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『神』のゲームの主人公~突如巻き込まれた異世界ゲームで、最高のエンディングを目指します~  作者: トランス☆ミル
第五章 宗教国家と天神信仰編

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第35話 冒険の再開

 魔王城の朝は、思っていたよりも静かだった。


 俺が目を覚ましたのが夜遅かったので、マヨたちはまだ寝ている。

 

 戦の爪痕はまだ残っている。それでも、空は澄み渡り、どこか穏やかな光が差していた。




「忘れ物ない?」

 

 マヨが両手に荷物を抱えながら振り返る。


 今日はアンドロメダを去る日。今日からまた、冒険が始まる。


「大丈夫。ちゃんと確認した」


 俺は背負い袋の紐を締め直す。


 目的地は、マゼラン王国の次に行く予定だったスピリトゥス霊王国。帝国の同盟国だ。


 スピリトゥスはマゼランの西の隣国なため、まずアンドロメダからマゼランまでチェックポイントで飛ぶ。


「色々ありましたけど、やっと冒険を再開できますね」


「そうだな。イレギュラーが重なったが、もう大丈夫だろ!」


「それフラグよ」

 

 そんな話をしながらチェックポイントまで行くと、既にグランが立っていた。

 

 黒い外套を羽織り、腕を組んだままこちらを見ている。


 昨日の聖戦からあまり時間が経ってないというのに、その表情は以前よりもどこか落ち着いていた。


「もう行かれるのですか」


「あぁ。あの後、テルースと改めて条約を結んで、帝国も落ち着いたようだしな」


 グランは一瞬、視線を逸らし、そして小さく息を吐く。


「……ありがとうございます」


「お……我は何もしてないぞ。国民が救われたのは、其方の勇敢な行動だ」


 俺は自然とそう答えた。


 俺がやったのは、倒れて、眠って、目を覚ましただけだ。


 一瞬、グランは何か言いかけたが、結局口を閉ざした。


 俺たちは魔法陣の中に入る。


「……それでは、お気を付けて」


「其方もな、魔王様」

 

 グランはわずかに口元を緩めた。

 

 そして、淡い光が俺たちを包み込み、マゼランへと転移した。


(色々あったな……)


 転移する瞬間、アンドロメダでの出来事を思い出す。


 あの時、自分は確かに"何か"だった。だが、それは今の俺ではない。


「よしっ」


 光が晴れると、俺は気合いを入れ直す。


「外まで、お見送り致します」


 マゼランのチェックポイントに着くと、メイドがお出迎えしてくれた。


「行くわよ、テンコ」

 

