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『神』のゲームの主人公~突如巻き込まれた異世界ゲームで、最高のエンディングを目指します~  作者: トランス☆ミル
第五章 宗教国家と天神信仰編

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第40話 天霊祭

 スピリトゥスに来て4日目。今日はなんだか外が騒がしかった。


「今日は出発の日だな……」


 俺は荷物をまとめながら、ぼそっと呟く。


 今日はアインを去る日だ。


「もう少しだけ、ここにいたかったかもね」


 マヨは少し名残惜しさを顕にした。


「なんかいい匂いがする〜!  お祭りっぽい!」


 ミリアが窓辺で外を覗きながら、尻尾をぴょこぴょこ動かす。


「確かに……今日は何か大きな行事があるみたいですね」


 カタルシアが静かにうなずく。


「まずはアニマ様に挨拶に行っておきましょう。大霊樹の許可もらったお礼も言わないと」


 こうして俺たちは荷物を軽くまとめ、別れの挨拶をしに、アニマの元へ向かった。




 道中、街はすでに祭りの雰囲気に染まっていた。


 子供たちが光の蝶を追いかけ、商人たちが特別な屋台を並べ始めている。


 俺たちは城の第一正門をくぐり、昨日と同じ階段を上って第二正門へ。


 待っていると、すぐにセレナが現れた。


「おはようございます。テンコ様、マヨ様、カタルシア様、ミリア様」


 セレナはいつもの落ち着いた笑顔で迎える。


「今日は出発日なので、アニマ様にご挨拶をと思いまして」


 マヨが丁寧に言うと、セレナは優しくうなずいた。


「アニマ様もお待ちでした。どうぞ、こちらへ」


 俺たちは謁見の間に通された。玉座には、相変わらず王冠が少しずれているアニマが座っていた。


 側近が「陛下、姿勢を……」と小声で注意しているが、アニマは気にせず手を振る。


「おーっ、 みんな来たね〜。 大霊樹、楽しかった?  聞いたよ、大扉が開いたんだってね! 皇族パワーってやつなのかな?」


 側近がため息をつく。


「陛下……声が大きいです。あと無礼です」


 アニマは気にせず続ける。


「今日は大霊祭だよ。 街中が祭りで、夜まで霊舞とか花火とかあるんだ」


 俺たちは一瞬顔を見合わせた。


「実は私たち、もうこの街を出ようと思いまして……」


 それを聞いたアニマは、


「えー、せっかく来たんだから、もう少し、もう少しだけ滞在しない? 大霊祭は4年に一度の国祭なんだ。楽しいよ!」


 と、必死に説得してくる。


 その申し出にミリアが即座に反応。


「やったー!  お祭りー!」


 マヨが少し困った顔をしつつも、口元が緩む。


「まぁ……そうですねぇ」


「確かに、スピリトゥスの文化に触れる、いい機会ですね」


 俺はみんなの顔を見て、軽く笑った。


「じゃあ……祭りがあってる期間だけ、滞在を延期するか!」


「やった!  じゃあ今日はルナとセレナが案内してくれるよ!  彼女たちなら祭りのこと全部知ってるから!」


 アニマはそれを聞いて小さくガッツポーズをすると、セレナとルナを呼んだ。


 しばらくすると、浴衣姿のセレナとルナが控え室から入って来る。


「おぉ~」


「美しい衣装ですね!」

 

 カタルシアがそう言うと、ルナが優しく微笑む。


「ありがとう。今日は私たちでおもてなししますね」


 ミリアが飛びついて、2人の両手を掴む。


「ルナねぇ!  セレナねぇ!  一緒にお祭りだー!」


 それを見てアニマが、


「良かったら、みなさんも浴衣に着替えてはいかがでしょう? 祭りは形から楽しむべきですよ!」


 と、提案をしてきた。


「少し興味がありますね」


「私も着てみたいです」


「あたしもアレ着たい!」


 みんなは即賛成する。


 こうして、俺たちは浴衣に着替え、城を出た。




 外はすでに祭りの準備が本格化していて、街全体が優しい光と期待に満ちていた。


 午前中からお祭り気分満点だ。


「う~ん、いい匂いがする~」


 街には、屋台から漏れる食べ物の香りが漂っている。


「確かに、いい匂いだな」


(子供の頃、じいちゃんと行った夏祭りを思い出すな……)


 俺はその祭り特有の匂いを嗅いで、静かに元世界での記憶を思い出していた。


「帝国の祭りとは違った趣きがありますね」


「そうね。貴重な体験を逃すところだったわ」


「ふふっ。喜んでもらえて何よりです」


 セレナは楽しそうなみんなの顔を見て微笑む。


 俺たちは浴衣姿で、ルナとセレナに導かれるまま通りを歩く。


「まずはこちらの屋台からどうぞ」


 セレナが指差したのは、霧のようなスープを出す店。湯気がふわっと立ち上り、花の香りが混じっている。


「これ、一昨日食べた霧スープの特別版みたいですね」


 カタルシアがそう言うと、ミリアが目を輝かせて飛びつく。


「わーい!  いただきまーす!」


 一口飲んだミリアの尻尾がブンブン振れる。


「ん〜、おいし~。 テンにぃも飲んで!」


 俺もスープを啜ると、確かに体が軽くなった。胸の奥のざわつきまで、優しく溶けていく気がした。


「美味しい……なんか、心まで澄むな」


「巡りの日だからこそ、こんな味になるんですね」


 ルナが優しく説明を加える。


「今日の天霊祭は建国記念日でもあり、天神様と霊力の恵みに感謝する日なんです」


「建国記念日……か」


 俺がそう呟くと、ルナは穏やかに続けた。


「スピリトゥスは、天神様の祝福を受けた大霊樹の下で建国されました。私たち幽霊族は霊力と共に生きているので、国の発展には霊力の恵みが欠かせません。この国の霊力は大霊樹から溢れ出し、国中を巡って大霊樹へと回帰します。その巡りのおかげで、大地に生命が息吹き、潤い、豊かになるんです」


