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『神』のゲームの主人公~突如巻き込まれた異世界ゲームで、最高のエンディングを目指します~  作者: トランス☆ミル
第五章 宗教国家と天神信仰編

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第37話 天神信仰

 スピリトゥスに着いてから2日目の朝。


 俺がカーテンを開けると、柔らかな朝の日差しが目に飛び込んできた。


「いい朝だな」


 窓の外に広がる新鮮な景色を見ながら、独りそう呟く。


 昨日俺たちが適当に取った宿は、少し高い場所にあり見晴らしがいい。


「さて、みんなを起こしますか」


 俺は一息つくと、みんなを起こしに行く。


 それからみんなが起きると、俺たちは1階の食堂に朝食を食べに向かった。


「今日の予定は適当に街ブラするんだよね」


 俺たちは朝食を食べながら、予定を確認する。


「そうですね。帝国の外は初めてなので、とてもワクワクします!」


「そうね。私も幼い頃、ママに連れられて来たくらいで、あまり覚えてないから楽しみだわ」


「食べ歩きしたーい!」


 そんな話をしながら朝食を食べ終えると、すぐに準備を済ませ、宿を後にした。




 宿を出ると、朝のアインはすでにゆるやかに動き始めていた。


 石畳の道を、淡い光が滑るように照らしている。白と薄青を基調とした街並みは、昨日見たときよりもさらに澄んで見えた。


「やっぱり、光り方が違うよな」


「霊石ですね」


 壁に埋め込まれた霊石が、朝日に反応してやわらかく輝いている。眩しいのではなく、包み込むような光だ。


「れいせき?」


「霊石は霊力を蓄えた特殊な石よ。要するに魔石みたいなもの。太陽光に反応して、ほんの少しだけ活性化するの。」


 そんなやり取りをしていると、ミリアはすでに屋台に吸い寄せられていた。


「テンにぃ! 見て見て! なんか光ってるパン!」


 指差した先には、ほんのり青白い光を帯びた丸パンが並んでいる。


「珍しいパンですね」


「これは"巡りの酵母"ですよ」


 俺たちが近づくと、屋台の店主らしき霊人族の女性が、にこやかに説明してくれた。


「巡りの酵母?」


「えぇ。霊王国では、発酵にも霊力を使うんです。今日は天神様の巡り日ですから、いつもより香りが良いはずですよ」


「天神様……世界を創り、人類を生み落としたとされている存在ですね」


 俺は思わず聞き返した。


「はい、そうです。天地創造の女神様。この世界の守護神のような存在です」


(女神様? 天神って女性だったのか……女性……ゲームマスター?)


 少し気にはなっていたが、天神はゲームマスターの表上の設定っぽいなと、俺は改めて思った。


「私たちの帝国が特殊なだけで、ほとんどの国は天神信仰よ。魔神王が君臨する国以外はね」


 店主の言葉に、マヨも付け加える。


「言われてみればそうか……テルースも天神を信仰してたしな」


「ふふふ。私たちの国は、あんな野蛮じゃないですけどね。同じ宗教国家でも、私たちにとって魔神王は、天神様が最初に創造した"柱"ですので敬う対象です。詳しくは広場の天神像をご覧になるとよろしいですよ。今日は祈りの市も出ていますから」


 店主はそう言って、焼き立てのパンをミリアに渡した。


「ありがとう!」


 ミリアは早速かぶりつき、目を輝かせる。


「ん〜! なんか……ふわっとする!」


「香りがお花みたいですね」


 カタルシアも一口食べ、感心したように呟く。


「霊力は"循環"を助ける力だから、非能力者の体にも優しいのよ」


 店主が補足する。


「循環、ねぇ……」


 昨日、アニマが言っていた言葉が頭をよぎる。


 ――力は巡る。命も巡る。世界も巡る。


 俺は、なんとなく胸の奥に小さな引っかかりを感じた。


 だが、その正体はまだ掴めない。


「よし、せっかくだしその広場ってとこ行ってみるか!」


「さんせーい!」


 ミリアが元気よく手を挙げる。


 俺たちは石畳の大通りを進んでいった。




 道の両脇には、霊石細工の店や、不思議な香りの草花を売る屋台が並んでいる。


 風が吹くと、小さな風鈴のような飾りが澄んだ音を立てた。


「きれい……」


 カタルシアが立ち止まり、吊るされた水晶細工を見つめる。


「それは"祈り鈴"といいます」


 すると、店の老人が穏やかに声をかけてきた。


「願いを込めて鳴らすと、霊力が天へ巡るのだそうです」


「天へ巡る?」


「えぇ。天神様へ」


 「へぇ、面白いですね」


 俺は視線を上げる。


 そして更に進むと、通りの先、ひらけた広場の中央に、白い巨大な像が見えた。


「あれが……?」


「たぶん、天神像ね」


 マヨが小さく頷く。


 広場に近づくにつれ、人の気配が増えていく。


 だが不思議と騒がしくはない。人々は静かに祈り、語らい、笑っている。


 そして広場の中央――そこに立っていたのは、翼のような意匠を背に持つ、抽象的な石像だった。


 顔立ちははっきりしない。だが、どこか少女のように見える。


 背後には円環が彫られている。まるで巡りを象徴するかのように。


「……これが、天神か」


 俺は無意識に呟いた。


(円環に翼……あの時の魔神王みたいだ)


