番外編:ある少女がそのときに見た、どこかの世界での出来事の夢
「お前も看病で疲れたろ。ちょっとぐれー休めよ。俺もこうやってみんなを見られるんだからさ」
そう言って、彼はわたしを休ませてくれた。眠る必要のない彼の言葉に甘え、しばらく安らぎの中に体を埋める。
いつからだったか覚えていない。時々見るあのころの夢。
目が覚めた時はすべて忘れる。眠りについたらすべて思い出す。
いつ頃のことか覚えていない。毎日同じことの繰り返し。
私に両親居ないから。私に家族がいないから。
お前の目玉が気持ち悪いから。ただそれだけで叩かれた。
一人で生きていけるよう 誰にも頼らず生きられるよう
聞けば両親から頼まれたって そう言いながらいろいろと 他の子どもと一緒の部屋で
あの人はいろいろ教えてくれた。わたしも必死にいろいろ学んだ。
だけど学びの時間が終われば、また同じことを繰り返される。
みんなが私の周りを囲って そのようなことを言いながら
泣いても誰も気に留めず 叫んでも誰も聞こうとせずに
何が悪いのかも教えてもらえず どこを治せばいいかも言わず
その言葉だけを繰り返す。
何をやっても止めてもらえず、やがてわたしは泣くのをやめた。
涙を流すことと泣くことは 決して同じではないことを、その体験を通じて学んだ。
もう何度目になるだろう。数えることすら諦めた。ある日どこかの公園で
遊戯道具から離れたところの 誰も見向きもしない古井戸。
そこでいつもと同じこと いつもの時間にいつも通りに
いつもと変わらず繰り返された。
けれどその日はいつもと違った。
突然周りの子供数人、わたしの囲いが崩れるように 誰かの力で倒された。
初めて見るその子はわたしより ほんのちょっとだけ大人に見えた。
けれどその子はわたしを見ずに わたしの目だけを見つめてた。
何の感情もない表情で、どこも見てないその表情で。
周りの子へと視線を映し それにあわせて逃げてく子供。
彼は再びわたしを見つめる。
言葉は何も出さなかったけど、何かの力がこもった瞳。
彼の振る舞いに応えなければ。ここで自分も立ち上がらなきゃ。
そんなきっかけを作ってくれた 彼に自然と言葉があふれる。
いろんな思いが渦を巻く。すべての思いを伝えたい。けれど出てきた言葉は一つ。
彼は受け止めてくれるだろうか。けれど出てきた言葉は一つ。
多分涙はまだ出てた。流れる涙はそのままに、うれしい気持ちも顔に出ながら
小さい声で「ありがとう」。
それでも彼はただひたすらに 私の瞳を見続ける。
やがて彼は何も言わず去り、わたしだけがその場に残る。
あれから何年たったんだっけ?願ってすがってようやく会えた、わたしにとって初めての友達。
その友達からの一言に、あのときのうれしさが湧き上がる。
ようやく彼からもらえた気がした。わたしの瞳を見たときの思い。
誇りに思う 父さんと 母さんからもらった優しい光。
そろそろ目覚めの時がくる。わたしはまたもこの夢を、忘れ去ってしまうだろう。
でもいつの日か夢から覚めても ずっと覚えていられるように
見るたび胸に刻み込む。悲しい思いが喜びに変わる、わたしの身に起きた一連の夢を─────。
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