 それを聞き、セレナが微笑む。


「巡っているのは霊力だけではありませんよ。人の思いや魂、運命までも、天神様によって巡らされています。霊舞も、花火も、すべて天神様への感謝の形。今日は街中が、巡りの輪の中にいるんですよ」


 俺はお守りの鈴を握った。


「なるほど……良い話ですね。全ての巡りは、天神様の――」


(あれ? でもそれって、天神によって運命が決められてるってことじゃ……まさに俺のことか)


 俺は言葉の途中でふとそんなことを思う。


「どうしたんですか?」


 俺が少し沈黙していると、ルナが顔を覗きこんできた。


「あぁいえ、この出会いも天神様の巡りによるものなら、感謝しなくちゃなって思っただけです」


「そうですね! 私もみなさんとの出会いに感謝しています」


 俺の言葉にみんなでうなずき合いながら、次は霊舞のパレードへ。


 大通りでは屈強な男たちが神輿を担ぎ、周りで白装束の舞姫たちがゆっくりと舞い始めた。


 霊力が軌跡を描き、光の帯が空に広がる。まるで天神様の巡りが目に見えるようだ。


 ミリアが手を叩いてはしゃぎ、マヨが珍しく目を細めて見入る。


「美しい……」


 カタルシアは静かに手を合わせた。


 俺は舞いを見ながら、ふと思う。


(天神様が本当にゲームマスターだとしたら、この世界に顕現したことがあるのかな……俺の正体も、巡りが整えば明かされる日が来るのかな……)


 そんなことを考えていると、突然横から声がした。


「よっ、みんな楽しんでる〜?」


 フードを被っただけの雑な変装をしたアニマが、にこにこしながら立っていた。


「陛下……!?」


 セレナとルナが慌てて周りを見回す。


「ちょっとだけ抜け出してきたんだ!  アイツにはバレてないよ……たぶん」


 アニマは屋台の飴を頬張りながら、俺の隣に並ぶ。


「テンコくん、この飴おいしいよ!  食べてみて!」


 手に持っていたのは、リンゴ飴らしき食べ物だ。でも青白い。


「アニマ様……バレバレじゃないですか?」


 俺が苦笑すると、アニマは肩をすくめた。


「いいじゃん!  祭りは楽しむためにあるんだからさ」


 そんな会話をしていると、すぐに側近の「陛下ぁぁ!」という遠い叫び声が聞こえて、アニマは慌てて逃げていく。


 俺たちは大笑いした。


 昼から夕方まで、屋台を回り、霊舞を見、祈りの広場でみんなで手を合わせた。




 そして夜。街の明かりが一斉に落とされ、静寂が訪れる。


 やがて遠くの方で、最初の花火が上がった。俺たちは高台から眺めている。


 青白い光が夜空に広がり、形を変えて花や蝶などを描く。霊力が籠められているのか、輝きが美しい。


 次々と上がる花火は、普通のものとは違う。光が生きているように動き、音さえ優しく響く。


「きれい……!」


 ミリアが俺の袖を掴んで、空を見上げる。


「こんな花火、初めて見たわ」


 マヨが静かに呟き、ルナとセレナは穏やかに微笑む。


 アニマはまたお忍びで戻ってきて、俺の隣に立っていた。


「どう?  綺麗でしょ」


「……はい。なんか、昔を思い出します」


(記憶はないけど……4歳くらいのとき、誰かと一緒に見た気がする……親じゃない、俺と同い年くらいの……友達、だったっけ?)


 俺は花火を見ながら、物思いに耽る。


 空には大きな花が咲き、少し遅れてドーンという音が聞こえ、やがて儚く散っていく。


「これが花火……初めてみました」


 どうやらカタルシアは花火を見たことがないらしく、感動の眼差しで空を見上げている。


 まぁ、ここは異世界なので、花火は珍しいモノなのだろう。


「みんな楽しそうで良かったよ。じゃあ、僕は怒られる前に戻るね」


「はい。そうしてください」


 アニマはそう言って、側近の元へと帰っていった。


 その後も俺たちは、静かに花火を眺めていた。


 花火の光が俺たちの顔を照らす。


 その光は、まるで俺たちの巡り会いを歓迎しているようだった。


少しでも、


「面白い!」「展開が気になる!」


と思ったら、ぜひ☆☆☆☆☆評価、感想で応援お願いします。


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〈主な登場人物〉


テンコ:神のゲームの主人公に選ばれた、普通の高校生。性格は厨二病で、抜けてるところもあるが、意外と頭はいい。


マヨ:大魔ミルキーウェイ神皇国の第一皇女。性格は真面目だが、皇女として過ごしてきた反動で素が出る場面もある。意外と間が抜けている。


ミリア:獣人の少女。とても活発で食いしん坊。強い。


カタルシア:紫髪のエルフの少女。人間で言う14歳くらいの見た目。とても誠実で真面目。


ルナ:天神大社を管理する霊人族の巫女。穏やかな性格。人間で言う16歳くらいの見た目。


セレナ:アインの大霊樹を管理する霊人族の女性。穏やかな性格。ルナの姉。人間で言う20歳くらいの見た目。


アニマ:スピリトゥス霊王国の霊王。陽気でお調子者。威厳が全くない。

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