 翼はどうやら円環から生えているようだ。どこか既視感がある。


 広場の端では、白装束の霊人族が静かに語りをしている。


「天神は裁かない。ただ巡らせる」


 その言葉が、風に乗って届いた。


「巡らせる……?」


 俺は思わず足を止める。


「世界が滞るとき、天神は流れを整える。破壊も創造もせず、ただ世界を観測し、巡りを戻す」


 穏やかな声。


 だが、どこか芯がある。


「それが、この国の信仰よ」


 マヨが静かに言う。


 それに続き、カタルシアも口を開いた。


「創造も破壊もしない。ただ流れに身を任せて、観測する。霊王国らしい思想ですよね」


「……あぁ」


 俺はもう一度、天神像を見上げた。


 (巡り……観測、か)


「ちょっと変わってて、面白い思想だな」


 俺はそう言うと、静かに笑みを浮かべた。


「さぁ、観光を続けましょうか」


 そして俺たちは、再び歩き出した。




 それから俺たちは、半日中歩きつづけ、気づけば昼になっていた。


 広場を後にし、石畳の道をゆっくりと歩く。


「いっぱい歩いたね〜」


 ミリアが両腕を伸ばしてあくびをする。


「流石に少し疲れました……」


 カタルシアも疲れたように微笑んだ。


「そろそろ昼食を取りましょうか」


「そうするか」


 マヨの言葉に、俺は静かにうなずいた。


「ミリアはいっぱい食べ歩きしてたから、あんまり腹減ってないだろ」


「いや、空いてるよ」


「空いてんのかい」


 俺はそんなやり取りをしつつ、ふと視線を右の高台の方へと向けた。


 霊王都の奥、城のさらに向こう。


 真昼の日差しに照らされ、一本の巨大な樹が浮かび上がっていた。


 今日は空気が澄んでおり、はっきりと見える。淡く光をまとい、空へと伸びる大樹。


「あれって……」


「あれは『アインの大霊樹』よ」


 マヨが答える。


「天神の祝福を受けたとされる樹。霊王国の象徴ね」


「へぇ……」


 俺はその大樹をボーッと見つめる。俺たちの間を、風が吹き抜けていく。


 その瞬間、遠くにあるはずの大霊樹の葉が、かすかに光を揺らしたように見えた。


 ――ドクン。


 胸の奥で、小さな鼓動が鳴る。


「……テンコ?」


 マヨの声に、ハッとする。


「いや……なんでもない」


 本当に、なんでもないはずだ。


 なのに。あの樹を見ていると、妙に落ち着かない。


 懐かしいような。それでいて、触れてはいけないような。


 微かに魂が共鳴している感覚だ。


「あそこ行ける?」


 ミリアが無邪気に聞く。


「どうかしらね。大霊樹は立派なダンジョンでもあるし、許可が必要よ」


「ダンジョン!?」


 俺は思わず食いついた。


「それ、面白そうじゃん」


 さっきまでの違和感が、好奇心に上書きされる。


 だが、もう一度だけ大霊樹を見る。


「行けそうだったら、明日行ってみよっか」


「……楽しみだな」


 俺はそう言って、視線を戻した。


「さっ、まずは昼飯食べに行きましょ」


 それから俺たちは、石畳をゆっくりと下りながら、昼食を求めて通りを歩く。


「テンにぃ、さっきのパンもう一個食べたい」


「おい、今から飯屋行くんだぞ?」


「別腹だもん」


「さっきもそれ聞いたわ」


 マヨが呆れたように肩をすくめる。


「でも確かに、あの酵母の香りは不思議でしたね。身体の奥が少し温かくなるような……」


「カタルシアは理論派なのか感覚派なのかわかんねぇな」


「両方です」


 ニコリと微笑まれ、俺は苦笑する。


 しばらく歩いていると、通りの先から香ばしい匂いが漂ってきた。焼いた肉と香草、それにスープの匂いが混ざっている。


「うわ、あれ絶対うまいやつ!」


 ミリアが尻尾をぶんぶん振りながら走り出しかける。


「こら、転ぶわよ」


「大丈夫だもん!」


 そう言った直後、石畳の段差に躓きかけるミリア。俺は反射的に襟首を掴んだ。


「ほらな」


「むぅ……」


「霊王国で初転倒は避けたいわね」


 マヨの一言に、みんながくすっと笑う。


 さっきまで胸に残っていたわずかなざわつきも、今は遠い。


 巡りだの、祝福だの、難しい話はひとまず置いておこう。


「まっ、確かにいい匂いだし、あの店入るか!」


「やったー!」


 暖簾代わりの淡い布をくぐりながら、俺はふと思う。


 今この穏やかな時間も、きっと大事な巡りのひとつなのだろう。


 そんなことをぼんやり考えながら、俺は仲間たちと一緒に、昼の喧騒の中へ足を踏み入れた。


少しでも、


「面白い!」「展開が気になる!」


と思ったら、ぜひ☆☆☆☆☆評価、感想で応援お願いします。


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〈主な登場人物〉


テンコ:神のゲームの主人公に選ばれた、普通の高校生。性格は厨二病で、抜けてるところもあるが、意外と頭はいい。


マヨ:大魔ミルキーウェイ神皇国の第一皇女。性格は真面目だが、皇女として過ごしてきた反動で素が出る場面もある。意外と間が抜けている。


ミリア:獣人の少女。とても活発で食いしん坊。強い。


カタルシア:紫髪のエルフの少女。人間で言う14歳くらいの見た目。とても誠実で真面目。

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