11 テイム(物理)
感想を拝見しました!イングリットさんが好評で何よりです!!
嬉しさ半分、安堵半分ですね。
イングリットさんは、絵師様である『もきゅ』様にイメージを伝えた時も色々とこだわってできたキャラですので、可愛いと言ってもらえたりして嬉しい限りです!
クローディアさんもいい出来に仕上がってもらえていると自負があります!そちらもご期待ください!
赤色の肌、いや、もっと正確に言えば赤銅色と言えばいいだろうか。
ダメージを重ねて、姿を現したデザートミリオンは本来であれば砂色の肌だ。
しかし、ネルが見つけた個体は赤銅色に染まっている。
「カハハハ!!最高だ!最高に気分がいいぞ!!さすが、ネル!!」
「あー、またリベルタのテンションがおかしくなった」
「それほど、リベルタ様には嬉しいことなのでしょう」
FBOに登場するテイムモンスターには特別個体という存在がある。
これはクラス6以降でしか、登場しない。
特別個体には、ステータス補正か特別なスキルが与えられていて通常個体よりも強化されている。
「敵も、リベルタのテンションを見てなんだこいつって目で見ているわね」
「モンスターにも感情があるのでしょうか?」
「たぶん、リベルタが喜んでいることに驚いているのよ」
デザートミリオンの特別個体は、スキルを追加で覚える。
そのスキルは硬化系スキル。
硬化系スキルは体の一部を硬化することができて、防御能力が上がるスキル。
一見すれば『あ、その程度?』と思うような平凡なスキルに見えるかもしれないが、硬化系のスキルにはいくつかレアリティが存在し、そのスキルによる効果能力が異なる。
デザートミリオンはその特別個体の覚える硬化系スキルの有用性によって、デザートミリオンをテイムモンスターとして愛用するプレイヤーが増えたと言っても過言ではない。
「行くぞ二人とも!!何が何でもテイムする!!」
奴は舌で獲物を捕らえて捕食する。
そして、その舌の先端は攻撃にも用いられるために硬質化していて鋭い。
絡みつけて口の中に取り込むのではなく、舌を突き刺して獲物を捕獲して捕食する。
硬化のスキルは、全身の防御力を上げるだけではなくその舌の先端を強化して攻撃力を増す。
「そんなに強いのかしら?」
「先ほどの動きを見る限り、スピード自体はネル様よりも下かと思いますが」
俺の興奮度合いに反比例するかのように、ネルとイングリットは冷静に戦いを再開する。
さっきまでは視覚的に見えなかったから捕捉しずらかった。
しかし今なら見えていて、相手の動きも把握しやすい。
デザートミリオンの口の動きに注意しながら、ネルが走り出しその後にイングリットが続き、俺は一旦テンションを下げ、気配を消し、奴のヘイトを下げる。
『■■■■■■!』
迫るネルに向かってデザートミリオンの舌が伸びる。
音速の壁を越えて、迫る舌の先端。
視界にとらえたその舌先は、うっすらと赤銅色染みた色合いをしていて尖っているのが見て取れた。
その色合いを見て、俺の口元がニヤッと笑みを描くのがわかる。
「見えていれば躱すこともできるのよ!」
狙われた当人であるネルは、最小限の動きで舌を躱して一気に接近する。
テイムのことを考えて、ダメージは最小限にしないといけない。
テイムの方法はいくつか存在する。
まず一つが、アイテムなどを使って好感度を稼いで友好を築きテイムする方法。
これはノンアクティブモンスター、所謂、自発的に攻撃してこないモンスターに有効な方法だ。
この方法のいい点は、友好関係を築けているから、最初からいうことを聞いてくれやすく、連携がとりやすくなること。
欠点はノンアクティブモンスターにしか効果が無く、アクティブモンスターにはできないということ。
二つ目が、強力な拘束系のアイテムを使って捕縛、そこから時間をかけてテイムするという方法だ。
これのいいところは、なんといっても金をかければモンスターを捕まえることができるというお手軽さ。
