17:あれから3ヶ月・・・
3ヶ月後厳しい特訓により、孤児達はなんとかビッグボアなどの魔物を狩れるまでにはなっていた。
ただ冒険者は、ビッグボアなどの大物ばかりを狩るわけではないので、普段は森の浅い部分で、ビッグマウスなどの小物を捕まえさせているがね。
何よりも安全第一だ。
小さな子達は魔法が使えないので、いまだに薬草採取に勤しんでいる。
そして年長の子達は早くもF級冒険者となり、そんな彼らの見張りを交代でしている。
ただ全員が冒険者になったわけではない。
私の教えた身体強化を生かして、土木作業に従事している子もいるし、孤児達のために建てた例の建物の管理人を務めている者もいる。
私が料理を教えて、その技術を引き継いで、屋台をしている子達もいる。
ゆくゆくは自分達のお店を持つのが目標なのだそうだ。
その孤児の数も、今や360人ほどに膨れ上がり、ちょっとした団地が出来上がっているがね。
「もう教えることも、ほとんどありませんね・・・」
私は働く皆を見回りながら、そう呟いた。
「ああ。そうだな・・・。だが無駄に強力な魔法を教えたり、ゴーレムを与えたりするのは、少しやりすぎな気がするぜ?」
クマさんが呆れた様子で、私にそう言った。
私は護身用にと彼らには身体強化と、少しの魔法を教えたのだ。
もうそのへんのゴロツキくらいには負けないだろう。
「あいつらも手を離れたし、リンネはこれからどうするんだ?」
リンデルが私にそう尋ねてくる。
リンデルもこの3ヶ月で色々と教えた結果、急激にその実力を伸ばしているのだ。
今では火魔術も使用可能になった。
「冒険に出ようと思います。私は冒険者ですからね・・・」
「嬢ちゃんならそう言うと思ったぜ」
ただ故郷であるエテール領に挨拶に行っていないので、冒険するならまずそちらに立ち寄ってからになるだろう。
「なあ・・・リンネ?」
「なにリンデル?」
「オレもその冒険に、ついていっちゃあ駄目かな?」
まさかリンデルの口から、そんな言葉が飛び出てくるとは思わなかった。
「アリスちゃんからの許可がでれば構わないけど・・・。本当にいいの? 旅は貴方が思っている以上に過酷だよ?」
「ああ構わねえ! オレはもっと強くなりてえからな!」
そんなリンデルのやる気をよそに、なぜか微妙な表情になるクマさん。
「嬢ちゃんよう・・・過酷な旅ってのはよ・・・お風呂に入ったり、建物に寝泊まりしたり、便利な乗り物に乗って移動したり・・・しないんだぜ・・・」
クマさんは遠い目をしながら、小さな声で、そう呟くのであった。
そんな呟きを聞いた私は、そっと横に目を逸らした。
「お姉さま、リンデルを連れて旅に出るんですって?」
あれから数日後、私を執務室に呼び出したアリスちゃんは、私にそう尋ねた。
執務室にはアルスレット夫人やマルちゃんや、チャールズのおじさんに、ローレンス元国王までいて、何やら微妙な空気だ。
「えっと・・・。私、アリスちゃんの許可が出れば、連れて行ってもいいとは言ったんですけど・・・」
バ~ン!!
私がそういいかけると、執務室のドアが、勢いよく開け放たれた。
「オレもっと強くなるから! リンネの言いつけもちゃんと守るから! だから、だからお願いだから・・・一緒に旅に連れて行ってくれ!」
開け放たれた扉からは、リンデルが飛び込んできて、私にそう頼み込んできた。
どうやら私達の話を盗み聞きしていたようだ。
でも連れて行かないとは一言も言っていないのに、なんて早とちりなリンデルだ。
「リンデル!」
そのリンデルを叱るように、アリスちゃんが声を荒げる。
「オレ・・・今日までリンネと一緒に行動してみてわかったんだ。オレはあいつらに何もしてやれなかったのに、リンネはすぐにあいつらを笑顔にしてみせた。それはリンネにそれだけの力があるからだ。色々ととんちんかんだけど、リンネはすげえやつだよ・・・。オレはリンネと旅に出て、その背中を追いかけてみたいんだ!」
それにひるまずリンデルは、自分の気持ちをアリスちゃんに伝えた。
とんちんかんは余計だがね。
「は~・・・。貴方もやはりわたくしの息子ですわね・・・」
アリスちゃんはため息をつきながら、何か諦めたようにそう口にした。
「いいですわ。貴方がお姉さまの旅に同行することを許しましょう」
「本当か母ちゃん!?」
リンデルはそのアリスちゃんの言葉を聞いて、花が咲いたような笑顔になる。
「ただし条件があります!!」
条件? いったいアリスちゃんの提示する条件とは何なのだろう?
「期限は貴方が魔術学園に入学するまでの2年間とします!」
「2年間? 魔術学園に入学するのは10歳からだろ? オレは7歳だぜ? なら3年じゃあ・・・」
「何を言っているのです!? 貴方が魔術学園に入学するまでに1年、しっかりと王族の教育と、試験に必要な教育を、受けていただきます! それが貴方がお姉さまの旅に同行する条件です!」
なるほど・・・。確かアリスちゃんも魔術学園に入学するまでに、王族の教育やら、勉強やらを頑張っていたもんね。
「え~・・・・。でもわかったよ・・・。それでリンネと旅が出来るなら、諦めるよ・・・」
リンデルはがっかりしたように、アリスちゃんの提示した条件をのんだ。
どうやらこれで私は、リンデルを旅に連れていくことになりそうだ。
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