15:ビギナーロッド
私は孤児達に魔法を教えるために、ある杖を作っていた。
それは杖を向けた対象に魔力をおくり、身体強化や魔法の潜在能力を底上げする杖なのだ。
実はそれは、効果の小さい闘魂紅葉を発動するだけの杖だ。
クマさんによれば、おそらくそれで一時的に身体強化や魔法が使えるようになり、その感覚を覚えておくことで、次からも身体強化や魔法が、同じように使えるようになるという。
闘魂紅葉の効果を小さくした理由は、なるべく能力を、素の状態に近付けておくためである。
その方が感覚もつかみやすいようだ。
「こんな感じのビギナーロッドは、魔法の力がなかなか目覚めない者に、お母さまが使っていたことがあるんだぜ?」
これと同じような杖を、6000年前にアイテールが、使っていというのは驚きだ。
「それじゃあ効果は確実ですね。杖の名前もそのまんま『ビギナーロッド』でいきましょう。」
ところ変わって王都近辺にある平原・・・・
「というわけで今日は魔法を教えようと思います」
私は孤児達に向けて、そう言った。
冒険者ギルドに行った翌日、私はビギナーロッドを持って、王都近郊にある平原に来ていた。
そこにはリンデルやクマさん、孤児達も来ている。
「魔法だって!!」
「私魔法覚えたい!」
「ボクも!」
孤児達は全員が魔法を覚えたいようだ。
だがエルフやハーフエルフなら、アリスちゃんのように6歳くらいからでも魔力は発現するだろうが、普人族である孤児達は、普通であれば魔力が発現するのは10歳くらいであろう。
なので幼年組の孤児達は、魔法を覚えることは不可能ではないだろうか?
「クマさん。幼年組の皆さんも、魔法の習得は可能でしょうか?」
「いや。難しいだろうな。せいぜいできて、部分的な身体強化がいいところだろう。まあそれで潜在能力の底上げくらいには、なるかもしれないがな?」
確かアルフォンスくんは、9歳から身体強化らしき能力を使っていたな?
それは私ももっていたが、おそらく『かけっこ』とかいう能力だ。
走るのが早くなるというスキルだったが、いまいち実感ができなかったのを覚えている。
「ならとりあえずビギナーロッドは、全員に使っておきますよ。えいや!」
私は並んで順番待ちをする孤児達に、次々とビギナーロッドをビビビと使っていった。
「あ! リンデルは並ばなくてもいいよ。使ってもあまり効果はないだろうから・・・」
「ちぇ~!」
リンデルはそんな私の言葉に不貞腐れるが仕方ない。
この杖はおそらく、魔力が発現していない者でないと、あまり実感は得られない道具だと思うのだ。
リンデルはすでに魔力が発現しているし、この微妙な変化では、何も実感できないだろう。
「おお! なんだこの溢れる感じは!?」
「びびびって! 体中を流れる感じがするよ!」
予想通り年長組の、10歳くらいの孤児達は、魔力の存在を感じ始めたようだ。
それぞれ感じ方は違うようだが、目覚めた能力によっても、魔力の感じ方は変わってくるのだ。
「ボクは何も感じない・・・」「ボクも・・」「ニノンも・・」
それとは裏腹に、幼年組の孤児達は、何も変化を感じなかったようだ。
「お前は身体強化だな・・・お前は水の魔力に適性があるぞ・・・」
そしてクマさんが、次々と年長の孤児達に発現した能力を見極めていく。
「アクセス・・・・アクア! やったあ! 水が出た!」
「俺はこんなに高くジャンプが出来るぞ!!」
「私は火が使えたわ!」
その後は適性に応じて、魔法や身体強化の練習に取り組んでいく。
残念だが幼年組の皆は、今日は薬草採取に励んでもらおう。
そして特訓の結果、その日は簡単な魔法や、身体強化を使える子が続出した。
ただ魔法ばかりを教えていてもいけないので、数日薬草採取をした後は、魔物の狩り方を教えていく。
「おお! かっこいい弓矢だ!」
「俺の剣だ!!」
その過程で孤児達が使いたい武器を、造って渡していく。
「リンネ・・・本当にオレまで貰ってよかったのか?」
「うん。アリスちゃんには後で話せばいいよ」
リンデルにもシンプルな鉄剣を造ってプレゼントしたよ。
リンデルは母親であるアリスちゃんの許可がないと、武器を持てないようだけど、これからは魔物狩りに参加するし、必要になるからね。
だが魔物狩りはなにもビッグボアや、ビッグオストリッチなどの強敵ばかりを相手するわけではない。
普通は森の入り口付近にも生息しているビッグラットといわれる、小さな魔物を狩るのだ。
ビッグラットは小さいと言っても、ウサギぐらいの大きさはある巨大ねずみだ。
臆病で攻撃はしてこないがすばしっこく、攻撃を当てたり、捕まえるのはけっこう難しいようだ。
「ちくしょう! あっちに逃げたぞ!」
「今度はあっちだ!」
今もリンデルと孤児達が、ビッグラットを追い回しているようだ。
すでに数匹狩って、腰の辺りにぶら下げているようだから、今日の稼ぎはそれなりにはなるだろう。
「皆さん・・・数日冒険者をしてみていかがでしたか?」
私は孤児の皆に、そう尋ねた。
私達はスラムの集合住宅の食堂に集まり、今日の反省会を始めたところだ。
「充実した数日だった!」
「楽しかったぜ!!」
そう言っているのは、アイデンくん、ソラルくんの2人だ。
「俺は冒険者よりは、木材を運んだりする仕事を、やってみたいな。今なら重い木材も、持ち上げられる気がするんだ」
アドリヤンくんは、冒険者よりも、土木作業に興味があるのかな?
「じゃあアドリヤンは、明日オレが親方に紹介してやるよ」
土木作業員として働いていた、リンデルの紹介があれば、アドリヤンくんもすぐに土木作業員になれるだろう。
「私も冒険者よりは、屋台とかしてみたいな」
「あ、屋台いいね!」「私は掃除が好き!」
女の子達は、冒険者とは違う道に進みたいそうだ。
魔法を覚えて能力の底上げにはなったが、皆目指す道は、それぞれ違うようだ。
【★クマさん重大事件です!】↓
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