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『神』のゲームの主人公~突如巻き込まれた異世界ゲームで、最高のエンディングを目指します~  作者: トランス☆ミル
第四章 大国の陰謀編

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第31話 譲れぬ思い

 アンドロメダにやってきて4日目――"聖戦"当日の朝。


 城内は、かつてないほどに慌ただしかった。


 回廊を駆ける足音。伝令の怒号。鎧の擦れる金属音。


 普段は重厚で静かな王城が、今はまるで巨大な戦場の前線基地のように騒然としている。


「陛下! お考え直しください!」


「行ってはダメです! 別の対策を考えましょう!」


 厚い扉の向こう――グランの私室から、重臣たちの悲鳴にも似た声が響き渡っていた。


 俺たちは、その部屋の前で足を止める。


 空気が重い。張り詰めすぎて、息をするだけで喉が軋むようだった。


「……止められてるみたいですね」


 カタルシアが小さく呟く。


「まぁ、当然だろう」


 俺も小さく返す。


 今回の聖戦は、名目こそ一騎打ち。だが実質は政治的な処刑台だ。


 扉の向こうで、怒声がさらに強まる。


「拒否なさってください! 聖戦など受けずとも、我らには数十万の兵が――」


「兵を動かせば全面戦争になりますぞ! 今は耐えるべき時です!」


 だが、その喧騒を断ち切るように、低く、静かな声が響いた。


「……耐えて、何を得る」


 その言葉で、室内が一瞬で静まり返る。


「奴らは神核兵器を使用すると言っているのだ。並の国なら余裕で滅ぼせる力を持った父上が、命を賭けなければ受け止めることができなかった兵器があるのは事実」


 淡々とした口調。怒りも焦りもない。だが、揺るがぬ覚悟だけが滲んでいた。


「私の意見は変わらぬ。今は、私が立つべき時なのだ」


 その一言に、重臣たちは言葉を失う。王が逃げた国は、いずれ瓦解する。威信を失った王権は、内からも外からも食い破られる。


 グランは、それを知っている。


 やがて、扉が静かに開いた。重臣たちが押し黙り、道を開ける。


 その奥に立っていたのは、漆黒の王族衣装を纏ったグランだった。


「お待たせいたしました」


 俺たちが部屋の中へ入ると、グランはそう言って頭を下げた。


「……少し、2人きりで話たいことがあります」


 俺は一歩前に出て、そう切り出した。


 重臣たちが息を呑み、視線が一斉にこちらへ向く。


 だがグランは、その反応を制するように小さく手を上げた。


「……わかりました。君たちは、少し席を外してもらえるか。」


 一瞬の躊躇の後、重臣たちは深く一礼し、静かに廊下へと下がっていく。扉が閉まると、城の喧騒が遠のき、室内には重い沈黙だけが残った。


 俺とグラン、2人きり。グランは装束の襟を正し、こちらを見据える。


「……それで。話とはなんでしょうか?」


 俺は一度息を整え、言葉を選ぶ。


「我としては――止めたい」


 はっきりと告げると、グランの眉がわずかに動いた。だが、否定も反論もない。


「魔神王として見れば、今回の聖戦は理不尽だ。勝っても負けても、国を削るだけの儀式に過ぎない。だが――かつての我と、先代魔王の意見を尊重するならば、止めるべきではないとも思う」


