第22話「届いていた応援」
試合後。
夕焼け色に染まる球場の外。
勝利の余韻が、まだあちこちに残っていた。
西北ナインは、
興奮した様子で話しながら帰っていく。
その少し後ろを。
板橋と白石寛人――虹原が並んで歩いていた。
板橋は、まだユニフォーム姿のまま。
疲労で足取りも重い。
「……マジで死ぬかと思った」
「七回くらいから顔ヤバかったぞ」
寛人が笑う。
「うるせぇ」
板橋が苦笑した、その時だった。
「あ、あの……!」
後ろから、小さな声。
二人が振り返る。
そこには。
由希が立っていた。
青いリボン。
ポニーテールが、夕風に揺れている。
少し緊張したように、
板橋を見つめていた。
寛人は、その空気を見て、
小さく笑う。
「じゃ、オレ先帰るわ」
「え?」
「頑張れよ、ヒーロー」
ニヤッと笑って、
寛人は手を振る。
「お、おい寛人!」
板橋が慌てるが、
寛人はそのまま去っていった。
由希と板橋だけが残る。
少し気まずい沈黙。
由希が、
ぎゅっとスカートを握る。
そして。
恥ずかしそうに口を開いた。
「あ、あの……」
「最後の守備……すごかったです」
板橋は、一瞬きょとんとする。
それから、
少し照れくさそうに頭をかいた。
「……サンキュ」
でも。
すぐに冗談っぽく笑う。
「投手の方も少しくらい褒めてくれていいんだけど?」
由希が、
ぱちぱちと瞬きをする。
「え、えっと……」
少し考えて。
真面目な顔で言った。
「た、たくさん打たれてましたけど……すごかったです!」
数秒沈黙。
板橋が吹き出した。
「なんだよその褒め方!」
「ご、ごめんなさい!」
由希が慌てる。
その姿がおかしくて。
板橋は、声を上げて笑った。
さっきまでの疲れが、
少しだけ軽くなる。
笑いながら。
板橋は、ふと由希を見る。
「でもさ」
「……応援、届いてた」
由希が、少し目を丸くする。
板橋は、
少し照れくさそうに笑った。
「ベンチ見たらさ」
「マネージャー、ずっとこっち見てたろ」
「あれで、なんか吹っ切れた」
由希の頬が、
ほんのり赤くなる。
何か言おうとして。
でも上手く言葉にならない。
だから。
代わりに。
由希は、
優しく微笑んだ。
夕焼けの風が吹く。
夏の終わりが、
少しずつ近づいていた。