アイテムを用意するという手間があるが、手順を守れば誰でもテイムすることができる。
テイムスキルが必要ないというのも利点に上がる。
欠点は、無理やりテイムするということで好感度が最低値スタート、命令無視、反抗的な態度、もろもろマイナススタートであるがゆえに、実用段階に持っていくことが難しい。
さらに、時間をかけて実用段階に持っていけるとしても、高クラス帯のモンスターになるとアイテムだけでテイムすることはできない。
三つ目が、FBOでは一般的なテイム方法だと言える。
モンスターの本能を屈服させる。
テイムスキルを持った状態で戦い、相手を弱らせ上下関係を叩き込むという脳筋的な方法だ。
捕縛アイテムを補助で使うこともあるが、基本的には戦闘がメイン。
相手を倒すギリギリのところまで追い詰めて、最後の段階でテイムスキルを使うという方法だ。
これによるテイムの好感度は、ニュートラルスタート。
お互い相手の実力を理解し、納得しているからこそのその好感度でのスタートだ。
欠点と言えば、まず勝てない相手に対しては実行できないこと、あるいはパーティー戦であっても実力が拮抗してギリギリの勝利の場合は成功しづらい。
「はぁ!!!!」
ただ、今回の場合はその欠点は当てはまらない。
ネルはデザートミリオンよりも実力が上で、正面切って戦い圧倒することができる。
しかしそれは通常の個体の場合。
うちのパーティー内では、最高火力を叩きだすネル。
商人という非戦闘職だというのに、彼女が振るうハルバードは数多の敵を屠ってきた。
『■■■■!?』
それはデザートミリオンも例外ではない。
はずだった。
舌を避け、そのまま接近し横に大きく振りかぶったネルの一撃。
迎撃の前足の爪もダッキングで躱し、胴体真横に滑り込んだネルは振りかぶったハルバードをデザートミリオンの胴体に叩き込んだ。
「っ!硬いわね!」
手加減したとはいえ、ネルの一撃をもろに腹部に貰ったデザートミリオンは横に吹き飛ばされて地面を転がる。
本来であれば、そこにはネルのハルバードの一撃の傷が刻まれているはずだった。
しかし、現実は異なる。
「そりゃそうだ。竜麟鋼体、竜種の中でも重量系のタフネスを売りにしているモンスターが持つアクティブ系の硬質化スキル。その防御力は、硬質化スキルの中でもトップクラス」
転がりながらも起き上がったデザートミリオンの体には傷がない。
ネルの攻撃が斬撃ではなく打撃のダメージに変換され、致命傷を避けている。
「普通に攻撃したら、ダメなのね」
「ダメージが入っていないってわけではないがな。ただ竜麟鋼体を含めても硬質系スキルを突破するのはやっぱり防御力を下げる系のスキルだ」
「それなら持ってるから大丈夫ね!!」
「でも、それはあくまで倒す場合の手順で、テイムするとなるとその攻撃は過剰なんだよ。ネルの攻撃で防御力を下げたらデザートミリオンのステータスじゃ耐えられない」
それだけでも大したもので、ネルも少し手を握ったり開いたりをして攻撃した感触で通常攻撃だとダメージが通りにくいというのを感じ取っている。
「じゃぁ、さっきよりも力を少しづつ込めればいいのね!!」
「そうそう、倒し切らないことだけ気を付ければ、あとはダメージのレベルを上げていって奴を屈伏させてテイムするだけだな」
そして導きだしたのは、細かい調整を施した脳筋戦法。
力加減と、攻撃か所を調整してのダメージ管理。
それを導き出したネルに俺は笑顔で正解だと告げて頷き、デザートミリオンに向き直る。
イングリットも同時に見た所為か、ドキリと体を震わせるデザートミリオン。
「俺の攻撃は殺意が高すぎてテイムには向かない。だからサポートに回る。俺は攻撃を封じる方に専念するから、イングリットは相手を転がして動きを封じてくれ。ネルは攻撃に専念してくれていい」
「かしこまりました」
「わかったわ!」
デザートミリオンは怯えているように見え、もう一押しで白旗を上げてテイムできるのではという感覚を感じた俺たちは再び駆け出す。
