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『神』のゲームの主人公~突如巻き込まれた異世界ゲームで、最高のエンディングを目指します~  作者: トランス☆ミル
第九章 覚醒者育成学院・天神聖書編

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第73話 灯台もと暗し

 未知の空間に飛ばされた俺たち。その目の前で揺らめく炎の人影が、やがて静かに口を開いた。


「お久しぶりです、我が主よ」


 その声は、熱を帯びているのに、不思議と穏やかでどこか懐かしい響きがある。


「我が……主?」


 俺が聞き返すと、炎の輪郭がわずかに揺れた。


「やはり、何も覚えていないなですね」


 炎の人影は、少しだけ寂しげに続ける。


「オレは七位星将第六席『ベテルギウス』でございます」


「ベテルギウス……!?」


 その言葉に、俺は思わず息を呑んだ。


 隣では、マヨとカタルシアも目を見開き、ミリアは思わず一歩後ずさっている。


 やがて、ベテルギウスは静かに語り始めた。


「かつての陛下――すなわち、貴方様が天神聖書と共にオレたち七位星将を封印してから約5000年。貴方様は、封印の際にこう仰いました。『次に会う時、我の記憶はなく、貴様たちのことも覚えていないだろう』と……その言葉通りでしたね」


「ちょ、ちょっと待ってくれ」


 ベテルギウスが語る中、その内容に混乱した俺は、食い気味に口を開いた。


「天神聖書と一緒に、お前たちを封印した……?」


「そうです。ですが、天神聖書に何が書かれているのかは、オレたち七位星将ですら知りません。それどころか、オレたちの記憶も断片的かつ曖昧で、以前オレたちは何をしていたのか、なぜ陛下御自ら封印なされたのかなど、現時点ではお答えすることができません」


 ベテルギウスの炎が、わずかに揺らめく。


「しかし、貴方様がこの世に再臨されたということは、なんらかの意味があるはずです。そして……この世に蘇るのはオレたちも同様。現在お持ちの『地の書』の封印は、既に解かれています。近いうちに、七位星将第五席『アークトゥルス』がこの世界に蘇るでしょう」


「アークトゥルス……」


 その言葉を聞いて、俺は拳を握りしめた。


「やっぱり、天神聖書と七位星将には関わりがあるのか。しかも、それが七位星将の封印になっていると……」


 情報が一気に流れ込んでくる。天神聖書と星将の関係、封印、そして次に蘇る存在。


 だが、今一番知りたいことは別だった。


「……ベテルギウス。一つ聞いてもいいか」


「何なりと」


「『炎の残滓』は、どこにある?」


 炎の人影が、ゆっくりとこちらを向いた。


「それは、貴方様がいつも行っている遺跡にあります」


「……いつも行っている遺跡?」


 俺は一瞬、言葉の意味を噛み締め、ハッと顔を上げた。


「もしかして……覚醒者育成学院の地下!?」


 俺がそう言うと、ベテルギウスは肯定するように炎を揺らした。


(灯台下暗しだった……! 学院の地下に広がるのは天神聖書の封印されているダンジョン。アイテムと聖書が同じダンジョンにある可能性を、なぜ考えなかったんだ!)


 予想外の言葉に、俺がそんなことを考えていると、


「確かに遠回りだったけど、私たちがやってきたことは決して無駄じゃなかったわ。鍵がないと、テンコでも絶対に手に入れられないかもしれないし、私たちは成長して以前より強くなった。七位星将とも話せて、あなたの過去にも大きく近づいたわ」


 と、マヨが語りかけてきた。


 俺はマヨに視線を向ける。マヨは遠くを見ながら話を続ける。


「確かに、そのことに気づけていたら、早く、簡単にゲットできていたかもね。だけど――」


 そこまで言うと、マヨは俺の方を向いた。


 そして――


「冒険は、苦労があったほうが楽しいんでしょ?」


 マヨは笑顔でそう言った。


 マヨと出会ったばかりのとき、俺がマヨに言った言葉。


 その言葉を聞いて、俺はハッとした。


(そうだ。俺の根本的な目的は、刺激的な日常を送ること……)


 俺はこの世界の主人公になって、魔神王になった。多くの謎を抱え、多くの事を背負った。


 でも、そんなに深く考える必要なんてなかった。


(これは、俺の人生《ものがたり》なんだ。ゲームマスターのものじゃない)


