13 邪霊ゲットだぜ!
少し短いです
素材が揃ったのなら、さっそくと言わんばかりにアイテム製作に取り掛かる。
「と、言うことで素材が揃ったのでこの設計図の封印アイテム作ってくれませんか?」
『うむ、作るのは良いが・・・・・』
そしてアイテム製作をお願いするのは、いまだ俺たちの陣営では最高峰の技術力を持っていて、さらに俺が刺激するゆえにさらに進化を続けている闇の精霊こと『闇さん』だ。
そんな闇さんがいるのはフライハイトに設けた闇さん専用の工房だ。
『次から次へと運び込まれる素材の量と、この設計図の書類の厚さは何だ?』
「仕様書だが?要求基準値とか、素材耐久値の数値とか、臨床試験の方法とか、エトセトラ」
工房の設備は現状俺が用意できる最新の物を用意し、立地もフライハイトの商工業区域の一等地を確保。さらに工房の敷地も施設もかなり大きく、隣接する形で専用の素材倉庫を併設している。
この規模となると個人で使うには広すぎるし、設備を持て余す。
本来であれば弟子やほかの職人と共同で使うような設備なのだが。
『むぅ、なんだこの難解な式は?見たことが無いぞ、これを考えた奴は変態か?』
「仕方ないんだよ。本来なら、クラス9や10の素材で作る代物を7や8の素材で代用しているんだ。その分高度な技術が要求される」
『理解はできる、納得もできる・・・・・しかし、むぅ。できるか?いや、この素材要求値から見ても、やっていることは基礎の繰り返し、いや、これはなんでこうなる?式自体は理解できる。だが、何故こっちの術式が繋がる?ああ、ここで』
独りでこの施設を闇さんは使っている。
その工房に、お手伝いの精霊たちが次から次へと素材を運び込んでいる。
どんどん闇さんの工房の倉庫が埋まっていく景色を横目に、俺の膨大なFBOの知識の中でも記憶の片隅にあった魔道具の設計図を掘り起こして、紙の上に再現した代物を熟読する闇さんを待つ。
『ふぅ』
「作れそうですか?」
『ふっ』
そして五分ほどで設計図を読み終えた闇さんは、一息吐いた。
そのタイミングで作れるかどうかを確認したら、不敵に笑い。
『無理だ』
無念と言わんばかりに、顔をしかめた。
『どんな変態がこれを作ったのだ。コンマ数ミリ単位の微調整、温度の匙加減一つで素材が使い物にならなくなる。術式を刻み込む作業は最早芸術の域。これを再現できる奴がいるなら我は迷いなくその人物の弟子になる』
そして、しみじみと設計図を俺に返してきた。
その設計図を作ったのは俺がFBO時代に知り合った友人だ。
その友人とは珍しく、ゲームで知り合い、そしてリアルでも友達になったという稀有な人物。
同じやり込み勢として、俺はバトル方面、彼はクリエイター方面でガチ勢だった。
そんな彼が作り出したのは、できるだけコストを下げた某モンスターアニメの捕獲道具だ。
サイズを野球ボールほどに抑え、そしてぶつけた対象に術式を展開、赤い光条で対象を捕獲、生存状態を維持してサイズを極小まで圧縮。
球体の中でストレス無く生存でき、さらに開放したら元のサイズに復元、そしてさらに心身ともに障害無しという条件を完璧に再現。
この条件を何度も繰り返すことができる。
「俺の友達が作った」
『なんと!?是非とも紹介してくれ!この人物の魔道具作製への熱意は我でも見たことが無い。この人物を師と呼べるのなら我が生涯に一片の悔いも残らないだろう』
そんな物をゲームの中と言えど、そのゲームの物理演算システムに準拠して作り上げたのだ。
長い年月を生きて来た大精霊である闇さんは、感動した!と言わんばかりに俺に詰め寄ってきた。
そんな彼に向かって、俺は苦笑するしかない。
「ごめん、闇さん。彼とはもう、会えないんだ」
『・・・・・そうか、すまぬ』
それは誤魔化す意味もあった。
この世界に来れたことは後悔していないけど、ふと、親しかった人たちにもう会えないと思うと寂しくなる気持ちもある。
だけど、それを一旦棚上げにできるくらいにこの世界は忙しなくて、そして楽しい。
多分闇さんは、その友達という存在が年の離れた研究者のような老人を想像したのだろう。
俺の友達は、煮詰まるとひたすらランニングして県境を越えるようなヤバい奴で、ガチゲーマーを何故していると首を傾げるくらいの細マッチョなリアルイケメンだ。
FBOを始めた理由は、パッケージに描かれていたヒロインの一人に一目ぼれしたからと言っていたなぁ。
そのために貯金崩してガチのゲーム環境を整えたと酒の席で聞いたときは乾いた笑いが出たな。
「再現できるとしたら闇さんだけだと思ったけど、そうか、無理かぁ」
しかし、そんな友の遺産は、やはり日本人特有の変態技術であったか。
俺でもガチのクリエイタービルドで、ようやく再現できるってレベルの変態技術。
このアイテムレシピは、何度ものトライ&エラーを前提に、素材さえあればクラス5でも作れると彼は言っていたが、俺でも百回やって一個成功させるのが精一杯だった。
内容としては基礎技術の塊。だけど、製作環境と工作精度にベテランでも激ムズな管理が必要という条件が必須。
『いや、やって見せる!』
「え、マジ?」
『ああ、この設計図を見ればわかる。この製作者も何度も何度も挑戦し、その都度失敗をして、修正を繰り返したのだろう』
その管理体制を闇さんならできると思って持ってきたのだ。
それくらい期待している。
