表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『神』のゲームの主人公~突如巻き込まれた異世界ゲームで、最高のエンディングを目指します~  作者: トランス☆ミル
第三章 バグの脅威編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/55

第22話 選択

 緊急会議の翌日。皇宮の地下にある円卓会議室で、帝国協議会が開かれた。


 ここに集まるのは、帝国の代表のみ。つまり"俺の正体を知っている者"だけだ。


 ちなみにマヨや他のメンバーは、皇宮の客間で留守番をしている。


「なんだか緊張するなぁ。代表の前では威厳ある魔神王でいなくてはならないし……」


 そんな風にブツブツ言いながら会議室に向かっていると、


「おぉ、これは魔神王陛下。お初にお目にかかります」


 と、後ろから低い男の声がした。とても威厳のある声だ。


 俺がびっくりして振り返ると、そこには黒い王族衣装を着ている若い男性が立っていた。


 頭には小さな悪魔の角のようなものが生えており、身長が高い。180cm以上ある俺より20cmは高そうだ。


「え、えっと……あぁ、いや、ん゛ん゛っ、初めまして」


(うぉぉ、あっぶねぇ! ここにいるってことは代表だよな? 見た目からして魔王グラン=アンドロメダか? 不意打ちだったけど、なんとか対応できたぁ〜)


 俺はすぐ魔神王モードに切り替え、気を引き締める。


「そのお姿、まさに父上の語った魔神王陛下そのものでございます」


「父上?」


「えぇ。もう亡くなってますが、陛下がお眠りになられる以前の姿を知る、世界でも数少ない存在でした。父上の託した陛下の忠義を直接示せる日が来るなんて、史上の誉れです」


 グランはそう言うと、頭を深く下げた。


 だが、


「しかし――」


 と、グランは言葉を続ける。


「髪と目の色が違いますね。私のお城にある絵画では、白い髪に青い目だったのですが、今の陛下は黒い髪に赤い目です。力を失った影響でしょうか?」


 それを聞いた俺は、少しビクッとする。


(なんだって、見た目が違うなんて初耳だぞ。やはり力を失ったからなのか?)


 俺は焦りながらも、


「あ、あぁ、そうかもな」


 と、少し濁して返す。そして、


「そうですか。おっと、少しお喋りが過ぎましたね。さぁ、会議室へ向かいましょうか」


 というグランの言葉で、俺はなんとか事なきを得て、会議室へと向かった。




 会議室につくと、俺たちは扉を開け中に入る。


 天井には星を模した紋様が淡く輝き、壁面には各国の象徴が刻まれている。


 席につくと、先に来ていた皇帝がゆっくりと立ち上がり、深く一礼し言葉を述べた。


「魔神王陛下。本日は帝国協議会へのご臨席、誠に感謝申し上げます」


 その隣には、朝早くにチェックポイントから転移し、準備をしていた国王ライトもいる。


 皇帝サクルム、魔王グラン、国王ライト、そして魔神王テンコの4人が円卓を囲み、協議会が始まった。


「早速ですが本日の議題は、各地で確認されているバグへの対処についてでございます」


 サクルムのその言葉に、室内の空気が一段と張り詰める。


「我々の帝国は、全盛期より力を失っています。現状、通常の軍事行動、伝導部隊を含め、既存の戦力では完全な対処が困難である可能性が高いです」


 サクルムは淡々と告げる。


「私の魔王軍を持ってしても、不安は拭いきれませんね」


 それに続き、グランも懸念点をあげた。


「よって本協議会では、魔神王陛下の御意思を伺いたい」


 その瞬間、全員の視線が一斉に俺へと向けられた。


 グランが低い声で口を開く。


「単刀直入にお聞きします。陛下が今回の戦いに関わられるか否か。それが、我らの方針を決定づけます」


 ライトもそれに続く。


「陛下が参戦されれば、我々としても心強い限りです。しかし――」


 ライトは真剣な眼差しで俺を見て、言葉を繋ぐ。


「同時に陛下が前線に立たれることは、取り返しのつかない危険を孕みます。」


 その言葉に、みんなは沈黙した。


 そんな中、俺はは静かに口を開く。


「……現在の我は、完全なる魔神王ではない。かつてのように、世界を一振りで制圧する力は失われている。もし戦場に立ち討たれれば、死んでしまうかもしれない。それは、魔神王という存在の完全な消滅を意味する」


