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『神』のゲームの主人公~突如巻き込まれた異世界ゲームで、最高のエンディングを目指します~  作者: トランス☆ミル
第五章 宗教国家と天神信仰編

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第43話 祝福のダンジョン

 昼。俺たちは道中で昼食を取りつつ、目的のダンジョンへ向かっていた。


 エンカの街を抜け、ゆるやかな丘を越えると、景色は次第に自然の色を強めていく。


 石畳は土の道へと変わり、両脇には背の高い草と、淡く光る花々が揺れていた。


 どこからか流れてくる風は、ほんのりと甘い香りを含んでいて、街中とはまた違う穏やかさがあった。


「ん〜、やっぱり外で食べるとおいしいね!」


 ミリアが口いっぱいに頬張りながら、満足そうに尻尾を揺らす。手には、さっき屋台で買った串焼きと団子。どう見ても食べ過ぎだ。


「お前、さっきも食べてただろ……」


 いつものやり取りに、マヨが小さくため息をつく。


「まったく……泉で"ご飯いっぱい食べたい"なんて願った直後にこれなんだから」


「いいじゃない、叶ってるってことよ!」


「……都合のいい解釈ね」


 そんな軽口を交わしながらも、どこかみんな楽しそうだった。


 カタルシアは、隣で静かに周囲の風景を観察している。


「この辺りは、霊力の流れが非常に穏やかですね……ですが、奥に進むほど濃くなっているように感じます」


「えぇ、その通りです」


 カタルシアの指摘にセレナが穏やかにうなずいた。


「これから向かうダンジョンは、エンカの外縁に位置する、古代の霊域の一つです」


「霊域……ってことは、フィールド系ダンジョンですか?」


 俺が尋ねると、ルナが優しく補足する。


「はい。長い年月をかけて霊力が集まり、形作られた場所なんです。特にマナの流れが濃くて、アインの大霊樹と同じくらい、霊力で満たされています」


 セレナの一言に、俺は思わず目を瞬かせた。


「大霊樹と……同じくらい?」


 あの場所を思い出す。身体の奥まで染み込んでくるような、あの圧倒的な霊力。


 それと同等の場所が、こんな近くにあるのか。


「もちろん規模は違いますが、質としては近いものがあります。ですので、内部には霊獣が多く生息しています」


「霊獣かぁ〜! 楽しみ!」


 ミリアがぴょんと立ち上がる。


「戦う気満々ね……」


 マヨが呆れながらも、どこか楽しげに笑った。


「でも、初心者向けって言ってたし、そこまで危なくはないんだよな?」


 俺が確認すると、セレナは微笑む。


「えぇ。命に関わるような危険はほとんどありません。ですから、軽い運動にはちょうどいいかと」


「よし、じゃあ久しぶりにしっかり体動かすか!」


 俺が軽く拳を握ると、ミリアも元気よく応じる。


「おーっ!」


 そんなやり取りをしながら、俺たちは歩き続けた。




 しばらく歩いていると、道は次第に細くなり、木々の密度が増していく。


 光を受けていた草原はいつの間にか背後に消え、周囲は静かな森に包まれていった。


 葉の隙間から差し込む光は淡く、空気は少しひんやりとしている。


 足元には薄く霧がかかり、踏みしめるたびに、ふわりと光の粒子が舞い上がった。


「……なんか、雰囲気変わってきたな」


 俺がそう呟くと、カタルシアが小さくうなずく。


「霊力の密度が上がっています。ここから先が、ダンジョンの影響圏内でしょう」


 セレナが前方を指差した。


「えぇ……あれをご覧ください」


 視線の先、木々の奥にぽっかりと不自然に開いた空間が見えた。


 周囲の森とは明らかに違う、霧と光に包まれた領域。


 まるで、世界がそこだけ切り取られているかのような違和感。


「……あそこが?」


「はい。『出会いの森のダンジョン』の入口です」


 ルナが静かに告げる。その言葉を聞いた瞬間、胸の奥で何かがわずかにざわめいた。


 期待か、不安か、それとも別の何かか。


 俺はその感覚を振り払うように、一歩前へ踏み出す。


「よし……行こうか」


 こうして俺たちは、祝福のダンジョンへと足を踏み入れた。


 ダンジョンの境界を越えた瞬間、空気が変わった。


 ひんやりとしているはずなのに、不思議と冷たさは感じない。むしろ、体の内側をじんわりと温められているような感覚があった。


「……あったかい」

 

