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19:ゆるい旅?


「リンネ・・・。ちょっとゆるくないか?」



 リンデルはヘンツさんの後部座席で、退屈そうな様子でそう口にした。


 現在私達は王都を出て、エテールの街を目指して、ヘンツさんに乗って走行中だ。


 ゆれもガタつきもないヘンツさんでの走行は、快適そのものだ。



「お腹がゆるいのリンデル? 仕方ないね。どこかでトイレ休憩を・・・」


「違わい!!」



 どうやら私のその返答に、リンデルはご立腹のようだ。

 いったいなんだと言うのだろうか?



「リンネ、旅は過酷だって言っていたよな!? この旅のどこが過酷なんだよ!?」



 どうやらリンデルは、過酷な旅をお望みのようだ。

 マゾなのだろうか? だとしたら親としては見過ごせない気もする。



「クマさん、もうすぐあの地点に差し掛かりますよ」



 私はそんなリンデルをスルーして、気になる地点の存在を、クマさんに告げる。



「ああ。確かこの先の道を右にそれて、森をしばらく進んだ辺りだったな」


「何だってんだ突然!?」



 そのクマさんと私の会話に、要領を得ないリンデルが尋ねてくる。



「嬢ちゃん! ここらでストップだ!」


「あいよ」



 そう言うと私はヘンツさんを止めて、ヘンツさんから飛び降りる。


 すると私に続いてクマさんも、ヘンツさんを飛び降りた。



「どこに行こうってんだ2人とも!?」



 そう言いつつリンデルも、ヘンツさんを飛び降りる。


 

「いいところですよ・・・」



 私はヘンツさんを収納魔法で収納すると、クマさんとリンデルとともに、森の中に入っていった。





「この先にはビッグハニービーの蜂蜜があるんだよ」



 私は土雲に乗り、森の獣道を進みつつ、リンデルにそう説明した。



「はあ? あの蜂蜜なら養蜂やらなんやらで、沢山作っていなかったか?」



 私は魔術学園の敷地を借りて、ビッグハニービーの養蜂をしていたことがあるのだ。

 その養蜂場を、王都にいる時にリンデルにも、見せてあげたことがあった。

 リンデルはそのことを言っているのだろう。



「あれはもう私の養蜂場ではないからね。管理しているのは学園の人達だし・・・」



 私があの養蜂場を管理していたのは、10年も前の話だ。

 現在あの養蜂場を管理しているのは、パーシアちゃんとイリスちゃんだったはずだ。



「なので私には、新たな蜂蜜が必要なのだよ。そんなことより、全身に身体強化を使ってね。でないとビッグハニービーに刺されて即死だよ?」



 私はリンデルにそう忠告する。


 ビッグハニービーの蜂蜜採取でもっとも危険なのが、ビッグハニービーの毒針による攻撃だ。

 毎年この毒針にやられて、即死する冒険者が、後を絶たないと聞いたことがある。

 

 まあ私の身体強化なら、ビッグハニービーの毒針は刺さらないし、心配ないんだけどね。



「なんだよそれ!? どれだけ強化すればいいんだ?」


「普通の鉄の剣が刺さらないくらい?」


「そんなの出来るか!?」


「リンデルには未熟だから無理だろ? あと嬢ちゃん鉄の剣はやり過ぎ」



 そんなことを言い合いながら、騒がしくと森の奥に入ると、ビッグハニービー以外のもう一つの気配を、私の魔力感知が捉える。



「じゃあリンデルはそこにいる熊が、こっちに来ないように相手でもしておいてくれるかな?」


「熊? この辺りに熊がいるのか?」


「うん。あの辺り」


「グルルルルル・・・」



 すると私の指さした先から、2本角を生やした、巨大な熊が姿を現した。



「ホーンベアーじぇねえか!!!」



 その巨大なホーンベアーの存在に、リンデルが驚愕する。



「この蜂蜜はいつ食べても美味しいですね。駄目になる味です・・・」


「壺はまだあるか?」



 ホーンベアーはリンデルに任せて、クマさんと私は蜂蜜採取に励む。



「こらあああ!! お前らも戦え!!!」



 そんなことを叫んでいたリンデルも、魔力感知で様子をさぐると、なかなかホーンベアに善戦しているようだ。

 まああれだけ修行を積んだし、今のリンデルなら、十分に倒せる魔物であることは確かなのだが・・・。



「こいつしぶとすぎる! 剣で斬れねえし、吹き飛ばしてもぴんぴんしてやがる!」


「あ、リンデル。ホーンベアーは打たれ強いから気を付けてね」


「今更言うんじゃあねええええ!!」



 そして私達が蜂蜜採取をしている間に、リンデルの方も決着がついたようだ。



「あ~あ。真っ黒じゃん・・・」


「これじゃあ売り物になれねえな」



 見るとホーンベアーは焼かれて真っ黒に焦げていた。

 おそらくリンデルお得意の、火と風の合成魔術で倒したのだろう。

 だがこれでは毛皮が真っ黒焦げで、売り物にはならない。

 ホーンベアーで一番価値があるのはその毛皮なのだ。



「どうしろって言うんだ! オレには強敵だったんだよ!」


「仕方ないねリンデルは・・・あっちにももう1体ホーンベアーがいるから、手本を見せてあげるよ」



 私は蜂蜜採取をしながらも、周囲の気配を探り、もう1体のホーンベアーの存在を感知していたのだ。



「グルルルルル・・・・」



 ホーンベアーと遭遇すると、いきなり威嚇してくる。



「げっ! 本当にいた!」


「よく見てなよリンデル・・・・」



 私はリンデルの持つ剣と同じ質の、鉄の刀を取り出して居合に構えた。

 私は何も毎日料理ばかりをしていたわけではない。

 毎朝剣の稽古は欠かさず、今では平凡な鉄の刀にも、強力な武器強化が施せるのだ。



「グルウウウ!!!」



 そんな私に、ホーンベアーが襲い掛かる。



 シャキン!!



