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14 移民

 

「それじゃ、とりあえず、こいつらは拘留しておくから、ジュデスとシャリアはクローディアと協力してこの男たちを追ってくれ。トカゲの尻尾切りみたいにスパッと縁を切られている可能性もあるけどね」

 

 フェーダ族という面倒な来客で手間が増えたかと思ったが、王家の紋章の付いた馬車を襲った集団の手がかりとなりそうな情報を持っていたのだから、結果オーライと言えるだろう。

 

 そんな情報が入った翌日、執務室に俺、イングリット、ジュデス、シャリア、そしてゲンジロウ、闇さんの六人が集まっている。

 

 フェーダ族からの情報はシャリアがいなかったら手に入らなかったモノだと考えると、運が良かったと言える。

 

 ただし、フェーダ族の教えてくれた情報はFBOにはなかった情報ばかり。ネームドキャラが絡んでいればそこから原作の情報と連結して当たりを付けられるのだが、今回はそれが難しい。

 

 そうなってくると物語に描かれなかった事柄になるから、途端に俺の情報精度は下がる。

 

 なので裏付けを取るために情報を精査するという手順が生まれてしまったが、これは必要経費だと割り切ることにする。

 

「それを含めて僕たちの仕事だからいいけど、その代わり休暇はしっかりと用意しておいてね♪」

「そうだな、ざっと一週間くらいは欲しいな」

「わかった。交代でそれくらいはとれるように調整しておく」

 

 フェーダ族は結局、拘置所でしばらくの間拘留することに決まった。

 下手に処理してしまったり、解放してしまうと余計な手間が増える可能性があるからだ。

 大変だったのは、シャリアが拘置所から出ていこうとすると一斉にフェーダ族の男たちが騒ぎ出すこと。

 シャリアのことを男たちは必死に引き留めようとするが、彼女が笑顔を見せつつも冷めた声で突き放すと、彼らはシクシクと泣き始め、それ以外は大人しく害がなさそうな雰囲気になったので、今のところは拘留したまま放置している。

 

「それじゃ次にゲンジロウ」

「はっ!」

「あの面々を見張るのは大変だけど、御庭番衆を1人責任者にして、他の御庭番衆から3人で構成される見張り班を作って監視してくれ。他に必要な要員は住民の義勇兵から選抜していいから」

「わかり申した」

 

 しかし拘留すると決めた以上、見張りや食事、そして衛生管理とやることは多い。

 解放することも処理することもできないので、しばらくはこいつらを拘留するしかないと決めた分のコストはかかるのだ。

 人手不足のフライハイトでそのための人員も割かなければならないことを考えると、非常に腹立たしい。

 

「闇さん、こいつらの部族は仲間意識が強いから奪還しに来る可能性が高い。精霊たちに警戒網をもう少し厳重にしてもらいたいんだけど、どれくらい報酬を払えばいいかな?」

「今の巡回警戒の報酬は、アミナちゃんのライブであったな。そこにお菓子、快適な寝床に大浴場、さらには裁縫や木工、鍛冶などの技術を学べている。それは彼らには学べなかった分野であるから、とても良い時間を過ごさせてもらっている。同じ待遇を約束してくれれば、精霊界では手伝いたい精霊は大勢いるぞ」

「そうか。それじゃ、今度新しい時計の情報を教えるから、闇さんから信用できる精霊を選抜してもらっていいかな?」

「わかっているな会長。相分かった。某に任せるといい」

 

 その人手不足を一旦は精霊たちに補ってもらっている。

 闇さんに追加報酬を支払って、ニヒルに笑い快諾してくれたことに喜びを感じつつ、これでひとまずはフェーダ族に関しては問題なくなった。

 

 襲撃犯たちに協力した商人たちの情報が集まるまでには時間がある。

 

「それじゃ、皆、お願いね」

「任せて♪」

「任せられたからにはしっかりと成果は出すさ」

「はっ!お任せを」

「任せられた」

 

 それぞれに仕事を頼めば彼らは動き出す。

 そうして、執務室が少し静かになる。

 

「そういえば、スカウトした人たちが来るのっていつだっけ?」

 

