第51話 オリエンテーション
入学式から2日後。今日から本格的な学園生活が始まる。
校舎の廊下で「またね」と3人と分かれると、俺は1人で天星級の教室へ向かった。
やがて、俺は2階にある1回生天星級の教室に足を踏み入れる。
広々とした教室は、予想以上に豪華で落ち着いた雰囲気だ。席はランダムらしく、俺は窓際の一番後ろの席に座ることになった。
(窓際か……ボッチ席だけど、結局ここが一番落ち着くんだよなぁ)
俺が席に座って軽く周囲を見回していると、突然3人の男子生徒が近づいてきた。
一番目立つのは、体格の大きな筋肉質の男。身長は俺より高い185cm程度だろう。
「おお! お前、昨日の模擬戦であのアンナさんと戦っていた、後期の三席だろ? 名前は確かテンコだったか? すげぇじゃねぇか!」
彼は勢いよく俺の席に寄ってきて、豪快に手を差し出してきた。
「俺はライオス・ヴァルガス! 前期選抜の首席やってるぜ! よろしくな!!」
握手を求められ、勢いのままに肩をバンバン叩かれる。俺は思わず苦笑いを浮かべた。
(うわぁ、陽キャだ……変な熱血バカに絡まれた……完全に俺を獲物認定してるな)
他の2人も続いて自己紹介をしてくる。
「俺はアルト。風魔法を使う魔法使いだ。よろしく!」
「僕はカイス。スキルは模倣といって、相手の動きや能力を再現する能力だ。よろしくね!」
中肉中背の爽やかそうな魔法使いの男と、眼鏡をかけた冷静そうな分析タイプの男。どちらも強者の雰囲気を放っている。
「昨日のお前、なかなかいい動きだったぜ! アンナさんの剣をあそこまで凌ぐなんて、半端ない反応速度だったよ。どういう訓練してんだ?」
ライオスがさらに熱く語り続ける。
「そ、そんな大したことしてないよ……」
「謙遜すんなよ! お前、絶対に強いだろ! これから一緒に頑張ろうぜ!」
俺は、内心では(このノリ、ちょっと面倒くさいな……)と思いながらも、
(でも……友達ができたのは、素直に嬉しいかもな。元世界では1人がかっこいいと思って友達を作らなかったけど、マヨたちと冒険して誰かと一緒にいることの楽しさを学べたのかもな)
と、小さく微笑んでいた。
それからしばらくすると、厳めしい中年男性の担任教師が入室してきた。魔導士の『ネス・イルディー』先生だ。
「全員着席。今日はオリエンテーションだ。学院のルールから、天星級のカリキュラム、そして本日のメインである正確な天賦力測定まであるから、しっかり聞け」
教師の声が響き、教室が一気に静まり返った。
続けて、教師はまず学院生活の基本ルールについて説明を始めた。寮の門限、授業の出席義務、部活動の推奨、闘技場使用時の注意事項など、意外と現実的な内容が続く。
前期入学組であるライオスたちは慣れた様子でうなずいているが、後期入学の俺は一つ一つ頭に叩き込んだ。
次に天星級特有のカリキュラム案内。普通のクラスより戦闘実習の割合が高く、個人指導や特別講義も多いらしい。
3限目が始まった頃。俺たちは別の教室へ移動し、そこに立って並んだ。
普通の教室とは少し違う、神聖な雰囲気のある空間だ。
「さて、次だ」
教師が大型の水晶を教室前方に設置しながら言った。
「今から、ここで正確な天賦力を測定する。順番に前へ」
(アレはマヨが言っていた解析鑑定の魔水晶……やっと来たか。異世界学園モノのメインと言っても過言ではない能力測定!)
俺は待ってましたと、心の中で興奮する。
そして、
「前期組も一緒にやるんだな」
と、隣に並んでいたライオスに話しかけた。
すると、ライオスのさらに隣にいたアルトが説明を始めた。
「魔水晶は貴重な上、色々と制約があるから一気に行うんだよ」
それにライオスも続く。
「そうだ。この魔水晶貴重だからくれぐれもぶっ壊すなよ。というのもウワサ話なんだが、去年、ノース校でこの貴重な魔水晶を破壊したヤツがいたらしいぞ。魔力量が多すぎて」
「あぁ知ってる! 魔王の生まれ変わりとか言われてるヤツでしょ」
カイスもその話に入ってきた。
「魔力量が多すぎて破壊って……そんなファンタジーなヤツ現実にいるんだ……」
俺はその話を聞いて、ハハハっと苦笑いする。
そんな話をしていると、生徒たちは次々に測定を終えていき、ライオスの番になった。
「次、ライオスくん」
「はい!」
名前を呼ばれ、ライオスは前に出る。
「見てろよお前ら!」
ライオスは豪快に笑いながら測定器に手を当て、堂々とした数値を叩き出した。
【MP:6500】
教室内から感嘆の声が漏れる。さすが前期首席といったところだ。
(魔力量6500……今のカタルシアが4000くらいだから、かなり多いなぁ。てかコイツ魔法使いだったんかい!)