 私はホーンベアーが接近し、爪での攻撃を開始した直後に、その爪をかいくぐり、鉄の刀を抜き放った。


 そして瞬時に心臓に突き刺すと、かき回して心臓を斬り裂く。


 ホーンベアーは心臓を1突きしても、しばらくは動くことが出来るので、確実に心臓をつぶして仕留めておく必要があるのだ。


 

「グルルル~・・・・」


 ドド~ン!!



 私が刃に付いた血を振り払い、刀を鞘に納めると、同時にホーンベアーも絶命して倒れ伏した。



「すっげえ! 1撃かよ!」


「嬢ちゃんのホウライの剣技だな・・・」


「リンデルは武器強化をもっと練習しないとね?」



 ホーンベアーなどの、丈夫な毛皮を持つ魔物には、それなりの武器強化を使わないと、斬りさくことすら出来ない。


 だがリンデルほどの魔力があれば、武器強化さえ上手く使えれば、倒せない相手ではない。



「まあそんな嬢ちゃんも、初めてこいつを倒したときには、土剣で滅多打ちにして台無しにしていたがな・・・」


「ああ! 言わないでくださいよクマさん!」



 そういえば私も初めてホーンベアーを倒した時には、土剣で力任せに倒し、台無しにした記憶がある。



「土剣? 聞いたことない武器だな?」



 するとリンデルが、私の土剣について尋ねてきた。



「嬢ちゃんの本来の武器は、3メートルにもなる巨大な剣なんだぜ? それが嬢ちゃんの二つ名の由来にもなっているんだ」


「まさか巨剣の幼女か!?」



 リンデルはどうやら、私の二つ名を知っていたようだ。

 どうやら10年も行方をくらませていたのに、二つ名だけは健在だったらしい。



「巨剣の幼女については物騒な噂しか聞かねえな・・・」


「え? どんな噂?」



 まさか私の物騒な噂が、リンデルの耳にも入っていたとは・・・。



「貴族に絡んで巨剣で空高く殴り飛ばして殺したとか・・・。気に入らない貴族の屋敷を破壊して襲撃したとか・・・」


「ああ。最初のはボルッツア子爵だね。でも殴るなんて人聞きが悪いよ! あれは土剣の上にのせて、空高く投げたんだよ」


「ほとんど事実と変わらねえ!!」



 あの時は確か、護衛の騎士を差し向けてきたから返り討ちにして、最後に土剣の上にボルッツア子爵を乗せて、逆バンジーをしてあげたんだったかな。

 でも風魔法で落下直前に助けたし、気絶させたが殺してはいない。



「2番目のはカキストカワード伯爵家じゃねえのか?」


「ああいたね! ジャメシーキノコ! 友達をさらわれたから頭に血が上って、屋敷の玄関を土剣で小突いたんだったかな?」


「いや。ぐちゃぐちゃに破壊していたろ?」


「それも事実かよ!!」



 あの時さらわれたのは、エインズワース家のメイドのメイアちゃんだ。

 彼女は私の料理の愛好家で、自らも料理が上手だった。

 王都では会えなかったけど、今はどうしているのかな?


 生きていれば33歳だね。

 この世界の人達は魔力がないと、あまり長生きしないようだから、すっかり老けておばちゃんになっちゃっているかな?


 そんな思い出を色々と話しながら、私達は再びヘンツさんを出して、エテール領を目指す。



「このヤキソバパン美味(うま)!」


「このハムレタスサンドもなかなかだよ」


「オイラ甘いのがないのは少し残念だぜ・・・」



 お昼近くになると、ジルダちゃん達にもらったサンドイッチに舌鼓を打つ。

 クマさんはデザートサンドが食べたかったのだろうが、甘味は高級なのでそうおいそれと食べられないのだ。


 ヘンツさんは30キロくらいで走らせているので、本当にのんびりとした旅だ。

 ヘンツさんはスピードを抑えることで、消費魔力を抑えられることがわかっている。

 急ぐ旅でもないので、今回はゆっくりと走行させているのだ。


 それでも歩く馬車よりは速く、途中追い越すことが何度かあった。

 こうして夕方近くに、例の宿場街に到着する算段だ。



「お! 街が見えて来たぞ!」



 宿場街が見えてくると、リンデルが嬉しそうにそう叫んだ。


 あの宿場街にはいつも懇意にしていた太陽の木漏れ日亭があるのだ。

 たしか今はあのアラグノールが料理人として働いていると聞いた。

 料理長のラッセルさんは今も元気にしているかな?



【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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