「……ハハハ。これは一本取られたな。ありがとう、マヨ」


 俺はそう言って笑うと、ベテルギウスに視線を戻した。


「ベテルギウスも教えてくれてありがとう。記憶を取り戻すのはまだ先になりそうだけど、お前たちが蘇るのを楽しみにしてるよ」


「こちらこそ、完全体で貴方様に会えるのを楽しみにしております。見たところ、事態は深刻そうではないようなので」


 ベテルギウスはそう言い終えると、炎の輪郭が徐々に淡くなり始める。


「……そろそろ、時間のようです。皆様、どうかお気をつけて」


「あぁ。また会おう」


 俺がそう返すと、炎の人影は静かにうなずくように揺らめき、次の瞬間、周囲がまぶしい光に包まれた。


 視界が白く弾け、耳鳴りのようなノイズが遠くで響く。


 そして――


「……ん」


 俺はゆっくりとまぶたを開けた。


 目の前に広がっていたのは、木々が生い茂る山の風景。柔らかな日差しと、風に揺れる葉の音。


「……戻ってきた、か」


 俺が周囲を見回すと、


「……ここ、赫光霊山《かっこうれいざん》ね」


 と、マヨが上体を起こしながら言った。


「びっくりしたー。さっきの人がテンにぃの側近?」


「みんな、無事そうでよかったです」


 ミリアとカタルシアもそれぞれ体を起こし、戸惑いながらも安堵の表情を浮かべる。


 俺は空を見上げ、小さく息を吐いた。


(アレが七位星将……確かに、初めて会った気はしなかったな)


 ベテルギウスから得た情報を、胸の内で反芻する。


「よし……次は、学院の地下だな」


 俺がそう呟くと、マヨが隣で静かにうなずいた。


「ええ。今度こそ、炎の残滓をゲットしましょ」


 そうして、俺たちは赫光霊山を後にし、寮へと戻るのだった。




 翌日の放課後。授業が終わり、生徒たちがそれぞれの部活動や帰宅準備で廊下を行き交う中、俺たちは人目を盗むように地下へ向かっていた。


 別に地下は立ち入り禁止な訳ではないが、何か聞かれても面倒なためひっそりと向かう。


「禁書庫……最奥部が地下3階にあることを考えると、炎の残滓は地下2階、もしくは地下3階の別のところにある可能性が高いわね」


 地下へと続く階段を降りながら、マヨが小声で呟く。


「確かにそうだな。でも、時間はあるし、地下1階からしっかり探していこう」


 俺はそう答えながら、薄暗い階段を慎重に降りていく。


 学院の地下は、普段生徒が立ち入らないエリアが多い。魔力灯もまばらで、空気はひんやりとしていた。


 やがて、地下1階に着くと、さっそく調査を始める。


「う〜ん……1階からは特別な気配は感じませんね。長年学院として使われてきたからか、ダンジョン特有の神力の気配もほとんど感じません」


 カタルシアが壁に手を当てながら、アイテムの気配を探る。


 だが、地下1階にアイテムがありそうな部屋も隠し通路もなかった。


 続いて地下2階を探索するも、そこにもない。


「やっぱり、地下3階か」


 俺たちは地下3階へ向かう。


 そして、書庫とは別方向を探していると、


「……あっ! ここから強い気配を感じます!」


 と、カタルシアが壁に手を当てながら言った。


「ちょっと見せてくれ。アース神殿の時みたいに、俺にしか解放できないエリアがあるのかも」


 俺はそう言うと、壁におもむろに手を当てる。


 すると、


 ――ヴィ〜ン!


 と、複雑な天聖陣が展開され、やがて壁が消え通路が現れた。


 学院のような整備された石造りの通路ではなく、古びた遺跡の壁面。


「当たりだったな」


「……ここから先は、明らかに学院の建造物じゃないですね。神力の流れが、書庫方面とは少し違います」


「よし、このまま――」


 そうして、俺が先を促そうとした――その時だった。


「……そんなところで何をしてるんだい」


 突如、背後から涼やかな声が響いた。


 俺たちは驚いて振り返る。


 そこには、長い金髪を後ろでまとめ、余裕の笑みを浮かべた人物が立っていた。


 ――アンナ・ソーディア。


「随分と、物好きな放課後を過ごしているみたいね」


 アンナは腕を組み、興味深そうに俺たちを見ていた。


「どうして、学院の地下を探索しているのかしら?」


 その鋭い視線に、俺たちは一瞬、言葉を失った。


 予期せぬ遭遇。炎の残滓を巡る探索は、思わぬ形で波乱の幕を開けることになった。


少しでも、


「面白い!」「展開が気になる!」


と思ったら、ぜひ☆☆☆☆☆評価、感想で応援お願いします。


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〈主な登場人物〉


テンコ:神のゲームの主人公に選ばれた、普通の高校生。性格は厨二病で、抜けてるところもあるが、意外と頭はいい。


マヨ:大魔ミルキーウェイ神皇国の第一皇女。性格は真面目だが、皇女として過ごしてきた反動で素が出る場面もある。意外と間が抜けている。


ミリア:獣人の少女。とても活発で食いしん坊。強い。


カタルシア:紫髪のエルフの少女。人間で言う14歳くらいの見た目。とても誠実で真面目。

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