ネルは迷わずデザートミリオンへ接敵する。
当然だが、接近戦で吹き飛ばされ、力の違いを感じたデザートミリオンは得た間合いを生かして今度はミドルレンジ戦を仕掛けてくる。
力関係を感じ取った、わずかな勝利のチャンスをつかみ取るための行動。
壁に貼り付ける能力、不安定な足場をしっかりとつかみ走破できる足腰。
しなる体は凄まじいジャンプ力を見せつけ、背にある翼は僅かばかりであるが空を飛ぶ力を与える。
迷彩という能力を使えば、姿をくらまし不意を打つこともできる。
そして自慢の舌という組み合わせは、機動力を生かしたミドルレンジの戦闘に向いていると言える。
だが。
「せーの!!」
その身体能力を駆使しても、ダメージを負いスキルのリキャストタイムを終えるまで迷彩を発動できないデザートミリオンはネルを振り切ることができない。
あっという間ではないが、まっすぐに突進してくるネルの速度はデザートミリオンの動きよりも早く、振り下ろされた一撃を這々の体でなんとか躱し、顔をネルに向け舌を射出しようとするが、その時間を得ることができない。
やれることはそのまま体を転がし、さらに距離を離そうとする離脱だけ。
「逃がしません」
しかし、これは一対一の戦いではない。
個体のデザートミリオンに対して、こっちはパーティーだ。
回避先に回り込んだイングリットは、ダメージを与えないように抜刀せず、箒のままで着地時に踏ん張っているデザートミリオンの右側の足を一気に払いのけた。
本来であれば、地面を鋭い爪で掴み、圧倒的な握力で安定性を確保できるはずの足場はイングリットの払いのける効果を付与された箒によって失われ、デザートミリオンはバランスを崩し体を横たえ転がることになる。
勢いあまってそのまま転がるが、ネルという脅威を忘れたわけではない。
咄嗟に顔をネルがいる方向に向けて、無理やりでも舌を射出して攻撃するデザートミリオン。
しかし、ずっと動きを観察している俺が、それを見逃すはずもなく。
「よっと」
鎌槍で舌の先端をパリィする。
舌とは考えられないほど、硬質な物体同士がぶつかったような音が響き、デザートミリオンの舌が上空に弾かれた。
勢いがついている所為で、引き戻すのに数瞬の時間を要する。
地面に体を横たえて、姿勢が不十分、乾坤一擲を狙った舌も再発射には時間がかかる。
そんな隙をうちのネルが見逃すはずが無く。
「っ!」
一気に踏み込み、再び胴体にハルバードを叩き込もうとするネルの姿を見てデザートミリオンができることは、硬質化スキルである竜麟鋼体を発動させて、耐えるしかない。
だけど、それはうちのネルの攻撃を一度耐えられたという自負からくる行動だ。
さっきの固さを把握し、手加減の修正を上方に変えたネルの一撃は。
『■■■■!?』
さっきよりも重い。
成長途中の彼女の肉体から生み出される、どうしてそんな打撃音が響くのかわからないくらいの重低音。
本来であれば斬撃になるのだが、竜麟鋼体が打撃に変換させ、その衝撃がもろに体内に響き、デザートミリオンの顔が苦悶に歪む。
ネルのハルバードが上段から思いっきり振り下ろされ、竜鱗鋼体のスキルでダメージを軽減しているとは思えないくらいに、デザートミリオンの体がくの字に曲がった。
「もう一回!!」
そして、あまりの衝撃に身動きの取れなくなったデザートミリオンはネルの掛け声にびくりと体を震わせ。
『キュルゥ!?』
止めてというような叫びをあげた。
その結果どうなったか。
ピタリと、ほんの一センチの隙間を残してネルのハルバードが止まった。
その光景を見て、敗北を悟り敵意を一切消したデザートミリオンはホッと安堵のため息を吐いたように見える。
動きを止めたデザートミリオン。
その様子が戦っていた時とは変わっていることに気づいたネルは、そっと笑顔をデザートミリオンに向けて。
「仲間になってくれる?」
そう問いかけると、デザートミリオンはブンブンと必死に顔を縦に振るのであった。