そんな風に順番を待ち、ついに俺の番が来た。
「ぶっ壊すなよ」
やじを飛ばすライオス。
「ハハッ、大丈夫だって」
(ふぅ、本来ならまずい状況だが、対策済みだ)
俺は一息つくと水晶へと向かった。
(この魔水晶は天賦力の上限値ではなく、今現在の保有量が表示される。つまり、事前に魔力を使いまくって保有魔力量が減りまくっている俺が目立つことはないのだよ)
教室中の視線が集まる中、俺は心の中で笑いながらゆっくりと測定器の前に立った。事前に調整した魔力なら問題ないはず——だったのに。
水晶が淡く輝き、数値が表示される。
【MP:10173】
予想外。元の12万よりは断然マシだが、一般生徒より明らかに多い数値だった。しかも中途半端。
周囲がざわつく。教師の目がわずかに細められた。
(え? あっ、まずい! 魔力の自然回復を考慮してなかった! てか短時間でこんな回復するもんなのか? 5000近く回復してるぞ……)
「ほう……入学試験の予想数値よりも高いな。どういうことだ?」
疑いの視線が痛い。俺は落ち着いた声で即答した。
「魔人と人間のハーフ、つまり半魔人だからです。生まれつきの体質で、魔力が人より多いんですよ。数値が中途半端なのは、登校時に緊張から転んでしまって、回復魔法をつかったからですかね……」
自然な説明に、教師は数秒間俺をじっと見た後、ゆっくりとうなずいた。
「……なるほど、半魔人か。珍しいが、学院にも何人かいる。問題ないな。次の者」
周囲のざわめきが収まり、俺は内心で安堵の息を漏らした。
(ふう……危なかった。流石アドリブが得意な俺だ)
測定が全て終わると、教室へ戻り、教師は最後に軽く締めくくった。
「今日のところは以上だ。明日から本格的な授業が始まる。各自、油断なく準備をしておけ」
教室が解散の雰囲気に包まれると、すぐにライオスが俺の席に寄ってきた。
「テンコ! お前、魔人だったのか! 通りで、人間にしては変な雰囲気だと思ったぜ!」
(げっ、コイツ鋭い……まぁ、魔人というか魔神というか……人間ではないのは本当だがな)
アルトとカイスも笑いながら同意する。
「確か、テンコくんの出身はミルキーウェイ帝国でしたよね。帝国にはアンドロメダ魔王国もありますし、納得です!」
「いろんな人種がいることは、平和の証だよな!」
俺は苦笑いを浮かべながらも、
(この陽キャ熱血ノリは正直面倒くさいけど……これで学園生活は安泰だな)
と、心の中で小さく微笑んだ。
入学式からわずか2日。学院生活は、予想以上に賑やかになりそうだった。
その日の夕方。俺は隣の部屋——マヨたちの部屋を訪れていた。
中ではミリアがベッドに寝転がって本を読んでいて、カタルシアが紅茶を淹れていた。
「入学初日ははどうだった?」
俺がソファに座っていると、マヨがそう尋ねてきた。
俺はため息をついて、
「いや~、騒がしい1日だったよ」
と、言いながら話を始めた。
「後期の三席になってしまったもんだから、すぐに3人組の男子に絡まれてさ」
マヨが隣に座りながら、興味深そうに聞いてくる。
「絡まれた? 喧嘩?」
「いやいや、良い奴らだったさ。一番目立つのがライオスっていう前期首席の熱血バカ。体格デカくて声もデカくて、肩をバンバン叩かれながら『友達になろうぜ!』って勢いだったよ。他の2人はアルトって風魔法の爽やか系と、カイスって眼鏡の冷静系」
ミリアが本から顔を上げて目を輝かせた。
「へえ〜! 楽しそうだね!」
「で、お前たちはどうなの。メインはそっちだろ?」
俺が質問すると、カタルシアが紅茶のカップを俺の前に置きながら、静かに微笑んだ。
「私たちのクラスも、なかなか個性的な人たちが多かったですよ。鬼人族にハーフエルフ、獣人、妖魔種の天妖族なんて珍しい種族までいました!」
「へぇ、初めて聞く種族だな」
「ミリアみたいな元気な魔人族の女の子もいたわね……」
マヨが小さくため息をつきながら、軽く肩をすくめた。
カタルシアが優しく笑いながら言う。
「新しい刺激も、慣れれば楽しいものですよ!」
ミリアがすぐに反応する。
「今度そのライオスって人に会わせてよ! どんな人か気になる〜」
俺は紅茶を一口飲んで、軽く笑った。
「まあ、機会があったらな。なんか、学園生活、思ったよりすぐに賑やかになってきたよ」
新しい生活。隣の部屋にいつもの仲間がいる安心感と、新しい顔ぶれの賑やかさ。俺の学園生活には、既に色がつき始めていた。
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〈主な登場人物〉
テンコ:神のゲームの主人公に選ばれた、普通の高校生。性格は厨二病で、抜けてるところもあるが、意外と頭はいい。
マヨ:大魔ミルキーウェイ神皇国の第一皇女。性格は真面目だが、皇女として過ごしてきた反動で素が出る場面もある。意外と間が抜けている。
ミリア:獣人の少女。とても活発で食いしん坊。強い。
カタルシア:紫髪のエルフの少女。人間で言う14歳くらいの見た目。とても誠実で真面目。
ライオス:テンコのクラスメイトで、前期選抜首席の実力者。暑苦しいが、見た目に反して魔法使い。
アルト:テンコのクラスメイトで、ライオスの友達。風魔法使いらしい。
カイス:テンコのクラスメイトで、ライオスの友達。スキルの模倣は加護。




