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『神』のゲームの主人公~突如巻き込まれた異世界ゲームで、最高のエンディングを目指します~  作者: トランス☆ミル
第五章 宗教国家と天神信仰編

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第42話 祝日

 天霊祭3日目。今日まで祭りらしいが、外は異様に静かだ。


 窓から見える街路は、昨日までの喧騒が嘘のように静まり返っている。


 色とりどりの提灯も、光の旗も、屋台の骨組みもすべて撤収され、白と薄青の石畳がむき出しになり、朝の柔らかな光だけが淡く照らしている。


 まるで祭りが一夜の夢だったかのように、街は元の穏やかな姿に戻っていた。


 俺は窓辺に寄りかかり、ぼんやりと外を眺めながらコーヒー代わりのミルクティーをすする。


(静かだな……)


 胸の奥に、ほんの少しの寂しさが広がる。


 でも、それは悪いものじゃなかった。むしろ、賑わいが去った後の静けさが、昨日までの楽しさをより鮮やかに思い出させてくれる。


「おはよ〜」


 そんなことをぼんやりと考えていると、背後からマヨの声がした。


 振り返ると、マヨは髪を軽く結びながら起きてくる。


 いつもの皇女らしい凛とした雰囲気だが、目元に少し眠気が残っている。


 それに続き、他の2人もすぐに起きてきた。


「みんなおはよう!」


 俺は元気にそう言うと、みんなと一緒に朝の身支度を始めた。




 その後、朝食を軽く食べ、少しゆっくりしていると、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。


「は~い」


 俺がドアを開けると、セレナとルナが並んで立っていた。


 2人はいつもの穏やかな笑顔で、軽く頭を下げる。


「おはようございます」


「おはよう。どうしたの?」


「今日もし予定がありませんでしたら、私たちと出かけませんか?」


「ど、どこへですか?」


 俺が尋ねると、セレナが静かに説明を始めた。


「今日は天霊祭の最終日、『巡り会いの日』です。家族や親戚、友達、恋人、そして旅で出会った人たちとの縁に感謝する日……というより、今日は『感謝を実践する』日ですね」


「感謝を実践?」


「えぇ。感謝を形で示す日と言ったらいいんでしょうか? 今日は大霊樹の運営もお休みなので、みなさんとの出会いを祝福するために、隣街の『エンカ』に行こうと思いまして」


 セレナは微笑みながらそう言った。


「エンカ……?」


「出会いの街と呼ばれる場所ですよ。願いの橋、縁結びの泉など、観光スポットがたくさんあって、今日は特別にライトアップや小さなイベントも行われています」


 ルナが優しく付け加える。


「みなさんとの出会いも、きっと天神様の巡りによるもの。今日はそんな縁を祝いながら、ゆっくり街を巡ってみませんか?」


 2人の話に、ミリアが即座に飛び跳ねる。


「エンカ! 行きたい行きたい! みんなで出かけよー!」


「感謝か……良いね! そういう時間も大切だな」


 俺は自然と笑みがこぼれる。


 マヨも少し考えた後、うなずいた。


「……そうね。祭りの締めくくりとして、悪くないわ」


 カタルシアが静かに微笑む。


「私も興味があります。出会いの街……素敵な響きですね」


「それでは、準備ができ次第、出発しましょう。馬車を用意しています」

 

 セレナが穏やかに頭を下げると、


「それじゃあ、さっそく行きますか!」


 と、俺たちは顔を見合わせて軽く笑い、部屋を後にした。




 俺たちは馬車に乗り込むと、エンカ目指して出発する。


 静かな朝のアインの街を、馬車がゆったりと進んでいく。


 窓から見える街並みは、昨日までの祭りの熱気が嘘のように落ち着いていた。

 

「静かになったね……」


 俺がぼんやりと呟くと、隣に座るセレナが口を開いた。


「派手なものだけが、祭りではありませんからね。ゆっくりと心を落ち着かせ、巡りに感謝を伝えるのも、祭りの形の一つでしょう」


 ルナも向かいの席で続く。


「今向かっているエンカは、そんな巡りを特に大切にする街です。エンカは昔、出会いがなかった人々が集まってできたと言われています。家族に恵まれない者、友達がいない者、旅の途中で孤独を感じていた者――そんな人たちが互いに出会い、縁を紡いで街を築いたんです。だから『出会いの街』と呼ばれるようになりました」


