↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「リリーフ〜春風」  作者: わたぬきたぬき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
41/53

第37話「食らいつく」

三回表。


西北高校の攻撃。


城北のマウンドには、絶対的エース・三田。


スコアボードには、常時150km/h台の表示が並ぶ。


応援スタンドの空気も、どこか諦めに近かった。


「次も三振か……」


そんな空気の中。


ネクストバッターサークルから、板橋がゆっくり歩いてくる。


バットを、いつもより短く持っていた。


それを見た上田が、少し眉をひそめる。


「お前、ホームランでも狙ってたんじゃねぇのか」


板橋は、ニヤッと笑った。


「弱者には弱者なりのやり方がある」


「まぁ、見てろって!」


そんな板橋と上田のやりとりに、ベンチでも笑いがおこる。


だが、板橋の目だけは、真剣だった。


――絶対に塁へ出る。


その気迫だけだった。


打席へ入る。


三田は、露骨につまらなそうな顔をした。


「下位打線か」


「さっさと終わらせるぞ」


西郷は、静かにサインを出す。


初球、ズバァン!!


154km/h。


板橋は、必死に振り遅れながらファウル。


球場がどよめく。


普通なら、バットに当てるだけでも難しいボール。


二球目。


またファウル。


三球目。


低めフォーク。


これも、食らいついてカット。


三田が、少し眉をひそめた。


「……チッ」


四球目、高速スライダー。


板橋は、体勢を崩しながらもファウル。


ベンチ内、久保が、小さく呟く。


「すげぇ……」


寛人も、静かに目を細める。


「完全に気持ちでいってるな」


 

挿絵(By みてみん)

 


五球目。


六球目。


七球目。


板橋は、泥臭く食らいつき続ける。


息は荒い。


汗が、土へ落ちる。


それでも、バットを短く持ち直す。


応援席で、由希は、手を胸の前で握りしめていた。


「頑張って……先輩」


自然と、声が漏れる。


 

挿絵(By みてみん)

 


板橋は、決して天才じゃない。


上田みたいな才能もない。


寛人みたいな配球や癖を読む力もない。


でも、誰よりも、諦めが悪い。


十球目。


十一球目。


ついに、三田が、苛立ちを隠さなくなる。


「うぜぇ……!とっとと、三振しやがれ!!」


渾身のストレート。


板橋は、のけぞりながらもカット。


どよめくスタンド。


西郷の目も、変わっていた。


――こいつ。


――折れない。 


十四球目。


フルカウント。


球場全体が、静まり返る。


三田が、力任せに投げ込む。


だが、わずかに高い。


「ボール!!」


フォアボール。


球場から拍手が起こる。


板橋は、大きく息を吐く。


派手なガッツポーズはない。


ただ、ゆっくり一塁へ歩いていった。


その途中。


応援席が視界に入る。


由希は、少しだけ涙ぐみながら、笑っていた。


板橋は、少し照れくさそうに頭をかく。


ベンチでは。


上田が、ニヤッと笑った。


「泥くせぇ野球しやがって」


だが、その声は、少し嬉しそうだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。