 言葉が室内に落ち、静かに広がる。


 グランは目を閉じ、ほんの一瞬だけ沈黙した。その間に、彼の背負ってきた年月と重圧が、確かに伝わってくる


「……理解してくださるのですね」


 低く、穏やかな声だった。


「理解は、している。納得は、まだだがな」


 俺は苦く笑い、続ける。


「だから条件がある。その戦いは、見届けさせてもらう」


 一拍置いて、俺ははっきりと言った。


「我を其方の従者とし、戦地へ連れて行って欲しい」


 しかし、グランは驚いた様子もなく、むしろ最初から想定していたかのように、静かに息を吐いた。


「……もとより、御一行様みんな連れていく予定でございました」


 その言葉に、俺はわずかに目を細める。


「そうか」


 そして俺は、そう短く応答した。


「ただし――」


 それから俺は一歩、グランへ近づく。


「もしもの時は、俺も王として――」


 一瞬だけ、グランの目が揺れた。


 だが次の瞬間には、いつもの静かな光を取り戻している。


「……心得ております」


 それ以上、言葉は不要だった。




 やがてみんなは、魔王城前の大広場に集まる。出立の時だ。


 集団術式の大魔法陣が展開される。


 城の大広場に展開された巨大な魔法陣が紫に輝き、3万の兵士たちが整然と並ぶ。


 黒の軍勢。魔人族特有の角や翼を持つ者、鬼人族特有の額から生えた角を持つ戦士団、魔法使いと魔導士が所属する魔導部隊。


 10人の従者の中にはラッツやアルフェ、アディルもいる。


 誰一人として騒がない。ただ静かに、王の背を見つめている。


「……行くぞ」


 そしてグランの静かな合図と共に、魔法陣が起動し、俺たちを含めた"見届け人"とグランはたちまちアンドロメダとマロンの国境前まで転移した。


 転移の光が消えた瞬間、空気が変わった。湿り気のない風が、荒野を渡る。


 土はひび割れ、草一本生えていない。


「……ここが、アンドロメダとマロン国境か」


 俺は小さく呟く。


 正確には、旧国境線よりさらに北。両国のどちらにも属さぬ、緩衝地帯。


 過去にも幾度か小競り合いがあったという、曰くつきの土地だ。


「3時間ほど進めば、指定された地点に着きます」


 隠密部隊の一人が淡々と告げる。グランはうなずくだけで、歩き出した。


 その背に、3万の兵が続く。足音が、乾いた大地を踏み鳴らす。鎧の擦れる音だけが、規則正しく響く。


 誰も口を開かない。これは戦争ではない。


 ——だが、ここで王が倒れれば。その瞬間に、全面戦争が始まる。


 俺は歩きながら、隣のカタルシアに小声で問う。


「魔力の流れはどうだ?」


「……静かすぎます。自然の流れが、どこか歪んでいる気がします。」


 聖戦。神王が神話を刻むための儀式。この場所自体が、既に"物語の舞台"に選ばれている可能性もある。


 バグとの戦いとは"重み"が違う。俺たちはそう感じながら、一歩ずつ戦場へと向かった。




 3時間の行軍は、異様なほど早く感じられた。


 やがて、荒野がわずかに開ける。その視界の先には、純白の軍勢が整然と並んでいた。


 白銀の鎧。金の装飾。掲げられた紋章旗は、天を仰ぐ翼と光輪。


 ――テルース神王国軍。


 純白の翼を持った天人てんにん族。並々ならぬオーラを放つ聖人族。


「あれが……!」


 俺たちは目を見開く。


 解析の結果、その数は、マロン王国兵に扮していたテルースの下級兵3万と、重臣らしき騎士が10人。


「状況はどちらも同じ……聖戦を掲げるだけあるわね」


 マヨがそう呟く。


 神王国軍に近づくごとに、感じる圧は大きくなっていく。


 そして、双方の距離が500mほどになると、グランは足を止めた。


 やがて、中央の軍列が割れる。


 その奥から、1人の男が歩み出る。長い銀髪。純白の王族衣装。背には薄く輝く光の翼。


(あれが……神王セレステ……)


 他とは一線を画す、圧倒的な存在感を放っている。


 年はグランと同じか、やや上に感じた。


(神王……どのくらいのレベルなんだ?)


 俺は無意識の内に、セレステを解析した。


 しかし、表示されたのは〈対象のレベルが20以上高いため、ステータスを表示できません〉という文字だけ。


 それはグランも同様だった。


(ッ!? ……やはり、別格。)


