第18話「繋いだ先」
八回表終了。
スコアボードには、
5―4。
城南高校リード。
板橋は毎回の11安打を浴びながら、なんとかマウンドに立ち続けた。
「何やってるんだお前ら!」
城南監督の怒声が飛ぶ。
「相手は野手上がりだぞ!?」
「なんで打ち崩せない!!」
ベンチが静まり返る。
スコアは接戦。
本来なら、とっくに引き離しているはずだった。
「変化球も大して曲がってない!」
「球も速くない!」
監督が苛立ったようにスコアブックを叩く。
「なのに詰まる!」
「打球が上がらん!」
誰も返事ができない。
実際、打席に立った選手たちも混乱していた。
タイミングが合わない。
芯を外される。
気づけば、
要所で凡打になっている。
「くそ……!」
城南の四番、志村が、悔しそうに吐き捨てた。
その頃。
反対側のベンチでは。
肩で息をしながら、
板橋がスポーツドリンクを飲んでいた。
ユニフォームは土だらけ。
帽子のつばから汗が落ちる。
「……っはぁ……」
肩で息をする。
八回、五失点。
完璧には程遠い。
でも――
試合は、壊れていなかった。
「ナイスピッチ!」
「よく投げてる!」
チームメイトが声を飛ばす。
板橋は、苦笑した。
「五点取られてるぞ」
「でも試合になってる」
久保がミットを軽くぶつける。
「十分だ」
板橋は返事をしない。
ただ。
少しだけ、救われた顔をした。
ベンチの奥。
白石――いや、虹原は静かに試合を見ていた。
左肘は、まだ重い。
投げるのは危険だった。
でも。
(……なんとか繋いでる)
板橋の背中を見る。
普段はおちゃらけた男が。
足を震わせながら、必死に投げている。
(だったら――)
虹原は、ゆっくり立ち上がった。