「へぇ……いい話だな」


 俺は無意識に首元のお守りの鈴を指で撫でた。


 淡い温かさが、指先に伝わってくる。


 ミリアが俺の隣で身を乗り出し、窓に張り付くように外を眺めながら言った。


「エンカって、どんなところ? キラキラしてる? おいしいものある?」


 ルナがくすっと笑う。


「キラキラは保証しますよ。願いの橋は、渡るだけで光の粒子が舞いますし、縁結びの泉は、投げたコインの波紋が花のように広がるんです。今日は祝日なので、特別にライトアップもされます」


 俺は、「へぇ〜」と興味津々に話を聞く。


 その横で、カタルシアは静かにノートを広げながら、


「出会いの街……記録に残しておきたいですね。スピリトゥスの文化として、とても興味深いです」


 と言って、ペンを走らせ始めた。


 やがて馬車は街を抜け、薄く霧のかかった草原を進んでいく。


 エンカはアインより少し西に位置するらしく、景色が少しずつ明るく、色鮮やかになっていく。


 そして、馬車がゆるやかな坂を上り始めた頃、前方に霧の向こうから淡い光の街並みが浮かび上がってきた。


 色とりどりの花が街路を彩り、アインとはまた違った趣のある街だ。


「到着です。あれが『エンカ』……出会いの街ですよ」


 セレナが静かに告げた。


 馬車がゆっくりと速度を落とし、街の入り口にある光の門をくぐる。


 柔らかな風が車内に流れ込み、花と霧が混じった甘い香りが、みんなの鼻をくすぐった。


 俺は窓の外に広がる幻想的な景色を見て、自然と笑みがこぼれる。


「……よし、今日は一日中、全力で楽しんで、出会いに感謝しよう!」


 俺がそう言うと、みんなは笑顔で「そうだね」と言い、馬車を降りた。


 エンカの地に降り立つと、甘く柔らかな風が俺たちを包み込んだ。アインとはまた違う優しさを持っている。


 白と薄青の石畳に、色とりどりの花が溢れ、街路樹には淡い光の粒子が絡みついている。


 祭りの賑わいは少ないが、代わりに人々の笑顔と穏やかな会話が、街全体を優しく満たしていた。


「わぁ……きれい!」


 ミリアが最初に声を上げ、尻尾をブンブン振りながら駆け出す。


「待ちなさい、ミリア!」


 マヨが慌てて追いかけるが、どこか口元が緩んでいた。


 ルナは微笑みながら、


「まずは、近くにある願いの橋から行きましょうか」


 と、優しく先導してくれる。


 俺たちは石畳の道をゆっくり歩きながら、街中にある橋へと向かった。


「綺麗な川だなぁ」


 道中、街に流れる中規模の川を見て、俺は感嘆の声を漏らした。水はとても透き通っており、朝の陽光を受けキラキラと輝いている。


 水中では、小魚が群れをなして優雅に泳いでいる。


「この川は『霊巡川れいじゅんがわ』。通称『巡りの川』と呼ばれており、霊力を豊富に含んでいる祝福された川です。この川に願いの橋は架かっているんですよ」


「なるほど、だからこんなに優しいオーラが溢れているんですね」


 カタルシアは霊力の流れが見えるらしく、納得したようにうなずいた。


 そうして、しばらく歩いていると、やがて白いアーチ状の橋が見えてきた。思っていたより大きく、沢山の人が橋を渡っている。


 橋の正式名称は『奇縁橋きえんばし』。


 橋を渡るだけで、光の粒子が足元から舞い上がり、願いの形に変わって空へ昇っていくという言い伝えがあるらしい。


「すげぇキラキラしてるな」


 橋を渡る人々の足元からは、淡い光の粒子が立ち上っている。


「さぁ、私たちも行きましょうか!」


 セレナがそう促すと、俺たちは橋へと一歩踏み出した。


「わぁ! 光ってる!」


 明日から昇る光にミリアは興奮する。


 俺たちが足を踏み出すたびに、青白い光の粒子が舞った。まるで俺たちの思いに呼応するかのように。


「みなさんは何を願ってますか?」


 橋の中心辺りで、カタルシアがおもむろに質問をする。


「う~ん、私はルミナスで流れ星に願ったのと同じかな」


「そうですか。私もみなさんと冒険を続けたいと願いました!」


「あたしは美味しいご飯をいっぱい食べたいって願った!」


「お前はいつも通りだな。しかもそれくらい叶えてやってるだろ!」