 俺は息を飲んだ。


「神王セレステ……」


 やがて、グランは静かに口を開く。だが、その奥には確かな怒りを感じた。


 グランとセレステはゆっくりと歩を進め、両軍のちょうど中央で止まった。


「魔王グラン」


 セレステの爽やかな声が響く。


「応じてくれたことに、まずは感謝を」


 グランは数歩前へ出る。黒の装束が風に揺れる。


「貴様は何をしたいんだ」


 冷たい声。親の仇を目の前にして、怒りが込み上げてきているのがよくわかる。


 そんなグランに、セレステは少し間をおいて話し始めた。


「――魔神王が復活したそうだね」


 グランの瞳が鋭く見開かれる。


「今、君の国が属する帝国は衰退している」


 セレステは静かに続ける。


「いるかいないかはわからないけど、5000年前、魔神王が封印されたというウワサが流れ始めた頃から、徐々にね。


 だが、衰退の理由は複合的だ。お人好しの皇国がバグ対策に人員を割き、国力を削ったこと。そして――君の父親の崩御」


 セレステ言葉に、グランの気配がわずかに重くなった。


「……何が言いたい」


「簡単なことだよ」


 セレステは一歩、踏み出す。


「抑止力が消えた。魔神王という"絶対的な力"が存在していたからこそ、世界は均衡を保っていた。だが、数千年前の大戦にも現れなかった。そして先日のバグ襲撃でも、姿を見せなかった」


 グランの拳が、軋む音を立てた。


「貴様ら……黙って見ていたのか。バグとの戦いを……!」


「当然だ。神は、見ている」


 わずかな沈黙の後、セレステは続ける。


「強大な力を持つはずの存在が、決定的な局面で現れない。それはつまり――魔神王は、もはや"機能していない"ということだ」


 その瞬間、空気が凍った。


(……せめて俺に力さえあれば……)


 その言葉は、誰よりも俺に深く突き刺さる。


「帝国は魔神王の名を掲げることで、辛うじて均衡を保ってきた。だがバグが発生し始めた。世界の秩序が揺らいでいる」


 そんな中、セレステは静かに結論を告げ始めた。


「ならば今だ。均衡が崩れた瞬間こそ、新たな秩序を打ち立てる好機。それが、私が聖戦を仕掛けた理由だ」


「……ふん。随分といい加減な理由だな」


 グランの声は低く、抑え込まれた怒気を孕んでいた。


 セレステは微笑を崩さない。


「これから始まるのは、力による均衡ではなく、神の導きによる統治だ」


 グランの背後で、魔王軍の魔力がざわりと揺らぐ。


 だが誰も動かない。これは聖戦。王同士の決闘だ。


 俺は息を呑む。セレステの言葉は甘いが、その本質は支配だ。


「選びたまえ、魔王グラン。ここで私に膝を折り、神の秩序に従うか。それとも――」


 セレステの背の光翼が、静かに広がる。


「正義を貫き、神話の一頁として散るか」


 荒野に沈黙が落ちた。


闇重あんじゅう魔剣・グラビティノックス〕


 グランはゆっくりと剣を生成する。漆黒の刃が、陽光を拒むように鈍く輝いた。


「答えは、最初から決まっている」


 大地が震える。グランの背中に、黒く大きな翼が現れる。


天光神槍てんこうしんそう・ウラノルクスピア〕


 セレステもまた、白銀の長槍を顕現させた。


「……残念ですね」


 グランの魔力と、セレステの神力しんりょくが同時に解放され、オーラが双方の間で激しくぶつかり合う。


 正義――譲れぬ思いを掛けた戦いが、今、始まろうとしていた――。


少しでも、


「面白い!」「展開が気になる!」


と思ったら、ぜひ☆☆☆☆☆評価、感想で応援お願いします。


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〈主な登場人物〉


テンコ:神のゲームの主人公に選ばれた、普通の高校生。性格は厨二病で、抜けてるところもあるが、意外と頭はいい。


マヨ:大魔ミルキーウェイ神皇国の第一皇女。性格は真面目だが、皇女として過ごしてきた反動で素が出る場面もある。意外と間が抜けている。


ミリア:獣人の少女。とても活発で食いしん坊。強い。


カタルシア:紫髪のエルフの少女。人間で言う14歳くらいの見た目。とても誠実で真面目。


グラン:アンドロメダ魔王国の魔王。真面目。誠実な性格。若い顔だが威厳がある。


セレステ:テルース神王国の神王。天神に対して歪んだ信仰心を持っている。身長194cm。

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