「霊力の影響ですね。ここは外よりも巡りが活発なんです」


 ルナが静かに説明する。


 見上げると、木々の葉が淡く発光しているのがわかる。枝の間には光の粒子が漂い、まるで空気そのものが呼吸しているようだった。


「なんか……森っていうより、別の空間って感じだな」


 俺がそう呟くと、セレナが小さく微笑む。


「霊域は、現実と少しだけ位相がずれていると言われています。ですから、こうして"世界の内側に入り込む"ような感覚になるのです」


「位相が……なるほどな……」


 足元の土は柔らかく、踏むたびに淡い光がにじむ。音もどこか吸い込まれるようで、静寂がより深く感じられた。


 その時だった。サラリ、と草が揺れる音がした。


「……何か来ます」


 カタルシアの声が小さく響く。


 次の瞬間、茂みの奥から数体の影が飛び出してきた。


「うわっ、キツネ!」


 それは、淡い光を纏った小型の霊獣だった。狐のような姿をしているが、身体は半透明で、尾の先が粒子のようにほどけている。

 

「かわいいけど……来るよ!」


 ミリアが一歩踏み出す。


「任せて!」


 ――シュッ!


 瞬間、ミリアの姿が消える。


 次の瞬間には霊獣の背後に回り込み、鋭い一撃を叩き込んでいた。


 光の狐は弾かれるように吹き飛び、そのまま粒子となって霧の中に溶けていく。


「おぉ、いい動きだな」


「へへっ!」


 だが、それで終わりではなかった。


 残りの霊獣たちが一斉に飛びかかってくる。数は10匹ほどだ。


「数が多いわね……テンコ!」


「了解!」〔ライトニングソード〕


 俺は雷剣を生成し、一気に踏み込む。


 ――バチッ!


 一閃。雷の軌跡が空間を走り、霊獣をまとめて薙ぎ払う。


 だが、斬った感触は妙に軽い。まるで実体が曖昧なものを切ったような、不思議な手応えだった。


「……やっぱり魔物とは違うな」


「霊獣は"存在"が霊力寄りですから。物理と霊の中間、といったところですね」


 カタルシアが冷静に分析する。


 そんな話をしていると、不意に倒し損ねた最後の一体が俺の背後から飛びかかってくる。


「なッ!?」

 

(間に合わない!) 