実際、俺の予想は少し寄り道したような感じで当たった。
返そうとした設計図を引き戻し、再度じっくりと読み込み始める。
『この技術は難しいだけで、不可能ではない。コツコツと基礎を繰り返せばできるように念入りに作り込まれている』
俺の友達は、ただ某アニメのモンスターを捕獲する道具が欲しくて設計図を描き、そこから遊び始めただけなんだけどな。
単純に見た目でこれが便利そうだと思って、作り始めたのが沼の入り口。
どうやってそれをFBOの環境下で再現しようかと試行錯誤を重ねた情熱が、今闇さんが感じている部分なんだろうね。
最初はクラス10の素材をふんだんに使ってアニメのように確実にモンスターを捕獲できるような球体を完成させた。
次に素材レベルを抑えて、同じ性能の物を作り始めた。
さらにその次は、作業工程の簡易化を目指した。
俺の友達は、本当にそっち方面の熱意がヤバいくらいに高かったからな。
「まぁ、その設計図、実はまだ完成じゃないんだ。当人からしたらまだまだ改良の余地があるって言ってたな」
『なんと!?この芸術的と言って良いバランスの術式が未完成だと!?』
FBOがサービスを終了してからも、データは残し、作り続け、そして俺に見せて来た。
何度も、そう何度も見せてきたから俺も記憶しちゃった。
おかげで邪霊救済に乗り出せるのだから、友人には感謝だ。
唯一彼の女性の特殊な趣味として、ロリ体型の小柄な女性が大好きだと言うのを、俺はしっかりとまだ秘密にしているから安心してくれ。
友人の理想の女性は、日本じゃ出会うことは難しい。
この世界でFBOのパッケージに描かれていた友人の推しキャラと出会ったら、それとなく支援しておくから安心してくれ。
「ええ、まだまだ作り込みたいと言っていましたよ」
『なんと、本当にその師匠と会えないのが惜しい。そして、そんな熱意の結晶を見せられて、できないなどと言ってしまった我の未熟さが恥ずかしいわ!』
そしてそんな友人の裏事情を秘匿したまま語っていると、闇さんの情熱に火が灯った。
『会長、このアイテム完成させてみせるぞ!待っていてくれ!』
「ああ、それでこそ闇さん。材料は足りなくなったら言ってくれ、すぐに用意するから」
『おう!さっそくこの設計図のアイテムを作るための道具から作るぞ!!』
情熱に火の点いた闇さんは本当に集中して、作業に取り掛かる。
「頼むよ。食事とか差し入れしてもらうからちゃんと寝て、ちゃんと食べるんだよ」
『承知した!』
そして早く作業に取り掛かりたいと願う闇さんは、笑顔で工具を手に取り、俺が工房を出るのを待たずに作業に取り掛かった。
獰猛な鷹のような笑み。
それこそが心底作ることに対して楽しんでいる時の闇さんの証だ。
「さてと、こっちはこれで良いとして。次はと」
1つ目のアイテム、邪霊捕獲用のアイテムはこれで良いとして、まだまだ救済用の儀式アイテムの制作が残っている。
笑い声を抑え、楽しいという雰囲気をまき散らす闇さんを横目に、工房を後にして俺が向かった先は。
「おお!リベルタ君待っていたよ!僕にしか作れないアイテムがあるというではないか!」
もう1人のこのフライハイトのアイテム職人、パーシーだ。
作ることが大好きで、よく闇さんと酒を飲み交わすと聞くほど、お互いにクリエイターとしての腕を認め合っている。
捕獲用アイテムに闇さんがかかりっきりになるのは想定通り。
そして、そうなると闇さんだけでは次のアイテムを作るまで時間がかかってしまう。
「まぁ、間違ってはいないですよ。実際このアイテムを作れるのはパーシーさんか、もう1人、闇さんだけだと思ってますから」
「どうやら、親友にも1つ大仕事を頼んだみたいだね」
「ええ、そっちに変態的な技術が組み込まれた設計図のアイテムを」
「なら、当然僕にも?」
「ええ、これです」
なので、ここはフライハイトでレベルを上げて、さらに腕に磨きをかけたネームド職人の腕を借りるのがベスト。
闇さんと同様に、俺はにっこりと笑みを浮かべ、マジックバッグから分厚い設計図を取り出す。
「これは・・・・・なんという代物だ。こんな方法で、いや、よく見れば術式は基礎的なものだ。なるほど応用でこのような使い方が。ハハハハハハハ!これはすごい!なんだこの変態的な技術は!!これを作った職人とはいい酒が飲めそうだ!!」
パーシーに頼むのは、キメラに融合した体を分解してから再編をするための儀式用具だ。
流石に魔法陣だけを描いて、その上に対象を乗せて合掌したあとに地面に手をついてどうにかなる。
なんてご都合主義もなければ、魔法の薬を飲んであら不思議とあっという間に体が元通りになるような秘薬もない。
あるのはただ一つ、理論に基づいて、体を作り直すという、ファンタジーではなくSF的な技術をファンタジーの世界に落とし込めた友の技術。
まぁ、端的に言えば医療用ポッドです。
こう、円柱状のガラスポッドに治療対象を入れて、特殊な薬液で満たして治すあれです。
そのSF的な機器を剣と魔法のファンタジー世界であるFBOの世界観で再現したときは、馬鹿と何かは紙一重だと本気で思ったわけだ。
「できますか?」
「今はできない!だが、すぐにできるようにしてみせるとも!!友が挑むなら私も挑まぬ理由がない!!」
「それでこそですね」
そうして、フライハイトの最強クリエイターコンビのデスマーチが確定したのであった。