 そして俺はこのフライハイトで一番、暇とは無縁の人間だろう。

 執務室の豪華な椅子に体を預け、スケジュール管理をしてくれているイングリットに問いかけると。

 

「本日ですね」

「なぬ?」

「先日の会議でスカウトをしようと決めた方々に関しまして、エンターテイナーの皆様とジンク様方商店街の方々による交渉の結果、快くスカウトを受けてくださった第一陣が、本日フライハイトに来られます」

 

 完全に忘れていた予定が出てきた。

 

「やっばい、完全に忘れてた」

 

 毎回こうも色々とトラブルが舞い込むと、頭に入れてメモを取っているつもりでも、こういう部分で抜けが出る。

 

「そちらの方に関しましては、ガトウ様とジンク様に対応してくださるようお願いしてあります。本件の襲撃事件の方が優先だと判断しました」

「ありがとうイングリット。後でジンクさんとガトウさんにはお礼を言っておかないと」

「お二方ともリベルタ様が多忙なのは理解しておりますので、その点も問題ないとおっしゃっておりました」

「本当に助かるわ」

 

 何もかも一人で抱え込む必要はないと言われると、本当に気楽で助かる。

 

「となると二週間後には第一陣の孤児の受け入れだっけ?」

「はい。その点に関しまして神殿の方から書状が届いております。今回受け入れる孤児の総勢は約三百人ほどです」

「・・・・・改めて聞くと多いなぁ」

 

 そして忘れていたとしても、それをきっかけにすれば連鎖的に関係の深い情報は繋がってくるわけで、教師候補の人が来る半月後には、神殿騎士が護衛した孤児たちがこのフライハイトにやってくる。

 

 神殿が管理している孤児院の中でも、生活が苦しい環境の孤児を中心に引き取ると話し合っている。

 こちらの要求はとにかく真面目な子供。運動が苦手でもいい、勉強が苦手でもいい、多少コミュニケーションが苦手だっていい。

 

 ただ「真面目さ」を求めた。

 

 そうやって選ばれた子供が三百人ほどこっちに向かっていると聞いて、テレサさんたち商店街の女性衆に加え、御庭番衆の家族の女性衆に「子ども食堂」のようなことと「保育士」のような仕事を依頼した。

 

 将来的にはこの街の働き手になってくれることを見越した先行投資だと話しているから、彼女たちも前向きに協力してくれているらしい。

 

「神殿騎士からは、一個大隊を派遣してくれると聞いておりますので、邪神教会からの襲撃は心配しなくてもよろしいかと。他にも神官と見習いを含めればかなりの人数になります」

「まぁ、こっちは大きな貸しがあるからな。さすがに万全な体制で孤児たちを送ってくれるか」

 

 そんな心のゆとりがあるのも、衣食住を充実させているからだろうな。

 食料は常に増産し続けているから、輸出できるほど豊富だ。

 水源も魔道具によって確保しているから、そこら辺も心配いらない。

 

 天候に左右されない食料生産と水源というのは、人間にとってかけがえのないモノだ。

 

 仕事もある、食う物もある。

 そして娯楽もある。

 

 ちょっとを通り越して、かなりおかしいと噂されるこの街の領主がいることや、たまに全裸になる諜報部隊、体育会系も真っ青な鍛錬を自らに課す侍集団、自由気ままに動き回る精霊がいるけれど、それを差し引いてもこの街に住む人たちの顔ぶれは個性豊かだ。

 

 普通に考えれば「移民」と聞けば、かなり神経質に対処しなければならない問題だ。

 

 以前住んでいた場所の特徴、風習、環境、それが全く同じというのは本来あり得ない。

 

 俺の知恵を軸に生み出したフライハイトは、ありとあらゆる環境でも似たような生活を送れることを前提としている。

 

 まぁ、過酷な環境になればなるほど必要になる魔道具が多くなるし、土地の確保も難しくはなるけれど。

 

 この土地を選んだ理由は、王様に交渉すれば取得しやすい土地だった上に、誰にも知られず資源が豊富、さらに開拓すれば人の生活に問題ない気候だという、割と好条件な要素が揃っているからだ。

 

 これは俺だから好条件だと言えるだけで、この世界の住人から見れば「モンスターが蔓延っていて、開拓することなどほぼ不可能」と言われるような土地だと認識されていた。

 

