終話三:濁龍よ、永遠に消えるため、俺に振り回されろ!
朝日がまだ上がらない、うっすらとした空の明るさの中、濁龍と対峙するのはミスラスとミリア、そして俺の三人だけ。
ほかはみんな郷への被害を最小限に抑えようと住民総動員で防衛に就いている。黒装束討伐チームで体力に余裕のある者も防衛に回っている。
「世話になったな、ミスラス。最後の依頼、よろしくな」
「ぬかるなよ。ミリア、お前もな」
「大丈夫。準備万端!」
「始めるぞ」
濁龍はピクリともしない。
「「「大いなる力が籠りし、その力にふさわしき大きな万物に、我が下に収めんとする主となる術師ミスラスあり。その万物と主との契約せんとする旨のこの精霊をそに召喚し宿らせん。その力、精霊の下で御され、主の具となりし後その精霊は元へと召還され、その万物は万物と為す前の元へと帰すべし」」」
「「「 流 転 回 帰 ! 」」」
瞬間俺は光に包まれ、耳元で轟音が炸裂する。
初めてミリアのところに来た時と同じ光と音。
その光の中、見たことのない多くの人の姿が浮かんで消える。
何者だ?と思う間もなく、みんなが笑顔で俺を見る。握りこぶしを上げる者、両手を挙げる者。親指を立てる者。
そうか……濁龍に立ち向かって倒れていった者たちか。
その光が消える直前、男女2人の冒険者が目の前に現れる。ミリアの両親だな。両親ともおんなじ瞳をしている。あいつは、俺を助けてくれて、自分の苦しみを乗り越えて偉業を成し遂げたよ。いい娘持ったじゃねーか、あんたら。
二人の姿が消え、光も消える。
目が開いたときには遠くに見えるミスラスとミリアの二人。
ミリアは何か絶叫しているようだが何も聞こえてこない。なんだ、そっちにいるんじゃないか。一緒に行くとか言っといて、しょーがねーやつだ。まぁいいか。こっちにこなくていいぜ。みんなと仲良くやっていけ。あんなさみしい思いするのは俺一人で十分だし、お前の泣き顔も見飽きたし。
じゃあな。
そして俺はこの世界での永遠の闇に包まれ、恐らくは俺の体は消滅し、闇の中で俺の意識は消えた。
文字数1000に届いてません。このワンシーンだけ一話にしたかったので。
作者のわがままで吸いません。