 その瞬間、


霊解れいかい


 という静かな声と共に、ボンッと霊獣が爆散した。


 ふと横を見ると、鈴が付いた念珠のようなものをかざしているセレナの姿があった。


「大丈夫ですか?」


 セレナが俺に駆け寄ってくる。


「い、今のは……」


 俺が困惑していると、


「今のは姉様の霊能ですよ。相手の力を分解することができます。体が霊力でできている霊獣ならば一撃必殺ですね」


 と、ルナがゆっくりと説明した。


「え……えぐ」


 それを聞いて、俺は若干引く。


「まぁ、何はともあれ無事で良かったですね」


 セレナがそう言って微笑むと、俺たちは再び先へ進み始めた。




 その後も、数匹の霊獣と戦闘をした俺たちは、再び森の奥へと足を進めていた。


 進めば進むほど、空気の密度が変わっていくのがわかる。


 最初は"満ちている"と感じていた霊力が、今では"流れている"とはっきり感じられるほどだった。


「……さっきより、さらに濃くなってないか?」


「もうすぐですね」


 セレナが前方を見据える。


 やがて、木々の密度がふっと途切れた。


 視界が開ける。


「……おぉ」


 思わず声が漏れた。


 そこには、円形に開けた空間が広がっていた。


 中心には白い石で造られた神殿が静かに佇んでいる。


 外壁はツル植物のような模様に覆われ、ところどころに淡い光が走っている。風はほとんどないのに、周囲の光の粒子だけがゆっくりと巡っていた。


「これは……?」


「これは『祝福の神殿』です。ダンジョンの中央に位置する古代の神殿ですよ」


 ルナが静かに告げる。


「ここでは、祈ることで天神様の祝福を受けられると言い伝えられています」


「祝福って……具体的には?」


 マヨが問いかけると、セレナがゆっくりと答えた。


「この場所で授かるのは主に"出会い"に関する祝福です。縁が強まったり、新たな巡りが生まれたり……そういったものですね」


「へぇ〜! やるやる!」


 ミリアが元気よく手を挙げる。


「ふふっ、順番に祈っていきましょうか」


 セレナの言葉に、俺たちは神殿の中へと足を踏み入れた。


 すると神殿の中央、開けた天井の下には古代の祭壇があった。


 祭壇の前に立つと、空気が一段と静まる。


「では、どうぞ」


 セレナが優しく促す。


 最初に前に出たのはミリアだった。


「えーっと……みんなとずっと一緒にいられて、おいしいご飯いに出会えますように!」


 ぱんっと手を合わせる。


 その瞬間、祭壇がふわりと光り、柔らかな光がミリアを包み込んだ。


「わぁ……あったかい!」


 ミリアは目を輝かせて戻ってくる。


「ちゃんと反応してるな……」


 次にマヨが前に出る。


「……パーティのみんなと、これからの冒険で新しいモノに出会えますように」


 静かに祈り、マヨは柔らかな表情で戻ってきた。


 続いてカタルシア。


「この出会いが、みんなの未来に繋がりますように」


 静かに祈る。


「……不思議な感覚ですね」


 そう呟きながら戻ってくる。


 そして、最後に俺の番が来た。


「……」


 祭壇の前に立つ。


 さっきまでの軽い空気とは違う。妙に、胸の奥がざわつく。


 俺は軽く息を吐き、手を合わせた。


「……みんなと、これからも最高の冒険ができますように」


 その瞬間だった。


 ――キィン……


 耳鳴りのような音が響く。周囲の気配が消える。


(な、なんだ……)


 それと同時に、フラッシュバックのように過去の記憶のような物が流れ込んできた。


『すまない……』


 誰かの声。幼い男の子の声だ。


 だが――


(……俺の声? 元世界の記憶……?)


 その声は、どこか幼少期の俺のような雰囲気があった。


『きっといつか……会える日が来るさ』


 断片的な言葉。


『きっと――』


 そこで、途切れた。


 ――スッ


 気づけば、元の空間に戻っていた。


「……今の……?」


 思わず呟く。


「どうかしましたか?」


 ルナが不思議そうに首を傾げる。


「いや……なんでもない」

 

 俺は視線を逸らす。


 久しぶりの感覚。また何かが繋がったような気がした。


「よしっ、一通り祈りもできたし、そろそろ戻るか!」


 俺は気を取り直してそういうと、神殿を後にした。


 森を出ると、空気が一気に軽くなる。


「いや〜、楽しかった!」


 ミリアが大きく伸びをする。


「軽い運動のはずが、普通に戦ってた気がするけどね……」


 マヨが苦笑する。


そんな風に和気あいあいとした雰囲気で、俺たちはアインへと帰還した。




 深夜。霊王城の客間のバルコニーで、俺は1人物思いに耽っていた。


「……スピーカー」


 俺は久しぶりにスピーカーに話しかける。


〈はい〉


「単刀直入に聞くけど、ゲームマスターと天神は同一人物なのか?」


 俺はずっと気になっていたことを質問した。


 しかし、帰ってきた答えは。


〈ストーリーに直接関係、または関係の無いする情報にはお答えできません〉


 「……そりゃそうか。テスト中の質問で、『このテストを作ったのは先生ですか?』って聞くようなもんだしな」


 俺は一人納得し、そのまま沈黙したまま再び街を見下ろした。


 明日、この街を出る。


(明日からまた、新しい街か)


 春のアインの夜風が、今日は温かく感じた。


少しでも、


「面白い!」「展開が気になる!」


と思ったら、ぜひ☆☆☆☆☆評価、感想で応援お願いします。


ブックマークがいただけると、大変励みになります。



〈主な登場人物〉


テンコ:神のゲームの主人公に選ばれた、普通の高校生。性格は厨二病で、抜けてるところもあるが、意外と頭はいい。


マヨ:大魔ミルキーウェイ神皇国の第一皇女。性格は真面目だが、皇女として過ごしてきた反動で素が出る場面もある。意外と間が抜けている。


ミリア:獣人の少女。とても活発で食いしん坊。強い。


カタルシア:紫髪のエルフの少女。人間で言う14歳くらいの見た目。とても誠実で真面目。


ルナ:天神大社を管理する霊人族の巫女。穏やかな性格。人間で言う16歳くらいの見た目。


セレナ:アインの大霊樹を管理する霊人族の女性。穏やかな性格。ルナの姉。人間で言う20歳くらいの見た目。

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