エピローグ
——年後。
リビングのソファの前では、小さな男の子と小さな女の子が、目を輝かせながら液晶画面にかじりついていた。
『さあ、第4クォーターも残り10秒! 現在スコアは97-98! このまま逃げ切るのか! はたまた逆転か! 残りワンプレイ――ここでボールが渡ったのは……青葉選手だーっ!』
実況の熱を帯びた声とともに、画面の中で背番号を背負った男性がしなやかに躍動する。
右膝の痛々しい傷痕を抱えながらも、一度は完全に砕け散ったはずの夢を再び掴み取り、プロのコートで華々しく活躍するエースの姿。
「パパ、がんばれー!」
「パパかっこいい! いけーっ!」
小さな二人の手が、画面に向かって一生懸命に振られる。
二人の健気な歓声を聞きながら、キッチンで夕飯の支度をしていた女性——青葉美羽は、おたまを置くと、愛のこもった優しい眼差しで子供たちとテレビ画面を見つめた。
『決まったーっ! 試合決定づける劇的なブザービーター!! 青葉隼人、今日も勝利の立役者です!!』
画面の中で仲間たちと抱き合い、弾けるような笑顔を見せる隼人。
その左手の薬指には、小さく眩しく光るリングがはめられていた。
「ふふ……やっぱり、私のパパは世界一かっこいいでしょ?」
美羽は優しく子供たちの頭を撫でながら、胸の奥を温かい愛おしさで満たしていく。
かつて、自分の足で歩くことすらできず、暗闇の中で泣いていた少年は、もういない。
その少年が再び立ち上がり、こうして大歓声の中で輝いている。
少年の傍らに寄り添い続けた少女の純粋な強い想いが成就したのだ。
彼らはこれからも共に歩んでいくだろう。
きっとどんな困難にも共に立ち向かっていくだろう。
きっと、いつまでも。いつまでも。