 そんな他愛ないやり取りをしながら、俺たちは橋を渡りきった。




 それから次に訪れたのは、少し奥にある『縁結びの泉』。


 円形の泉の水面は、まるで鏡のように澄んでいて、周囲の花の色を映している。


 祭りということで、泉の周りには小さな紙の短冊とコインが用意されていた。


「ここでは、コインを投げて『大切な人との縁が深まりますように』と願うんです」


 セレナが説明すると、ミリアが真っ先にコインを掴んだ。


「えいっ! みんなとずっと仲良しで、ご飯もいっぱい食べられますように!」


 コインが水面に落ちた瞬間、波紋が花びらのように広がり、淡いピンクの光が泉全体を染めた。


 マヨがそれに続きコインを握り、


「……パーティのみんなと、これからも冒険を続けられますように」


 と、そっと投げた。


 カタルシアは真剣な顔でコインを投げ、


「この出会いが、みんなの力になりますように」


 と、静かに願う。


 俺もコインを手に取り、泉を見つめた。


(……こいつらと出会わなかったら、この世界に来なかったら、俺は今頃どうなってたんだろうな。孤独に慣れてたから気にしてなかったけど、人の温かさを知った今ではもうあの生活には戻れないな)


 胸の奥で、そんな思いがよぎる。


 俺は小さく笑って、コインを投げた。


「みんなと、最高の冒険を続けられますように」


 泉が優しく光り、波紋がゆっくりと広がっていく。


 ルナが隣で微笑みながら言った。


「今日は『巡り会いの日』。こうして形にすることで、感謝がより強く巡っていくんですよ」


 その言葉が、妙に胸に染みた。


 その後も、天神と人々の出会いを描いた『巡りの像』を見たり、観光の合間に、俺たちは屋台で軽く食べ歩きもした。


 花の蜜を練り込んだ柔らかいお団子や、霧のようにふわふわしたアイス。


 ミリアはもちろん大はしゃぎで、「別腹!」を連発していた。


 カタルシアが、


「なんだか、暖かい気持ちになりますね」


 と一言。


「ああ……そうだな」


 俺はみんなの顔を見回しながら、自然と笑顔になっていた。


「素敵なパーティですね」


 それを見て、セレナも優しく笑みを浮かべるのだった。




 やがて、観光を一通り終えた頃、俺はふと思いついて提案した。


「なあ、観光もいいんだけど……少し身体動かしたくなってきた。エンカの近くにダンジョンってある?」


 セレナが目を細めて微笑む。


「ええ、それなら良いのがありますよ。『出会いの森のダンジョン』という、初心者向けの森ダンジョンです。霊獣が住み着いていて、今日は祝日なので人も少ないはず。ちょうど軽い運動になると思います」


 すると、ダンジョンという言葉にミリアが即座に目を輝かせた。


「ダンジョン!? やるやる! 狩りだー!」


 マヨが呆れつつも、


「……まぁ、冒険者として、観光の締めくくりとしては悪くないわね」


 と、肩をすくめる。


 カタルシアも静かにうなずいた。


「みんなで協力して戦うのも、久しぶりですしね」


 こうして、俺たちはエンカの観光を楽しみながら、最後は冒険者らしくダンジョンへと足を向けることになった。


少しでも、


「面白い!」「展開が気になる!」


と思ったら、ぜひ☆☆☆☆☆評価、感想で応援お願いします。


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〈主な登場人物〉


テンコ:神のゲームの主人公に選ばれた、普通の高校生。性格は厨二病で、抜けてるところもあるが、意外と頭はいい。


マヨ:大魔ミルキーウェイ神皇国の第一皇女。性格は真面目だが、皇女として過ごしてきた反動で素が出る場面もある。意外と間が抜けている。


ミリア:獣人の少女。とても活発で食いしん坊。強い。


カタルシア:紫髪のエルフの少女。人間で言う14歳くらいの見た目。とても誠実で真面目。


ルナ:天神大社を管理する霊人族の巫女。穏やかな性格。人間で言う16歳くらいの見た目。


セレナ:アインの大霊樹を管理する霊人族の女性。穏やかな性格。ルナの姉。人間で言う20歳くらいの見た目。

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