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「リリーフ」  作者: わたぬきたぬき


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42/49

第41話「最後まで」

九回表。


 


スコアは、

4対2。


 


 


西北高校、

最後の攻撃。


 


 


球場全体が、

城北高校の勝利を予感し始めていた。


 


 


だが。


 


 


西北ベンチの誰も、

まだ諦めていなかった。


 


 


打席には、

四番・高島。


 


 


ここまで三打数ノーヒット。


 


 


打率一割五分。


 


 


散々ネタにされながらも、

今日は必死に食らいついていた。


 


 


ネクストには、

西川。


 


 


ベンチで、

板橋が叫ぶ。


 


 


「高島先輩!!

一本っ!!」


 


 


高島は、

ヘルメットのつばを上げる。


 


 


「うるせぇ!!」


 


 


だが。


 


 


その顔には、

珍しく余裕がなかった。


 


 


マウンドの三田は、

静かに構える。


 


 


もう油断はない。


 


 


西北は弱小じゃない。


 


 


ここまで来た理由がある。


 


 


三田は、

それを認めていた。


 


 


だからこそ。


 


 


全力で叩き潰す。


 


 


初球。


 


 


154km/h。


 


 


高島は、

振り遅れる。


 


 


二球目。


 


 


フォーク。


 


 


空振り。


 


 


「ストライクツー!!」


 


 


球場が、

城北ムードへ傾く。


 


 


高島は、

ゆっくり息を吐いた。


 


 


――四番なのによ。


 


 


――オレ、

何もしてねぇ。


 


 


脳裏に浮かぶ。


 


 


試合前。


 


 


「四番レフト高島」


 


 


あの瞬間、

自分でも驚いた。


 


 


久保の作戦。


 


 


最初は、

バカにされたと思った。


 


 


でも。


 


 


今は違う。


 


 


このチームで、

勝ちたかった。


 


 


三球目。


 


 


外角ストレート。


 


 


ファール。


 


 


そして四球目。


 


 


西郷のミットが、

内角深くへ構えられる。


 


 


三田が、

全力で腕を振った。


 


 


ズバァッ!!


 


 


インコース。


 


 


ギリギリ。


 


 


避ければ、

ボール。


 


 


だが。


 


 


高島は、

避けなかった。


 


 


ゴッ!!


 


 


鈍い音。


 


 


「デッドボール!!」


 


 


球場がどよめく。


 


 


高島は、

顔をしかめながらも、

一塁へ歩く。


 


 


三田が、

露骨に苛立つ。


 


 


「あの野郎……」


 


 


「当たりにきやがった」


 


 


西郷が、

静かに返す。


 


 


「それだけ必死ってことだ」


 


 


高島は、

一塁上でニヤリと笑った。


 


 


「四番の仕事ってやつだ」


 


 


西北ベンチが、

少しだけ盛り上がる。


 


 


だが。


 


 


続く五番・西川。


 


 


三振。


 


 


六番・保坂。


 


 


こちらも三振。


 


 


ツーアウト。


 


 


あと一人。


 


 


球場の空気が、

完全に城北勝利へ傾く。


 


 


打席には、

七番・西。


 


 


三田は、

冷徹だった。


 


 


初球ストライク。


 


 


二球目もストライク。


 


 


追い込まれる。


 


 


西北ベンチ。


 


 


誰もが、

祈るように見つめていた。


 


 


三球目。


 


 


低めフォーク。


 


 


西が、

必死に食らいつく。


 


 


カツッ!!


 


 


ボテボテのゴロ。


 


 


ピッチャー前。


 


 


三田が前へ出る。


 


 


「終わりだ」


 


 


誰もがそう思った。


 


 


だが。


 


 


西は、

全力で一塁へ飛び込んだ。


 


 


ヘッドスライディング。


 


 


土煙。


 


 


一塁審判が、

両手を広げる。


 


 


「セーフ!!」


 


 


球場がどよめく。


 


 


西北ベンチが、

一気に沸く。


 


 


「うおおおお!!」


 


 


だが。


 


 


西は、

立ち上がれなかった。


 


 


一塁ベースの横で、

苦しそうに足を押さえている。


 


 


板橋が、

顔色を変える。


 


 


「西!?」


 


 


志保も、

慌てて駆け寄る。


 


 


西は、

悔しそうに歯を食いしばった。


 


 


「す、すみません……」


 


 


久保が、

すぐにベンチを見る。


 


 


「代走!」


 


 


その時。


 


 


静かに立ち上がる影。


 


 


白石寛人。


 


 


志保の顔が、

強張る。


 


 


「……寛人?」


 


 


久保も、

驚く。


 


 


「お前、

もう休め」


 


 


だが。


 


 


寛人は、

笑った。


 


 


少し疲れたような、

それでも穏やかな笑顔。


 


 


「最後くらい、

走らせてくれよ」


 


 


そして。


 


 


左手で、

そっとポケットへ触れる。


 


 


志保からもらった、

お守り。


 


 


「大丈夫」


 


 


「これあるから」


 


 


志保が、

小さく息を呑む。


 


 


その笑顔が。


 


 


なぜか。


 


 


少しだけ、

遠く感じた。


 


 


胸の奥が、

ざわつく。


 


 


――どうして。


 


 


――そんな顔するの。


 


 


寛人は、

ゆっくり一塁へ向かう。


 


 


そして。


 


 


ベースへ立った。


 


 


ツーアウト。


 


 


一塁二塁。


 


 


打席には、

八番・板橋。


 


 


夏は、

まだ終わっていなかった。

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