第10話
「このまま黙って引き下がるわけにはいかねえだろ」
弘が停学処分になってから数日。学校側が早々に幕を引き引こうとする中で、青葉隼人はクラスの男子数名を集めて行動を開始していた。
教師たちは泉たちの主張だけを真に受けて現場の検証すらまともにしていない。ならば自分たちの手で「坂上が暴走したわけではない」という証拠を探し出すしかない。
「倉庫の周りは学校の敷地内だから防犯カメラはねえよな。だが……その周辺のカメラにきっと何か映ってるはずだ」
隼人の指示のもと、男子たちは放課後手分けして学校周辺を歩き回った。
一軒一軒、個人の住宅や商店の軒先を見上げては、防犯カメラが設置されていないか探して回る。地道で、途方もない作業だった。
「青葉さん! ここの住宅、玄関脇に防犯カメラが付いてます!」
クラスの男子の一人が声を上げたのは、校舎の裏手に続く細い路地に面した民家の前だった。
隼人たちはすぐに家主の住民に事情を説明した。最初は難色を示されたものの、「学校で起きたトラブルで、友達の濡れ衣を晴らしたい」という隼人たちの真剣な訴えに押し切られ、監視カメラの録画映像を確認させてもらえることになった。
事件当日の放課後の時間帯。倍速で巻き戻されていくモノクロの映像。
「……あ、止めてください!」
隼人が思わず声を張り上げた。
モニターに映し出されていたのは、あの日、どこか遠くを見つめるように暗い表情で歩く神代雪の姿だった。
そしてその前後を囲むように歩いているのは、泉早紀たち三人組と、ガラの悪い不良男子たち。
雪の腕は逃げ出さないように掴まれ、あからさまに嫌がる様子を見せているにもかかわらず、半ば強引に校舎裏の倉庫がある方向へと連れ去られていく様子が鮮明に記録されていた。
「……見つけた」
隼人はモニターを見つめながら、固く拳を握りしめた。
「坂上が連れ込んだんじゃない。あいつらが神代さんを無理やり連れ去ったんだ」
『坂上弘が神代雪をナイフで脅して連れ込んだ』という学校側の主張を根底から覆す、決定的な瞬間がそこにはしっかりと刻まれていた。




