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別世界でも誰かに振り回されている件  作者: 網野ホウ
最終章 最期は俺たちに振り回されろ!
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終話その一:振り回された者たちが一つとなりて、振り回す強さを知れ

初出

カトゥール:元ダブルヘッドのメンバー。男罠師

 話は夜遅い時間に終わった。

 外ではチョッカーたちがすでに選別を終え、運搬作業も終わる直前だったようだ。


「先ほどは失礼しました。作業はもう終わりです。あとは製造、加工作業です。丁寧に、正確に、より上質に仕上げます」


「ご苦労様。皆さんもありがとうございます。あぁ、チョッカー、マッシュ殿にもお伝えください。それと無理なさらぬよう……」

「はい、ミスラスさん。伝えておきます。では失礼します!」


「この人数だから、割と期間はかかるかもしれねーな」

「だが私の作業もかかるかもしれん。作業がすべてほぼ同時に終わるのがベストだな」

「俺が言いだしっぺって感じでちょっと悪かったかなって思ってる。こんな時間までみんなに対応するのもしんどかったろ?」

「いえ、私の方からお話した方がみんな理解してもらいやすいと思ったからです。精霊殿からだと、みんな精霊殿に興味津々で、話は横道にずれること間違いないでしょうから。この作戦の一番重要な役割ですから、精霊殿も体調を整えていただかないと困りますので」


「いろいろ世話になったな。最後までよろしく頼む」

「はい、では私もさっそく作業にかかります」




「ミリア、俺たちも部屋に戻るか」

「そだね。わたしもとくにすることなくなっちゃったな」

「魔法杖、新調したほうがいいんじゃないか?」

「なんで?」

「何でって……俺がいなくなったら、使える道具はそれだけだろう? 魔法が使えないのは呪いのせいじゃないようだし」

「だってわたし、スタンに付いて行くんだよ?」


「……なんかさ……」

「何?」


「全部は思い出せないが、俺の世界はここより……ろくでもない世界っぽい」

「……そんなこと、思ってたよね。さっき……」


 知られちゃったか。ま、しょーがない。


「いい世界だよ、ここは。誇りに思え。両親がお前を生んだこと、お前が今日までこの世界で生きてたこと。どんな目に遭ってきたかはわからんが、嫌な事ばかりあったかもしれんが……その嫌な世界を、俺にとってはいい世界だと思えるくらいには変えることができたんだぜ?」


「うん、ありがと……」


「もう休め。作戦を実行に起こすまで、何があるかわからんからな」

「うん、おやすみ」



 翌朝。

 ミスラスが朝食の時間に俺の下に来た。


「まず先に、精霊殿に魔力を持たせる調合をしたいと思います。ご都合は?」

「わたしは問題ないです」

「じゃあ行くか」


「こんな早い時間に……ってまさか徹夜か?」

「もちろんです。とりあえず濁龍に掛ける術式は完成させました。あとは陣作りの範囲しだいですな」

「はえぇな」

「黒装束に相対するみなさんの支援術にも取り組もうかと思いましてね」


「頭下がるわ」

「お安い御用。気になさらず。私はエルフの血を受け継いでますが、人の生命力の強さも受け継いでいるようで、二つ三つくらいの徹夜はどうってことありませんよ」

 二、三日ってことね。


「ところで、俺の調合にはどれくらいかかる?」

「昼前には終わりますよ。いえ、終わらせませんと次の作業が実行までに間に合わないかもしれませんので。まぁどの作業も問題ありませんよ」




 ミスラスの言う通り、魔力発動実験も含めて昼前にすべて終了した。ミスラスの言う通り、本当に体の調子を整えるだけしか、やることは残されてなかった。


「もう全チームは個人の意志で動くようになったみたいですね」

「あぁ、さっちんは他のメンバーと一緒に黒装束たちの活動を警戒してる。ヒューラーたちがあの宝石とかを使って通信機器っぽいのを作ってみんなに持たせてたな。受信先は宿にでかいのを設置してた」


「まさしく地域一丸ですね。トウジもいい判断をしたものだ。若も……」


 ガタン!

「先生! 今日は何か用事あるっすか?あ、ミリアに……スタンっつったっけ?ご苦労さんっす」

「カトゥールか、ご苦労。今のところ特に用はないな。無駄足させてすまんな」

「いえ、じゃあ次は夕方伺うっす。じゃまた!」


「騒がしいな。誰?」

「ダブルヘッドにいたカトゥールって人。罠師っていう珍しい職種だよ」

「戦場で活躍することは少ないが、罠を仕掛けたり足止めさせたり。でも彼の場合は前線にも出るし、足が速いからこのように用聞きに来てくれる。助かるよ」

「そいえばまだ知らねーやつもいるんだよな。人材豊富だわ」

「全くだ。じゃ私は次の作業に入るからここで失礼するよ。見送りできなくて申し訳ないね」

「いえ、ミスラスも体調に気を付けてね」

「うん、じゃあまたね」


「活気づいてるな。何度かミスラスの工房に来たが、いつも人気がなかったもんな」

「スタンのおかげだよっ。ありがとねっ」


 俺のおかげ、か。だが俺が希望してここに来たわけじゃない。

 何とかしたいと願ったお前の結果だろ。お前、両親の功績越えるぜ。


「何俺にポンポンしてんだ、お前」

「えへへ」


 俺らだけのんびりしてるようで、ちょっと気まずいかなぁ。




───────────────────




 あれから三日ほどたつ。防具屋、武器屋はほぼ休みなく武具製作に没頭。全員の装備が一新された。

 機能、装備する本人の能力も増強される仕組みなんだと。

 道具、薬関係も味方の回復、敵へのダメージ、副作用の減少など、今までとは比べ物にならないほど改良されたらしい。


 ミスラスの指揮の元、濁龍付近での魔法陣作成の場所も決まり、作戦を実行するだけとなったようだ。



「長らく待たせた。黒装束、濁龍共に異変なしとの連絡を受けた。明日、朝一番で作戦に取り掛かる。黒装束の殲滅を夕刻まで。その後魔法陣を敷く場所の確保を夜を徹して行い、次の朝には濁龍への術をかける予定とする。イーティカル軍、作戦実行まで各自体調を整えるように。それと忘れ物しないように。以上!」


 最後の一言が、子供への心配みたいな感じで笑ってしまいそうだったが、トウジ、立派になったもんだ。



 いよいよ明日。俺らの出番はその次の日の朝。

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いつも見て頂きましてありがとうございます。
新作小説始めました。
勇者じゃないと言われて追放されたので、帰り方が見つかるまで異世界でスローライフすることにした
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