18:旅立ち
「やっぱりお姉さまと別れるなんて、わたくし耐えられません!」
アリスちゃんはそう言って、私に抱き着いてきた。
現在私達は、旅の支度を終え、皆に見送られながら旅に出るところだ。
王宮の門に通じる庭に出て、お世話になった皆の見送りを受けているのだ。
「母ちゃんどんだけリンネが好きなんだよ・・・」
私に抱き着くアリスちゃんを、リンデルが呆れ顔で見つめる。
「お前もアリスに甘えなくてもいいのか? もう当分は会えないぜ?」
「オレはもうそういうのは卒業してんだ!」
クマさんのその言葉に、リンデルが得意顔でそう返す。
「貴方も来なさいリンデル・・・」
「わっ!!」
アリスちゃんはそんなリンデルを、不意打ち気味に抱き寄せる。
「放せよ母ちゃん! 恥ずかしいよ!」
そんな束縛から逃れようと、暴れるリンデル。
「まだ甘えていてもいい歳なのに、貴方は随分と早熟だったわね。それはお姉さまの影響かしらね?」
そう言ってアリスちゃんは、リンデルをゆっくりと解放した。
「お姉さま・・・旅にいかれるなら、まずはエテール領を目指してはいかがですか?」
アリスちゃんは私に向き直ると、そう提案してきた。
「お! エテールか! あそこには発展したすごい街があると聞いているし、一度は行ってみたかったんだ!」
それを聞いたリンデルも、大はしゃぎだ。
エテール領か・・・あそこは私の故郷だし、立ち寄る予定ではあるのだがね。
そんなに街が発展しているなら、見てみたい気もする。
でもアリスちゃんはなんで急に、そんな提案をしだしたのだろうか?
「そこにはお姉さまの、例の卵を授けた者がいます。その卵が使われていれば、もしかするとエテールにも・・・」
え? もしかしてそこに、リンデルのような、私の息子か娘がいるのだろうか?
「お姉さま、クマジロウ。リンデルのことは任せましたよ」
「任せてアリスちゃん」「おう任せとけ!」
そして皆との挨拶が終わると、私達は手を振りながら、皆との別れを済ませた。
こうして私は、しばらくお世話になった王宮を、後にしたのだった。
「オレ馬車に乗るのって初めてなんだよな! 揺れが思ったよりもきついって聞くけど、どんなだろうな!?」
街道に出ると、リンデルははしゃぎながら私にそんなことを聞いてきた。
「え? リンデルは馬車でエテール領に行くつもりなの?」
「え? 旅と言えば馬車じゃねえのか? あ! そうか! もしかして歩いていくのか!? それは随分と大変な旅になりそうだな! それはそれで足腰が鍛えられてよさそうだがな!」
「え? 何言っているのリンデルは? 歩かないよ・・・」
「え? ならどうやってエテールに行くんだ?」
「これだからおこちゃまは・・・・」
私は首を振りながら困った風を装う。
そしてクマさんの方を見ると、なぜか細い目をしてこちらを見ていた。
「くそう! だったらどうやって行くんだよ!?」
そんな私の様子に、リンデルは苛立ち始める。
「そんなのこのヘンツさんで行くに決まっているじゃありませんか!」
ドド~ン!!
私は得意顔で、UFO型4人乗り専用ゴーレムヘンツさんを出した。
「そんな乗り物・・・・未確認飛行物体すぎて予想もできないよ!」
そんな様子に呆れながらつっこんでくるリンデル。
ちなみになぜ未確認飛行物体などという用語を、リンデルが知っているかというと、私が教えたからだ。
「さあさあ皆さんも座ってく~ださ~い!」
私はヘンツさんの運転席に乗り込むと、皆にも搭乗を勧めた。
「オイラはやっぱりここだな」
するとクマさんが助手席に乗り込んだ。
「あ! オレも前席狙っていたのに!」
そして悔しそうにしながらも、リンデルは後部座席に乗り込んだ。
「えっと・・・リンデルは助手席じゃなくていいの?」
「え? 助手席にはクマジロウが座ってんだろ?」
なんだろう・・・この会話の齟齬は・・・。
小さいころのアリスちゃんとクマさんは、仲良く、当たり前のようにいつも一緒に同じ助手席に座っていたというのに、リンデルはそれがおかしなことだと思っているようだ。
もしかしたらリンデルは、思ったよりも常識人なのかもしれない。
「ヘンツさん発進です!」
私が命じると、ヘンツさんは徐々に前進を始める。
「お!? なんだこれ!? どういう原理で浮いてんだ!? これも土魔法か!?」
そんなヘンツさんに、リンデルがおおはしゃぎだ。
「途中孤児達の様子も見ていくから」
「おうそうだな! あいつらの様子はオレも気になる!」
こうしてまず王都を出る前に、私達はスラムにある孤児の集合住宅地に向かった。
「おお! なんだその乗り物は!?」
「すごい! 浮いてるよ!」
孤児の集合住宅地に到着すると、孤児達が大勢出てきて出迎えてくれた。
そこには数件の集合住宅が、立ち並んでいるのだ。
孤児の集合住宅地は各所にあるが、私達が立ち寄ったのは、一番思い入れのある最初に集合住宅を建てた場所だ。
孤児達は私達の乗るヘンツさんに、興味津々な様子だ。
「ああ。これリンネの乗り物なんだ」
「なんだ。リンネの乗り物か・・・」「どおりで浮いてるわけだ・・」
リンデルが一言そう言うと、孤児達はなぜか簡単に納得してしまった。
まるで私が非常識で当たり前みたいじゃないか!?
「で、リンデル。やっぱりお前も行くんだな?」
リンデルといつもつるんでいたアイデンくんがそう尋ねてきた。
「ああ。オレもリンネとクマジロウと旅に出ることにしたんだ・・・」
この2人は仲が良かったので、いろいろあるのだろう。
そんなアイデンくんは今では360人の孤児の、統括リーダーなのだ。
「リンネには本当に世話になったな。この恩は一生忘れねえ」
孤児達を代表して、アイデンくんが私に頭を下げる。
「別にいいですよそんなの。それよりも困った人を見かけたら、今度は貴方が救ってあげてください」
彼らには私の教えた魔法と、知識がある。
それらを使って、困っている人がいたら、同じように助けてあげてほしいと願う。
「ああ! それはもちろんだ!」
「まかせろ!」「俺もやるぜ!」
アイデンくんはじめ孤児達が、私の言葉に自信満々に答える。
「リンネちゃん! これを!」
すると駆けつけてきたジルダちゃんが、私にバスケットを渡してきた。
パカ!
「これは美味しそうですね。ありがとうございます。道中いただきますよ」
私が笑顔でそう言うと、ジルダちゃんと数人の女の子が、同じく笑顔で返してきた。
きっとジルダちゃんと彼女らが、集まって作ったものなのだろう。
中身は焼きそばロールと、卵サンド、ハムレタスサンドなどが入れられ、どれも美味しそうだ。
おそらく今屋台で出しているものから、抜粋してもってきたのだろう。
彼女らは今は屋台で働いているが、いつかはお店を持ちたいと言っていたのを思い出す。
「それでは皆精進するのですよ」
「皆頑張れよ!」
「オイラ達がいなくてもしっかりやれ!」
私達はそう彼らに激励をおくると、ヘンツさんを出発させ、孤児達の集合住宅地を後にした。
そして各所への挨拶を終えた私達は、王都の関所の門を抜け、エテール領への道を進んでいったのだった。
【★クマさん重大事件です!】↓
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