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『神』のゲームの主人公~突如巻き込まれた異世界ゲームで、最高のエンディングを目指します~  作者: トランス☆ミル
第九章 覚醒者育成学院・天神聖書編

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第74話 炎の残滓

「い、いつからそこに……!?」


 声をかけられるまで全く気配がしなかったアンナに、俺たちは驚愕する。


「あなたたちが地下に行くのが気になってね。後をつけていたんだ」


 アンナはそう言うと、軽く笑った。


「それで、何をしているの? ただの探検にしては、動きが真剣すぎるわ」


 アンナが一歩近づいてくる。


 俺は一瞬、マヨたちと視線を交わした。言い逃れは難しい。すでにここまで見られている以上、中途半端な嘘は逆効果だ。


「……ちょっと、探し物をしていて……」


 俺が短く答えると、アンナの目が細められた。


「探し物? 学院の地下で?」


 アンナは少し考え込むように視線を泳がせ、やがて何かに気づいたように顔色を変え、ゆっくりと口を開いた。


「まさか……天神聖書?」


 その言葉に、俺たちの表情が一瞬で強張る。図星だった。


(ッ!? 天神聖書のことを知っている!? いや、でも魔神王の伝説自体は世界中にあるわけだから、知っていてもおかしくないか……)


 俺は一瞬焦るも、別に冒険者である俺たちが伝説の書物を探すこと自体なんら不思議なことはない。ましてや、世間一般的には俺たちは皇女御一行だ。


 むしろごまかしたほうが、後々面倒くさい。俺は、もう隠し通す必要はないと判断した。


「はい、そうです」


 俺が認めると、アンナの表情が一変した。


「まさか……あの最強最悪の魔神王を蘇らせる気!?」


 声に明らかな動揺が混じる。余裕の笑みは消え、鋭い視線が俺を捉えた。


「最強……最悪?」


 アンナの予想外の反応に、俺は困惑する。


 しかし、アンナは深く息を吐き、


「でもそうね。あなたたちはミルキーウェイ皇国の出身……信仰は人それぞれ、か。他国の教えを尊重しないのは、私の流儀ではないわ」


 と言って、ゆっくりと表情を戻した。


「……どうして、魔神王を『最強最悪』と呼んでるんですか?」


 それを聞いて、俺が素直に尋ねると、アンナは少し視線を逸らし静かに語り始める。


「私の国は、天神を至高の存在として崇めている。ただ、魔神王たちも天神が生み出した神として、一応は祀られているの」


 アンナはそこで一度言葉を切り、俺たちを見据えた。


「でも……私の国の土地は、竜の生息地と大きく被っているの。竜は他の魔物とは比較にならないほど強く、長年、竜の被害に苦しんできたのよ。


 竜の起源は、竜天神――つまり、あなたたちが崇める魔神王の1柱。さらに約5000年前、竜天神が自らを封印したことで、世界の均衡が崩れた。その結果、バグが発生したとも言われているわ。だから私の国では、竜天神は天神に背いた叛逆神であり、圧倒的な破壊をもたらす破壊神として忌み嫌われているの」


「竜天神が、バグを起こした……?」


 俺はアンナの話を聞いて、そう呟く。


 どうやら、アンナの国では竜天神=破壊と叛逆の象徴として語り継がれているようだ。


 俺たちが知る「創造の力で世界の法則を作った存在」とは、全く違う顔だ。


「あくまでただの伝説よ。そもそも、魔神王なんて存在が実在するかどうかすら、私たちの知るところではないわ。過激な思想を持っているわけじゃない。ただ、国としてそう伝えられてきただけ。あなたたちがそれを求めても、私は止めないわ」


 しかし、アンナはそう言って微笑むと、小さく息を吐き肩をすくめた。


 そして、


「それで、私もついて行っていいかしら? 天神聖書はうちの国では禁書扱いだかこそ、少し興味があるわ。学院地下に広がる未知のダンジョンってのも面白そうだしね」


 と、言ってきた。


 予想外の発言だったが、アンナの言葉には敵意や拒絶はなかった。むしろ、一定の理解と距離を置いた興味が感じられた。


(興味……か。天神聖書のことは知られている以上、神力さえ押さえればリスクは低いか)


 俺はそう考えると、


「別に問題ないですよ。むしろ、アンナさんがいてくれたほうが心強いです。みんなもいいよね?」


 と、笑顔で答えた。


「えぇ」


「いいですよ」


「アンナねぇも一緒に行こう!」


 そうして、俺たちのダンジョン攻略にアンナが加わることになるのだった。


 やがて、アンナを加えた5人で、地下に広がる大迷宮を進み始める。


 通路は古びた石造りで、壁にはところどころ古代の紋様が刻まれており、淡い神力灯が空間を照らしていた。


「……で、あなたたちはどうして天神聖書を集めているの?」


 しばらく無言で歩いていると、アンナが突然興味深そうに尋ねてきた。


「……この書物集めは、僕たちが旅をしている理由の一つなんです。我が国に伝わる魔神王についての書物……詳しいことはお伝えできませんが、そんなところです」


 俺はできるだけ自然に答える。


 すると、アンナは不意に微笑むと、さらに質問をしてきた。


「理由の一つ……ね。答えられなかったらいいんだけど、他にどんな目的で旅しているの? 大帝国の皇女一行が世界を旅するなんて、勇者物語みたいで興味があるわ」


 それを聞いて、俺は少し考えた後、ゆっくりと語り始める。


「……僕たちは、この世界の謎を解き明かしたいんです。それこそ、先程言っていたバグの正体とか、バグと魔神王の関係、過去、真実。天神聖書はその鍵になると思っています」


