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『神』のゲームの主人公~突如巻き込まれた異世界ゲームで、最高のエンディングを目指します~  作者: トランス☆ミル
第三章 バグの脅威編

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第23話 決戦前夜

 ――協議会から時が経ち、作戦の決行前夜。


 俺たちは、後続部隊の陣地の一つである少し小高い丘の上で、共に戦う仲間たちと過ごしていた。


 遠くで虫の鳴く声が聞こえ、この後戦場になるとは思えないほど穏やかな時間が流れている。


 みんなは焚き火を囲み、晩酌を楽しんでいる。だが、これが最後になるかもしれない――誰も口にはしないが、同じ思いを胸の奥に抱いているようだった。


「おぉ、兄ぃちゃん。若いのに頑張るなぁ」


 俺に声をかけてきたのは、白髪交じりの男だった。


 年季の入った装備に、無数の傷跡。生き残ってきた者の風格がある。


「ありがとうございます。お互い頑張りましょう」


 そう返すと、男は豪快に笑う。


「おう! 最後まで生きてたやつの勝ちだ。死なないように頑張れよ!」


 その言葉に、周囲の人たちも小さく笑った。


 後続部隊に派遣されているのほとんどの人は、ベテランの冒険者たちだ。比較的若い俺に、励ましの言葉を投げかけてくれる。


『マゼラン王国特別精鋭騎士団』『大魔ミルキーウェイ神皇国しんこうこく天星軍』『アンドロメダ魔王国星影(ほしかげ)軍』の3軍から構成された、大帝国星芒(せいぼう)連合軍、通称『帝国軍』の主戦力は、みんな最前線となるであろう場所に配置されているため、冒険者にも招集がかかっていたのだった。