 マヨの声に背を押され、俺は歩き出す。


 外に出ると、そこには久しぶりの光景が広がっていた。


 バグの余韻なのか、王都ベガの街道の人通りは少ない気もするが、平穏な街に戻っている。


「スピリトゥスまでどのくらいかかるんだ?」


「だいたい5日ってところね」


「スピリトゥスは初めて行くので、とても楽しみです」


「ご飯もおいしいかなぁ」


 そんな会話をしながら街を抜け、草原に出る。


「よし、こっから馬車で行くか」


 俺はそう言うと、インベントリから収納していた荷車を取り出した。


「わかりました」


 カタルシアも魔獣を召喚する。


 それから、俺たちは馬車に乗り込み、本格的に冒険を再開させた。




「テンコ。本当に何も思い出せないの?」


 しばらく野道を歩いていると、マヨが不意に尋ねてきた。


「ん?」


「過去のことよ。あんなに別人みたいになって、その別人みたいになってた記憶はあるのに、その時考えていたことは全部忘れちゃうなんて……」


 マヨの言葉に、俺は黙り込んでしまった。


 確かに、よく考えてみればおかしい。


 あの時の俺は、別人みたいになったというより、本当に別人になったように感じていた。


 誰か別の人が見ている光景を、一人称視点で見ているかのような、そんな感じだった。


「まぁ、そのうち思い出すさ」


 俺はそう短く答えると、ニコッと笑う。


「でもそのおかげで、みんなとこうして冒険ができてるわけだしな」


「……そうね。あのテンコよりは、今のテンコの方が良いわね」


「あのテンコさんは、ちょっぴりおっかないです」


「あたしも、あんな風になりたいなぁ」


 それを聞いてみんなも微笑む。


「まっ、今は難しく考えずに、スピリトゥスの話でもしようぜ!」


 そして、話題はスピリトゥスへと変わった。


「そうですね。みなさんは、スピリトゥスでなにがしたいですか?」


「う~ん……まずスピリトゥスってどんなとこなんだ?」


 俺がマヨに視線を向けると、


「スピリトゥスは精霊族や霊人族などの幽霊種が住む王国よ。そこまで大きな国ではないけど、自然豊かで、独特な雰囲気のある良い国よ」


 と、マヨは期待通りの情報を教えてくれた。流石は皇女様だ。


「幽霊種って、どんな姿なの?」


「聞いた話によると、共通して輪郭が淡く光っており、精霊族は背中に薄っすらと羽が生えているそうです。霊人族は人間とほぼ変わりません」


 博識なカタルシアも、マヨに続く。


「幽霊種は非常に友好的な種だと聞いたことがありますので、会うのが楽しみですね」


「なるほど~。また、新しい体験ができそうで、楽しみだな!」


 俺がそう言うと、みんなは笑顔でうなずいた。




 ――冒険を再開して、2時間くらい経った頃。


 馬車はゆったりと草原を進んで行く。


 ミリアは荷車の上でごろごろ転がりながら、空を見上げては「お腹すいた〜」を繰り返している。


「ミリア。朝ごはん食べてから2時間しか経ってないわよ……」


 マヨが呆れたように言うと、ミリアはぴょんと起き上がって反論。


「でも、 旅の間は別腹だもん!  テンにぃ、おやつ出して〜!」


「はいはい……これでいいか?」


 俺がインベントリから取り出したのは、帝国の菓子屋で買った蜂蜜入りクッキーだ。


 ミリアの尻尾がブンブン振れて、即座に飛びついてくる。


「テンコ。最近ミリアを甘やかし過ぎじゃない?」


「いや〜、なんかめんどい」


「育児放棄はダメよ!」


「育児って……」


 そんな会話をしている隣で、


「おいしいっ!  これ、スピリトゥスにもあるかなぁ?」


 と、ミリアがはしゃぐ。


 それを聞いて、


「霊王国の食べ物は、ちょっと不思議な味がすると聞いたことがあります」


 と、カタルシアは、はしゃぐミリアに伝えた。


「精霊族の住む土地は、マナが濃いですからね。食べ物にもその影響が出るそうです。花の香りがするパンとか、霧のようなスープとか……」


「う〜ん……よくわかんないけど、おいしそう!」


 無邪気なミリアにみんながくすくす笑う中、馬車は順調に進んでいった。


 そして、初日は特に何事もなく、夕暮れ時に適当な森の空き地で野営。


 焚き火を囲んで、マヨが作ったシチューを食べながら、スピリトゥスの話を延々とする。


「スピリトゥスは冒険者ギルドがないから、ダンジョンに行くには別の手続きが必要ね。帝都みたいにいらない場所もあるけど」


「ダンジョンかぁ。霊王国のダンジョンなんて、名前からして当たり間違いなしだな!」


「ですね!」


「いっぱいレベル上げよー!」


 そんな他愛ない話で夜は更けていった。




 2日目も平和だった。


 道中で小さな村に寄って補給をし、子供たちに囲まれて「冒険者さん!」と騒がれる。


 ミリアが得意げに尻尾を振って自慢し、カタルシアが優しく頭を撫でてあげる。


 俺はただニヤニヤ見てるだけだったけど、なんだかんだで居心地がいい。


 そして、3日目の昼下がり。


 草原が少しずつ丘陵に変わり、木々がまばらになってきたあたりで、俺の感覚が何かを捉えた。


「ん? みんな、ちょっと待って」


 馬車を止めて、俺は荷車から飛び降りる。


 前方、丘の向こうから、低い唸り声が聞こえてくる。


 魔物だ。数は5匹。


 体長2mはありそうな、灰色の毛皮に覆われた狼型。でも、普通の狼じゃない。


 体の輪郭が淡く光り、青白い独特なオーラを放っている。


「スピリットウルフ…… スピリトゥスに近いから、霊力の影響を受けた魔物ね」


 マヨが剣を構えながら説明する。


「霊力?」


「魔力や神力しんりょくと並ぶ、第三の力と言われているわ。詳しくは、王国に着いてからね」


 マヨはそう言うと、剣に水を纏わせる。


「弱い個体だけど、群れで来たら面倒よ。みんな、準備して」


「わーい、戦闘だー!」


 そして、久々の魔物との戦闘が始まった。


 ミリアが爪を輝かせて先陣を切る。


「くらえ!」〔魔獣の爪〕


 ミリアは一番手前の個体に飛び込むと、紫の爪を振り下ろし、一匹を薙ぎ払った。


 マヨが水魔法で2匹を牽制。カタルシアがみんなにバフをかけてくれる。


「さぁ、肩慣らしと行こうか!」〔ライトニングソード〕


 俺もみんなに続き、雷剣を振りかざし、稲妻の斬撃で魔物を倒した。


 ――バチバチッ!


 稲妻がほとばしり、魔物は淡い光を発しながら倒れていく。


「これで、トドメだー!」


 そして、最後の1匹をミリアが切り裂き、魔物を全部倒すことができた。


 カタルシアは、みんなに回復魔法をかけている。


「ふぅ……軽い運動になったな」


 俺はそう一息つくと、〔インベントリ〕からナイフなどを取り出した。


 戦利品は霊狼の毛皮と、ちょっと光ってる牙。何やら珍しそうなアイテムだ。


 マヨは「これ、スピリトゥスで売れるかもね」と満足げ。


 その後も道は穏やかだった。




 4日目の夜は、川辺でキャンプ。


 ミリアが川で魚を捕まえようとして転んでびしょ濡れになり、みんなで大笑い。


 カタルシアが優しく乾かしてあげてる姿が、なんだか微笑ましかった。


 そして5日目の朝、遠くに霧がかかった山々が見えてきた。


 どこか不気味だけど、優しい、独特な雰囲気を放っている。


「あれがスピリトゥスの国境ね。王都アインは国境を越えた先よ」


 マヨの言葉に、俺たちは馬車から身を乗り出す。


「よし……新しい国、新しい冒険だ!」


 俺は、心の中で小さく拳を握った。


 スピリトゥス霊王国――幽霊種の国で、帝国の同盟国。


 そこでは、一体どんな出会いが待っているのか。新たな冒険に向けて、俺たちは一歩ずつ進んで行った。


少しでも、


「面白い!」「展開が気になる!」


と思ったら、ぜひ☆☆☆☆☆評価、感想で応援お願いします。


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〈主な登場人物〉


テンコ:神のゲームの主人公に選ばれた、普通の高校生。性格は厨二病で、抜けてるところもあるが、意外と頭はいい。


マヨ:大魔ミルキーウェイ神皇国の第一皇女。性格は真面目だが、皇女として過ごしてきた反動で素が出る場面もある。意外と間が抜けている。


ミリア:獣人の少女。とても活発で食いしん坊。強い。


カタルシア:紫髪のエルフの少女。人間で言う14歳くらいの見た目。とても誠実で真面目。

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