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夕空の向こうで  作者: あさくらまひろ
坂上弘

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29/42

エピローグ

 時は流れて——。


 本土の大学へ進学した際に、弘と雪はこじんまりとしたアパートを借りてふたり暮らしを始め、大学卒業後すぐに結婚をした。

 弘は卒業後大手ゲーム会社に入社した後に、自身のゲーム会社を立ち上げた。社長になった弘はゲーム雑誌に愛妻家としてゲームの話より惚気話ばかり語り、それが記事として掲載されている。

 雪は弘のお弁当を4年間毎日作り続けた経験を活かして料理教室の先生になった。

 美人な先生に寄ってくる男性が多く、焦った弘が牽制するためにも急いでした結婚だったが、それでも雪は幸せいっぱいだった。


 そして元気な子供も授かり、以前の省エネはどこへやら、もっと弘は張り切るようになった。

 ふたりは様々な傷を抱え、困難を乗り越え、それでも手を放さずに進んできたふたりの歩みは、こんなにも温かく幸福な家庭へと辿り着いていたのだ。




♢



 赤音島ではない、どこかの街。


 空一面が燃えるような朱色に染まる、穏やかな夕暮れ時。


 小さな手と手が、ふたつの大きな手にしっかりと握られている。


「お父さん、今日ね、公園で大きな夕日を見たんだよ!」

「はは、そうか。今日も綺麗だなあ」

「ふふ、本当に。あの日……赤音島の夕空と、少し似ていますね」


 幼い我が子を真ん中に挟み、歩幅を合わせて歩く弘と雪。


 弘が横を向くと、愛おしそうに子供を見つめる雪の頬が、夕焼けの光に照らされてほんのり茜色に輝いていた。


「ねえ、お父さん、お母さん! お腹空いちゃった! 早く帰ろう?」

「はいはい。今日の晩ごはんは、お前の大好きなハンバーグだからね」

「わーい! やったぁ!」


 元気良く跳ねる子供の声に、ふたりは顔を見合わせて優しく微笑み合う。


 繋いだ手から伝わる確かな温もり。

 重なり合うふたつの影と、小さなひとつの影。


 特別なことがなくたっていい。

 ただの日常を慈しんでいけばいい。


 黄金色と茜色が溶け合う優しい光の中で、仲良く歩む家族の姿はどこまでもあたたかく包み込まれていった。




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