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『神』のゲームの主人公~突如巻き込まれた異世界ゲームで、最高のエンディングを目指します~  作者: トランス☆ミル
第五章 宗教国家と天神信仰編

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第38話 天神の社

 俺たちが昼食を終えて店を出ると、午後の陽光が石畳に柔らかく落ちていた。


「ふぅ……お腹いっぱいになったね」


 ミリアが両手でお腹をさすりながら、満足げに息を吐く。


「ミリア、さっき三杯目のおかわりしてたよね」


 マヨが呆れたように言うと、ミリアは尻尾をぴょこぴょこ振って笑った。


「だって、あのスープが霧みたいで不思議でおいしかったんだもん!」


「確かに……体が軽くなった気がしますね」


 カタルシアが静かにうなずく。霊力の影響なのか、みんなの表情がいつもより少し明るい。


 俺はみんなの様子を見ながら、自然と笑みを浮かべていた。


「じゃあ、午後は少し歩いて消化しようか。街中ばっかりじゃなくて、ちょっと外れたところも見てみたいし」


「いいわね。帝国の街とは全然違う雰囲気だから、散策するだけでも楽しいかも」


 マヨが乗り気でうなずく。幼い頃に一度来たきりで、ほとんど記憶がないと言っていたから、今日は本当の意味で"初めて"の国なんだろう。


「高台の方に登ってみると、景色が良さそうですね。大霊樹も遠くから見えるかもしれません」


 カタルシアが指差したのは、街の奥にそびえる丘。白い建物が連なる中でも、少しだけ緑が濃く、霧が薄くかかっている場所だ。


「よし、決まりだな!」


 俺は軽く拳を打って、みんなを促した。




 それから俺たちは、石畳の道を抜け、徐々に人通りが少なくなる細い路地へ入る。


 道端には小さな花壇が並び、青白い花が風に揺れて淡く光っていた。


 通りすがりの霊人族のおばさんが、優しく微笑んで会釈してくる。


 敵意なんて微塵もない。ただ、穏やかで、温かい。


「なんか……落ち着くな、ここ」


 俺は無意識に呟いた。


「私も。帝国の街は活気があるけど、ここは……時間がゆっくり流れてるみたい」


 マヨは俺の言葉に同意する。今だけは、皇女としてではなく、ただの少女のように街を見ていた。


 やがて、坂道が少しずつ急になり、石段が現れる。段差はそれほど高くないけど、登るごとに空気が澄んでいく。


 風が頰を撫で、遠くからかすかに鈴の音が聞こえてくる。


「この音、さっきの祈り鈴みたい」


 ミリアが耳を澄ませて、きょろきょろする。


 頂上に近づくと、霧が少し濃くなった。


 そして、視界が開けた瞬間――


「……あれ?」


 そこには、少し開けた空間があり、奥に小さな社殿が静かに佇んでいた。


 木造の古びた建物。屋根は緩やかに反り、入り口には淡い光の膜のようなものが張っている。


 鳥居はないが、灯籠のような霊石が左右に並び、境内を柔らかく照らしている。


 周囲には、苔むした石のベンチと小さな石像が点在するだけ。


「おぉ、なんかあるじゃん」


(これは神社……?)


 俺は思わず足を止めた。


「あ、ほんとだ……」


「おそらく形状からして、天神大社……ですかね?  霊王国の信仰施設は、街中だけでなく、こんな高台にもあるんですね」


 カタルシアが静かに呟き、社殿を見上げた。


「流石、物知りだなぁ」


「わー、きれい!  なんか、神秘的〜」


 ミリアはもう興味津々で近づいていく。


 俺たちは顔を見合わせる。


「せっかくだし、行ってみようか」


「そうね。行きましょう」


 誰も知らなかった場所に、たまたま辿り着いた。それだけで、なんだか特別な気がした。


 そして俺は軽く息を吐いて、一歩、境内へ踏み出した。


「おぉ〜、雰囲気あるなぁ……」


 俺たちは社殿の前まで行くと、そこで立ち止まる。


 その社殿は、教会とはまた違った神聖な雰囲気だ。


「あら、人なんて珍しいわね」


 俺たちが社殿に見とれていると、横から女の声がした。視線を向けると、そこには1人の少女が立っていた。

 

 白い上衣に緋色の袴のようなスカートをまとった、巫女装束の霊人族。銀色の長い髪が風に揺れ、穏やかな瞳がこちらを向いている。

 

 年齢は人間でいうと15か16歳くらいだろうか。表情は静かで、でもどこか温かく、まるでずっとここで待っていたかのように微笑んでいる。


「あ、あなたは?」


「私はルナ。この社の巫女を務めています。ようこそ、天神大社へ」

 

 少女は静かに頭を下げた。声は鈴のように澄んでいて、耳に心地よい。


「突然お邪魔してすみません」


「いえいえ。旅の方々ですね。お参りされますか?」

 

 ルナの言葉に、俺たちは一瞬顔を見合わせた。


「えっと……はい、ぜひ」

 

 マヨが代表して答えると、ルナはにこりとうなずいた。


「どうぞ、心を清めてお入りください」


 ルナはそう言うと、そこにある水で手を洗うように催促する。


 見ると、社殿の横に小さな石の水盤があり、柄杓ひしゃくが置いてあった。


 霊水が溜まっているようで、手を浸すとひんやりとした感覚が伝わってくる。

 

 俺たちは順番に手を清め、社殿の前に並んだ。


「それでは、私に続いて参拝してください」

 

 ルナが「二礼二拍手一礼で」と優しく教えてくれたので、俺は手を合わせながら、なんとなく目を閉じた。


(……参拝手順は元世界の神社と同じか。なんだか落ち着くなぁ)