 資源調査もできないくらい辺境という立地も重なって、放置されていたと言ってもいい土地なのだ。

 

「しかし、大丈夫かなぁ」

「何かご心配されることがあるのですか?」

「うん、イングリットに聞きたいんだけど」

 

 そういう場所に住んで快適に過ごせているのは、現地の環境(フライハイトの実情)を知っているからだ。

 

 もし、「辺境のとある地方に移される」と聞かされた子供たちは、どう思うだろうか。

 

「色々な事情で親から離された子供が、大勢の騎士に囲まれて辺境まで連れられて、道中では『大丈夫、これから向かう場所はとても豊かな場所です』と言われ続けて、それを信じられると思う?」

「・・・・・信じる子供はいると思いますが」

「が?」

 

 もし仮に、俺の精神が子供のままでそんな環境に身を寄せていたら、一瞬でも「捨てられる」、あるいは「売られる」と脳裏をよぎることだろう。

 

「信じたいと願いつつ不安を拭えない子供が大半でしょう」

「だよなぁ」

 

 となると、自然とマイナス思考になっている子供が来ると考えた方が良い。

 いかに大人たちが真実を述べようと、どんどん辺鄙なところに移動しているという事実はぬぐえないのだ。

 

「歓迎会の準備と、安定した食事は必須。あとは衣食住を充実させて規則正しい生活、学園に通って知恵を付けて・・・・・どこらへんで子供たちの信頼を勝ち取れるかが重要になるよね」

「その通りです」

「イングリットは他に何か思いつくことはある?」

「・・・・・そうですね。可能でしたら、彼らが元の孤児院に仕送りできるように計らった方が良いかと思います」

「俺の方から援助した方が良いと?」

「いいえ、リベルタ様ではなく、将来働き金銭を稼げるようになった子供たちが、です」

 

 生活が安定すれば心にゆとりが生まれる。

 そうすれば、自然と心を開いてくれるとは思っているが、これはあくまで俺の考えだ。

 

 校長となるガトウや世話役のジンクさんに色々と確認はしているが、まだ見落としがあるのではと思ってしまう。

 FBOでは村づくりから街づくり、そして都市づくりと色々とプレイしているが、ガチの移民政策なんてやったことはないからな。

 

「子供たちの中には、孤児院で育ての親に世話になりながら、今も苦しい生活をしている孤児仲間を想像し、今の自分たちの生活に対して後ろめたさを感じる子が現れるでしょう」

「・・・・・確かに。真面目な子ほど自分さえ良ければいい、なんて思わないよな」

「はい。なので子供であっても、育ててもらった孤児院に恩返しができるよう、子供でもできる仕事を用意するべきです」

「できれば勉学に集中してほしいと思うんだけど・・・・・それは俺の押し付けか」

 

 イングリットの言葉は、俺の中で非常に納得のいく内容であったが、完全に見落としていた視点だった。

 

 効率的に育てることが彼らのためになると考えていたが、「恩義」というのは忘れてはいけない大切な感情だ。

 

「・・・・・授業で使うダンジョン産の魔石や薬草の買い取りを、子供たちからでもできるようにしよう。学園に冒険者ギルドのような受付を設置して、採集依頼を出す。そうすれば授業と並行して稼ぐことができるな。後は、神殿経由で孤児院に仕送りしてもらえるように交渉すればなんとかなるか?」

「はい。後ほど神殿の方と打ち合わせをする必要がありますが、先方からしてもこの提案は受け入れやすい内容だと思います」

 

 あからさまな贔屓ひいきは彼らのためにならないけれど、ただ学ぶだけでなく「稼げる環境」を用意することならできる。

 彼らも自分で稼ぎ、それを元手に色々とできるようになれば、自立も促せるだろう。

 

「うん、あまり時間はないが、そっちの方向で対処してみようか」

「はい」

 

 考えれば考えるほどやることが増える。

 そう思う反面、それがある意味一番楽しいとも思うのであった。

楽しんでいただけたのなら幸いです。


そして誤字の指摘ありがとうございます。


もしよろしければ、ブックマークと評価の方もよろしくお願いいたします。


コミックスがついに発売日決定!!

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