第十話:やっぱり俺は最後まで振り回されてる
ミスラスからの話は長時間にわたり、休憩時間や食事時間を挟みながら進められてた。
濁龍の呪いのこと。その被害者のミリアの願いのこと。そこからの俺の召還のこと。
そして濁龍の本質についての、俺の推測のこと。その策に要する準備やその期間のこと。
みんなからの興味津々な質問から雑談までミスラスにしては珍しく応じながら、順を追って丁寧に説明してた。
元の世界に戻れるまでもう少し。
ミスラスの話によれば、戻った先の時間は俺にとって安全と思われる時間帯だそうだ。そうでないと意味ねーよな。死ぬ直前の時間に戻ったって何の得もありゃしねぇ。
この世界にきて一週間もたったかな? なのに名残惜しいんだよな。仲がいい奴らが増えたから? なんか違う気がするな。気持ちの通じ合う仲間がいたから。まぁそれも悪くない。
そうか。
俺の話を聞いてくれて
俺の考えを受け止めてくれて
その通りに動いてくれて
それが悪くない結果に繋がったから。
過去のことをまだ思い出せない。けれど、そんな体験はなかったような気がする。
誰も俺の言うことに耳を傾けてくれないで
誰も俺の考えをまともに聞いてくれないで
俺の思うことと違うことをみんながやって
俺の思う通りに動く方がよかったと、みんなが後悔してばかり。
俺の思うことをその通りにやって
それを俺の主張じゃなくて、他の誰かの指示だったことにされて
そいつが称賛されてたような
そんな世界だったように思う。
なのに
ホントに戻りたいか? そんな世界に。
戻りたくないな。多分戻りたくない。
みんな俺のことを気にかけてくれて、俺のことを反発するときは、俺のことを心配してくれた上でのことだったり。
自分で動けない体は不便だけど、誰も俺のことをおもちゃと蔑んだりしなかったじゃないか。仲間だと思ってくれてたじゃないか。
おかしいよな。この世界でいつまでもいられるはずなのに、もうじきこの世界からいなくなるんだぜ?
でもさ、俺のことをいらねぇっつって消すんじゃねぇんだぞ?
道連れにするやつがいるんだぜ? しかもそいつ、みんなから嫌われてるんだぜ? 心の底から嫌われてるんだぜ?
俺じゃなくて、むしろそいつのことをいらねぇってみんな言ってんだ。俺を例えるなら、廃棄寸前のほうきと塵取り。最後の役目はでかいゴミを、俺が自ら先だって一緒に処分されるようなもんだ。俺のことをまともに受け止めてくれたあいつらのために、最後の最後まで役に立てるってのは、寂しいけれど気分いいよな、うん。気分がいい。
気分がいいけどさ。
けどやっぱり……。
笑っちまうわ。来た当時は、思いっきり腹立ててたけど、俺の気持ちがこうも変わるとはなぁ……。
「でも、戻らないとね。せっかく戻れるいいタイミングだしね。でもそっちでもわたし、一緒になれるよ。ミスラスも安心していいって言ってたよ。大丈夫だよ」
ミリアが俺の体に手を添えてくる。ミリアの声が心に響く。契約ってのはずいぶん便利なもんだ。
こいつ……ほふぇえええぇえええ?!?!?!
「消えちゃうなんてもったいないねぇ。あたしがもらってあげたいくらいだけどねぇ」
「あなたにも勿体ないほどの一品です! 姫と呼ばれる私こそが契約者としてふさわしいのがなぜわからないのです!」
いつの間にかペイラーとセイザーの引っ張り合いの中心になっちまってる! 空気読め馬鹿野郎ども!女同士だが野郎呼ばわりでも問題ないわ!
……ミリア……苦笑いしてないで俺を助けろや!!
ったく、気分も減ったくれもねぇっての!
ちょっとだけしんみり