 

 胸の奥が、静かに温かくなる。

 

 ミリアは賽銭箱のような石の器に小銭を入れて、目をきらきらさせながら祈る。


「みんながずっと仲良しで、ご飯がおいしくて、冒険が楽しくありますように!」


 マヨとカタルシアも、静かに手を合わせた。


 お参りが終わると、ルナがまた穏やかに微笑んだ。


「ありがとうございます。せっかくお越しくださったので、少し上がって行きませんか?」


 彼女は社殿の縁側を指さした。


 そこには小さな卓が置かれ、湯気の立つ緑茶がすでに用意されている。


「え……いいんですか?」


 俺が思わず聞くと、少女はくすっと笑った。


「ここは天神様の社ですから。巡りの良い方が来るのを、いつも待っているんです」


 俺たちは縁側に腰を下ろした。


 ハーブティーは淡い青みがかって、飲むと体がふわっと軽くなる。心まで澄んでいくような、不思議な味だった。


「美味しい……」


 ミリアが目を細めて幸せそうに言う。


 少女は自分も小さな杯を持って、静かに座った。


「そう言えば、自己紹介がまだでしたね。ミルキーウェイから来ました、テンコと言います。訳あって旅をしている冒険者です」


「同じく、私はマヨです」


「カタルシアと申します」


「あたしはミリア!」


 俺たちが名乗ると、ルナは優しくうなずいた。


「テンコ様にマヨ様……カタルシア様、ミリア様ですね。とても穏やかなお名前ですね」


 それから、俺たちは自然と話を始めた。最初は街のことや霊王国の雰囲気について。


 ルナがゆっくりと語り出す。


「この国では、天神様を至高の存在としてお慕いしています。天神様は世界を創り、すべてを巡らせてくださる女神様です。裁くことも、壊すことも、強く創り出すこともなさらず。ただ、静かに観測し、滞った流れを整えてくださる……それが天神様の御業です」


 マヨが静かにうなずく。


「帝国では原初神様を敬っておられましたね。原初神――魔神王と呼ばれる存在は、天神様がお創りになった柱です。『混沌』『自由』『支配』『維持』。確か、帝国の竜天神様は『維持』でしたね」


 ルナの言葉に、俺は思わず息を飲んだ。


 胸の奥で、何かがかすかに響く。


 でも、今はそれを深く掘り下げる気分じゃなかった。


 ただ、穏やかに受け止める。


「へぇ……面白いな。世界って、そんな風にできてるんだ」


 俺が素直に言うと、ルナは優しく微笑んだ。


「テンコ様の瞳……とても強い光をお持ちですね。まるで、天神様の巡りに導かれた方のように」


「え、いや、そんな……ただの冒険者ですよ」


 俺は照れくさくなって笑った。


 ルナはそれを聞いて、


「冒険者ということは、『アインの大霊樹』に行かれるのですか?」


 と、質問をしてくる。


「えぇ、検討はしています。あの大霊樹って、特別な許可が必要なんですよね?」


「許可は必要ですが、申請は簡単なので、明日お城に行ってみると良いですよ」


 マヨの疑問に対し、ルナはニコリと微笑んで返答をした。


「ありがとうございます。では、明日行ってみようと思います」


「これで、明日の予定は決まりだな」


「楽しみー!」


 ミリアが手を上げて喜ぶ。それを見て、ルナはふふっと笑った。




 その後もルナと雑談を続け、気づけば日が少し傾き始めていた。


「おっと、そろそろ宿に戻らないとだな。面白い話がたくさん聞けて、楽しかったです」


 俺がそう言うと、ルナはくすっと笑って立ち上がる。


「せっかくお越しくださったので、巡りの守りを差し上げます」


 そしてルナはそう言うと、巾着から取り出した小さな鈴型の飾りを、俺たち一人ひとりに手渡した。


 霊石が入っているらしく、触れるとほんのり温かい。


 俺が受け取った瞬間、鈴が微かに光った。


「……なんか、手に馴染むな」


 俺は無意識に呟いた。


 ルナは静かにうなずく。


「これを身につけていると、魂の流れが整います。迷いが晴れ、巡りが良くなるはずです」


 ミリアが「かわいい! ありがとう〜!」と喜び、マヨとカタルシアも丁寧にお礼を言った。


 それから俺たちはルナに深く頭を下げて、社を後にした。


 石段を下りながら、ミリアが元気に言う。


「テンコ、なんかいいところ見つけたね!」


「ああ……ほんとにな」


 俺は鈴のお守りを握りしめる。


 胸の奥が、ほんの少し温かかった。


 遠くに大霊樹が夕陽に照らされて輝いている。


「明日、あの大霊樹に行ってみようか」


 俺の言葉に、みんなが笑顔でうなずいた。


 こうして、スピリトゥスの穏やかな午後が、ゆっくりと暮れていった。


少しでも、


「面白い!」「展開が気になる!」


と思ったら、ぜひ☆☆☆☆☆評価、感想で応援お願いします。


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〈主な登場人物〉


テンコ:神のゲームの主人公に選ばれた、普通の高校生。性格は厨二病で、抜けてるところもあるが、意外と頭はいい。


マヨ:大魔ミルキーウェイ神皇国の第一皇女。性格は真面目だが、皇女として過ごしてきた反動で素が出る場面もある。意外と間が抜けている。


ミリア:獣人の少女。とても活発で食いしん坊。強い。


カタルシア:紫髪のエルフの少女。人間で言う14歳くらいの見た目。とても誠実で真面目。


ルナ:天神大社を管理する霊人族の巫女。穏やかな性格。人間で言う16歳くらいの見た目。

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