「それに、私個人としては、自分探しの旅も兼ねていますね」


 俺に続いて、マヨもそう口にする。


 それを聞いて、アンナは少し意外そうな顔をした。


「バグの正体、か……世界のシステム異常の正体を追求するなんて、随分野心的ね。でも、悪くない動機だわ」


 アンナはそこで一度言葉を切り、続けて尋ねてきた。


「それにしても、あなたたちのパーティは面白い組み合わせね。皇女に獣人にエルフ……どうやって結成されたの?」


「元々はマヨと2人で旅を始めて、途中でミリアとカタルシアが加わりました」


「テンにぃが助けてくれたんだよ! だから一緒にいるの!」


「私も、テンコさんに助けられて……今では大切な仲間です」


 俺の言葉に、ミリアとカタルシアもそれぞれ短く付け加えた。


「……なるほど。主従というより、完全に仲良し冒険者パーティって感じね。テンコは皇女様のこと呼び捨てにしているし、面白い」


 アンナの言葉に、俺はビクッとする。


 だが、アンナはそれ以上深くは追及してこなかった。





 その後、ダンジョン探索は順調に進んだ。


 魔物の気配はほとんどなく、たまに現れる火属性の精霊やゴーレムも、俺たちの前では苦にならない。


 アンナの動きは相変わらず静かで、気配をほとんど感じさせない。


 そんなこんなで、やがて通路の先に大きな両開きの扉が現れた。


 扉の表面には炎を象った巨大な紋様が刻まれ、周囲の空気が明らかに熱を帯びている。


「……ここがボス部屋みたいね」


 アンナが静かに剣を抜く。


「気を引き締めよう。前回のボスより強い可能性が高い」


 俺が警告を発すると、みんなも戦闘態勢を取った。


 俺は扉を押し開ける。


 中は広大な円形の空間だった。天井は高く、全体的に空間が赤みを帯びている。中央には揺れ動く炎の塊。


 そして、俺たちが足を踏み入れた瞬間――


 ――ゴォォォォ……!!


 炎が大きく膨れ上がり、巨大な影が姿を現した。


 体長は優に15メートルを超え、全身を真っ赤な鱗で覆ったドラゴン。


 口からは熱い息を吐き、赤い目で俺たちを睨みつけている。


 解析を使うまでもなく、バケモノだと一目でわかった。


「レッドドラゴン……この感じだと、レベル55の成獣ね」


 アンナが静かに口を開く。


 それを聞いて、俺は思わず息を呑んだ。


 レベルは上がるにつれ、指数的に強さが跳ね上がる。正直、俺たちだけで勝てるか怪しい


「やるわよ」


 マヨが魔剣を構える。ミリアとカタルシアも即座に準備に入った。


 しかし――


「少し、どいてもらえる?」


 アンナが静かに前に出る。


 次の瞬間、アンナの姿が視界から消えた。


 ――シュインッ!!


 音すら遅れて聞こえる一太刀。


 気づいた時には、レッドドラゴンの首が根元から切り落とされていた。


 巨大な体が地面に崩れ落ち、炎が急速に消えていく。


「……は?」


 俺は思わず声を漏らした。


(何が起こった? レベル55のボスを、一太刀で屠った? いやいやいや、どう考えてもレベル30台の強さじゃないだろ……)


 明らかに強すぎる。レベルの話だけで言えば、アンナはラッツ――つまり、魔王国の第一王子を瞬殺できるだけの力があるということになる。


 俺は異常を感じつつも、とりあえず感謝を述べた。


「た、助かったよ。ありがとう、アンナさん」


「どういたしまして。住んでいる国が国だから、ドラゴンとは何度か戦ったことがあるの」


 アンナはそう言うと、剣を収めた。


 それから俺たちは、ボスが消滅した奥の通路へ向かう。


 その先には小さな部屋があり、中には簡素な祭壇と、その上に置かれた一つの宝箱があった。


 俺は火神の鍵を取り出し、鍵穴に差し込む。


 ――カチリ


 宝箱の蓋が開く。


 中には、赤黒く光る鉱石のようなものが入っている。


「これが……炎の残滓か」


 俺は炎の残滓を手に取ると、そう呟いた。


「なるほど。これがウワサのレジェンドアイテムか」


 アンナも興味深そうに覗き込む。


 どうやら、炎の残滓のウワサも知っていたようだ。


「それじゃあ、いよいよ残りは天神聖書ね」


 マヨはそう言って踵を返す。


 俺たちは長い道のりを経て、ようやく天神聖書獲得に王手をかけるのだった。


少しでも、


「面白い!」「展開が気になる!」


と思ったら、ぜひ☆☆☆☆☆評価、感想で応援お願いします。


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〈主な登場人物〉


テンコ:神のゲームの主人公に選ばれた、普通の高校生。性格は厨二病で、抜けてるところもあるが、意外と頭はいい。


マヨ:大魔ミルキーウェイ神皇国の第一皇女。性格は真面目だが、皇女として過ごしてきた反動で素が出る場面もある。意外と間が抜けている。


ミリア:獣人の少女。とても活発で食いしん坊。強い。


カタルシア:紫髪のエルフの少女。人間で言う14歳くらいの見た目。とても誠実で真面目。


アンナ:学院最強と謳われる、3回生首席の聖人族。剣神という以下にも強そうなスキルを持っている。容姿端麗。

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