「ふぅ……」


 俺は少し輪から離れ、眺めの良い所まで行き、そこに腰を下ろす。遠くには帝国軍の陣地があるのか、微かな光が点々と見えた。


「なんだか落ち着かない……」


 バグとの戦いの不安に加え、大の大人たちに囲まれて気後れし、自然とため息が出る。


「いよいよですね、テンコさん」


 そんな俺を見兼ねたのか、カタルシアが優しく声をかけてくれた。


「私、テンコさんやパーティのみんながいるから、頑張れそうな気がします!」


 その言葉に、胸の奥が少し温かくなる。


「……そうだな! 俺もみんながいてくれて頼もしいよ」


「フフッ、そう言って貰えて嬉しいです」


 俺とカタルシアがそんな話をしていると、


「なんの話してるの?」


「いちゃいちゃ?」


 と、マヨとミリアもやってきた。


「みんながいてくれて良かったって話だよ」


 俺がそう言うと、マヨは少し視線を逸らし、


「……そうね。恐怖の厄災を前にしてるはずなのに、不思議だよね」


 と、話し出す。


「恐怖の厄災を前にしてもなんだか平気でいられる。怖いはずなのに、勇気が湧いてくるの。


 ――ありがとう」


「おぉ、お前の口から感謝の言葉が出るなんて、らしくない」


「あんた、私をなんだと思ってるわけ?」


 そんな他愛もない会話に、俺の不安はいつの間にか消えていた。


 目に映る仲間の笑顔。平和な光景。俺は自分の大切なものを、なんとしてでも守り抜くという決意を固め、覚悟を決めるのだった。




 ――一方その頃。ベガ郊外の平原に展開された帝国軍の陣地は、どこか賑やかさを帯びていた。その雰囲気は、昼間の最終作戦会議と打って変わっていた。


 焚き火の周りでは、王国騎士団の兵士たちが鎧を脱ぎ、杯を傾けている。


 皇国軍の兵は携行用の酒瓶を回し、魔王軍の兵は肉を焼き、豪快に笑っていた。


 種族も文化も、言葉遣いも価値観も違う。


 だが、この夜だけは関係なかった。


「まさか、魔王軍と肩並べて酒を飲む日が来るとはな」


「生きて帰れたら、妻と息子に自慢できる」


 まるで酒場のように、陽気な声があちこちから聞こえてくる。


 そんな中、ここの陣地の指揮を任された皇国軍の将校が杯を掲げ、声を張り上げた。


「いいか!  明日は地獄だ!」


 その言葉に、みんな引き締まる。


「だがな、今日ここにいる全員が、生きてこの夜を迎えられた。それだけで、俺たちはもう十分に誇っていい!」


「おうっ!」


「その通りだ!」


「これが最後の晩餐だと思って、今日は楽しめぇ!!」


「「おぉーー!!」」


 将校の合図と共に、杯が打ち鳴らされる。


 みんなは、来たる戦いへの不安を飛ばすべく活気をつけ、士気を高める。


 だが、全員が陽気なわけではなかった。


 王国騎士団の一団では、年若い騎士団員が緊張した顔で剣を磨いていた。


「怖いか?」


 そんな団員の隣にグラディウスがやってきて、酒を一口飲んでから尋ねる。


「ぐ、グラディウス様!? どうしてここに……」


「ちょっと体を動かしたくて、運動を兼ねて見回りに来てたのさ」


 グラディウスは、最も危険なバグ発生予定の中心地の陣地にいたが、そこから移動してきたらしい。


 グラディウスは団員の隣に腰を下ろすと、


「で、どうなんだ?」


 と、再び質問をする。


「……はい。でも、不思議と逃げたいとは思いません」


 団員はそう答えながら、拳を強く握った。


「それでいい。逃げたいと思わないなら、立派な騎士だ。大丈夫、ここには数十万という数の帝国軍の兵がいる。自信を持て」


「……はい!」


 グラディウスの言葉を聞き、団員の表情にわずかな光が宿る。


 そんな団員の姿を見て、グラディウスはニコッと笑うと、


「それじゃあ、またな!」


 と言って、またどこかへ行くのだった。




 やがて、一通り回り終えたグラディウスは、自分の陣地に戻る。


「みんなの様子はどうだった?」


 グラディウスが戻って来ると、フリールが話しかけてきた。


「みんな元気そうだったよ。まぁ、なんだか若いヤツらは昔の自分を見てるようだったけど……」


「同盟国のスピリトゥス霊王国と、その隣国のウェステリス王国の戦争か」


 その話にクロウも入ってくる。


「お前が英雄と呼ばれるきっかけとなった戦……あの時は大変だったな」


「英雄、ね……」


 グラディウスは小さく笑い、遠くを見つめた。


「あの頃の俺は、英雄なんて大層なもんじゃなかった。レベルも40そこらの、ただの若造だ」


 焚き火がパチリと音を立てる。


「剣を握る手は震えてたし、仲間が倒れるたびに足がすくんだ。正直、何度も逃げ出したくなったよ。


 だがな――」


 グラディウスは拳を軽く握る。


「逃げなかった。逃げられなかった。背中には、守るべき大切なモノがあったからだ。気づけば、戦場に立ち続けていた。生き延びて、剣を振るい続け……その結果が、今の俺だ」


 クロウは静かにうなずく。


「俺も、初めての戦場じゃ何もできなかった。隠密部隊は一瞬の気の緩みが命取りになる。だが俺は、震える足を隠すので精一杯だった」


「あぁ。だからこそ、あいつらの気持ちが分かる」


 グラディウスはそう言って、焚き火の向こうに視線を向けた。


「恐怖は消えるもんじゃない。だが……俺たちには仲間がいる。護るべき国がある。護りたい人がいる。


 みんながいるから、俺は強くいられる。アイツらもそのことに気づけば、きっと強くなって無事に帰れるさ」


 その言葉を聞いて、フリールはそっと息を吐き、静かにうなずいた。


「……あなたらしい考えね。さすが帝国最強の英雄だわ」


「ハハッ、英雄なんて柄じゃない。ただの団長だ」


 グラディウスはそう言って立ち上がる。


「さぁ、少し休むか。明日は忙しくなるからな!」


「そうね」


 みんなは明日に備え、休息をとる。あかりが消えた平原には、ほんのり冷たい風が流れ、まさに嵐の前の静けさと言える雰囲気だった。


 3軍は違えど、明日を迎える覚悟は同じ。生きて帰るか、死んで名を残すか。どちらにせよ、みんなに与えられた選択肢は、ただ進むのみだった――。




 夜明け前。酒の匂いは消え、陣地は一転して不安と緊張に包まれていた。


 みんなは鎧や装備を装着し、ガヤガヤと集まっている。


 焚き火は消され、魔導灯だけが淡く地を照らす。


「配置につけ!」


 そんな中、短く号令が飛ぶ。


 帝国軍の騎士部隊が整然と前進し、盾と武器が一つの壁を作り、その後方には、魔導士と聖導士で構成された伝導部隊がそれぞれ魔法陣と天聖陣を展開し、天賦力てんぷりょくの流れを整える。


 そして、隠密部隊は左右に展開し、地を這う影のように布陣した。


 誰一人、無駄口は叩かない。


 最初は、何も起こらない。草原を踏みしめる音だけが響く。


 だが、前線中央。わずかに空気が揺れた。


「来るぞ!!」


 誰かの叫んだその時、空間が歪む。そして次の瞬間、中心地から黒い領域が広がり辺りが薄暗くなった。一都市丸々飲み込むほどの大きさだ。


 領域内には、デジタル回路のような光の線が不気味に輝き、周りにグリッチのようなものが現れる。


 体の周りがノイズを放ち、ピリピリと痛む。


「こ、これが……バグ……!?」


 その、この世のものとは思えない異常な光景を目の当たりにした兵士たちは、次々に言葉を失った。


 しかし、そんなものお構い無しに、不気味なグリッチと閃光と共に、青白く光る化け物――ゴーストが出現した。


「ご、ゴーストです! ゴーストの出現を確認!」


「数、増加中!」


 ゴーストは、狙い通りグラディウスたちのいる場所を中心に、至る所からどんどん湧いて出てくる。


 人型、獣型、崩れた形のもの。騎士や魔法使いのような格好をしたものまでいる。


「構えろ!」


 騎士団は武器を構え、魔導士は詠唱し、聖導士は祈祷する。


 こうして、帝国軍とバグの戦いは幕を開けた。


少しでも、


「面白い!」「展開が気になる!」


と思ったら、ぜひ☆☆☆☆☆評価、感想で応援お願いします。


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〈主な登場人物〉


テンコ:神のゲームの主人公に選ばれた、普通の高校生。性格は厨二病で、抜けてるところもあるが、意外と頭はいい。


マヨ:大魔ミルキーウェイ神皇国の第一皇女。性格は真面目だが、皇女として過ごしてきた反動で素が出る場面もある。意外と間が抜けている。


ミリア:獣人の少女。とても活発で食いしん坊。強い。


カタルシア:紫髪のエルフの少女。人間で言う14歳くらいの見た目。とても誠実で真面目。


ライト:マゼラン王国の国王。優しく真面目な性格をしている。


グラディウス:帝国の英雄と言われる剣士の男。マゼラン王国騎士団の団長。


ソール:寡黙な性格の槍士の男。マゼラン王国騎士団の副団長。


フリール:お姉さん気質な魔法使いの女。マゼラン王国騎士団副団長兼伝導士部隊隊長。


クロウ:真面目で冷静沈着な性格の隠密兵の男。マゼラン王国騎士団副団長兼隠密部隊である影騎士部隊隊長。

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