?」
ラッセルさんはその鉄の型を不思議そうに見ている。
「これはこうして使うんです・・・」
私は鉄の型を火魔法で加熱して温めると、油を引いて、ホットケーキ用に用意した小麦粉を入れて焼き始めた。
ジュ~‥‥
ある程度小麦が固まったら、左右の鉄の型を合わせて、さらに加熱する。
そして完成したのは、聖獣5柱のデコまんだった。
私はその聖獣5柱のデコまんを、皿にのせて3人に見せたのだ。
「これは素晴らしい!」「おお! すげえ!」
「ほほう? オイラ達聖獣のお菓子か?」
それを3人は感心したように見ている。
「しかしなぜ5柱なのです?」
「ふぁ?」
それを聞いた私は、変な声が出てしまう。
ラッセルさんは、そう不思議そうに聞いて来るが、聖獣は5柱と聞いているし、なにがおかしいのだろうか?
「なぜリンネ様が、この中におられないのですか?」
「そうだぜ! この中にはお母さまがいねえ!」
どうやら2人の不満は、この中にアイテールのデコまんが、ないことのようだ。
2人して私とアイテールを、ごっちゃにするのは止めていただきたい。
2人の話では、この5柱を語るときは、一般的には必ずアイテールの存在を一緒にするのだとかなんとか・・・。
まあこのセイクリカ正教的あるあるは、私にはまったく理解できなかったがね。
「わかりました。アイテールもこの中に追加しましょう!」
私はそう言うと、鉄の型の中に、アイテールの型を追加した。
「これで6柱そろいましたな!」
「ああ、全員いるな!」
6柱のデコまんを焼き上げると、2人は満足そうにそのデコまんを見た。
「これで屋台を出せば、間違いなく儲かりますよ」
「いえ・・・残念なことに、こんな良いものがあっても、屋台を出す人員がおりません・・・」
なるほど。それもそうだ。
いくら屋台を開くと言っても、人員がいなくてはどうにもならない。
「その人員は、私がなんとかしましょう」
そう言って突然話に乱入してきたのは、見知らぬ貴族だった。
黒に近い長い茶髪で、黒っぽい貴族服を着た、30歳くらいのおじさんだ。
「これはシアースミス男爵様。いつもの参拝ですかな?」
「ああ。ラッセルも元気そうでなによりだ。ところでそちらのお3方に紹介してくれぬかな?」
そのシアースミスさんという貴族のおじさんは、こちらに向き直り笑顔でそう口にした。
「こちらはアルフ・イーテ・シアースミス男爵様でございます。この宿場街の街長であり、この宿、太陽の木漏れ日亭のオーナーでもございます」
なるほど。太陽の木漏れ日亭にはよく来ていたけど、オーナーに会ったのは初めてだ。
でも私達はお忍びということで、この宿場街にきているんだよね。
ここでこの宿場街の街長に会ってしまうのは、少々体裁が悪い気もする。
「リンネ・イーテ・ドラゴンスレイヤーですわ。この度はお忍びで参りましたの」
こういった場合は、やはり堂々と正直に受け答えするのがいいだろう。
私はカーテシーをしながら、シアースミス男爵にそう答えた。
「オイラ、クマジロウだ」
「リンデルだ!」
そしてクマさんはいつもの片手を上げたラフな挨拶をし、リンデルもそれを真似して挨拶をした。
リンデルにはあとで挨拶の仕方も、教える必要があるだろう。
まあリンデルが、この国の王子だとか、私の息子だとか言うよりは、ずっとましなのかもしれないがね。
それからシアースミス男爵と、私がこの神殿を建てたことで発生した報酬の話や、これから開くデコまんの屋台についての話をした。
難しい話だったのか、そのうち退屈になったクマさんとリンデルが、宿のてっぺんにジャンプして登っていくのを見たときには、シアースミス男爵も開いた口が塞がらない様子だったよ。
まあ最後にラッセルさんが持って来た、練習用に焼いたデコまんをお土産に渡したら、ご機嫌な様子で帰って行ったがね。
デコまんの味はまあ・・・・ホットケーキの味だったよ。
【★クマさん重大事件です!】↓
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