「陛下……」


 俺の言葉を聞いて、サクルムの表情が僅かに歪む。グランは腕を組み、目を伏せた。


 俺はそんなみんなを見て、話を続ける。


「それでも……我が戦場に立てば、世界は動く。恐怖は希望へと変わり、迷いは覚悟へと変わる」


「陛下。参戦されぬという選択もございます。陛下が後方に留まり、我らが盾となる。それもまた、世界を守る一つの形です」


 ライトは遠回しに、俺の参戦に反対の意を示す。まぁ、当然と言えば当然だろう。


「陛下を失うわけにはいかぬ。それは、この世界そのものを失うに等しい」


 会議室に、再び沈黙が落ちる。


 その中心で、俺は考える。


(バグとの戦い……おそらくこれはゲームで言うところの『ルート分岐』。参加するか否かでエンディングが大きく変わるはずだ)


 参加するか、しないか。それは単なる戦力の話ではない。魔神王が世界にどう関わるかという、存在の在り方そのものだった。


(この場合、どちらが正解なんだ? 負けイベの可能性だってある。できれば時間が欲しいところだ)


 俺は少し沈黙した後、


「ゴースト出現までの猶予はどのくらいだ?」


 と、尋ねる。


 それに対しサクルムは、


「文献によると、ゴーストの発生は予兆から決まって3日後。なので、猶予はあと2日ほどでしょうか。」


 と、答える。準備期間も考えると、今日中に結論を出さなければいけないようだ。


(力がないと言っても、俺のレベルは40程度。レベルだけなら騎士団の中でも上位クラスだ。ゴーストだけならなんとかなるだろう。しかし――)


 俺は少し思考を巡らせる。


(問題はアレスの発生。約1500年前の文献には2カ国を滅ぼした後、消滅したと書かれていたらしいから、もしもの場合でも逃げ切る事ができれば生き延びられるかもしれない。ダサい考えだなんて言ってる暇はない。死んだら終わり。今は生きるための最善の選択を……)


 そして俺は考えた結果、


「わかった。我も参戦する」


 と、結論を出す。


「国のため、世のため、人のため、魔神王として共に戦おう。ただし、前線には立たぬ。足手まといの我は第二線、後続部隊としてフォローに徹する」


 その言葉を聞いた瞬間、円卓を囲む3人の表情が一斉に変わった。


 最初に反応したのは、サクルムだった。


「……魔神王陛下」


 その声には、安堵と覚悟の両方が滲んでいた。


「御身が戦いに関わられるという御決断、確かに承りました。しかも第一線ではなく、そのフォローに徹される、それは世界にとって最善に近い選択でしょう」


 サクルムが話し終えると、続いてライトが静かに立ち上がる。


「陛下。前線に立たれぬという判断、正直に申せば胸を撫で下ろしました」


 そう言ってから、真っ直ぐに俺を見る。


 そして最後に、グランが腕を解き、低く笑った。


「我が魔王軍の一部は、陛下の後方支援を最優先事項とする。陛下に刃が届くことは、このグランが許さぬ」


 3人の言葉を受け、会議室に張り詰めていた空気がわずかに和らいだ。だが、それは緊張が解けたわけではない。


 その後も協議を進め、最後にサクルムが話をまとめる。


「バグは最初の予兆が発生した場所を中心に発生する。今回は運よくその場所がわかっているため、戦いの前線となるベガ南西部の平原と、その周辺に帝国軍を配置する。


 そして、陛下は後続部隊として参戦されますが、万が一の場合はすぐ撤退できるよう後方支援の強化を徹底する。余計な混乱を招かぬよう、民や兵士には『陛下は表に出ず、皇宮内から国を護られます』と伝えるように」


 サクルムは話し終えると、一呼吸置いてから、


「帝国協議会は、これをもって閉会とする。私とグラン殿は、この後即座に軍を整え、いつでも対処できるようマゼランへと移動し、再び作戦会議を開くとしよう」


 と、協議会を閉会した。


 その言葉と同時に、俺たちは揃って立ち上がり、一礼する。


 こうして、帝国協議会は終わりを告げた。




 客間に戻ると、みんなが出迎えてくれた。


「はぁ~、緊張したぜ」


 協議の時の威厳ある声も、魔神王としての言葉遣いも、今は影も形もない。


 ここにいる時は、『テンコ』としての俺。心から安堵の感情が湧き上がってくる。


「協議会はどうだったの?」


 しかし、マヨがそう切り出すと、俺は少し視線を下げ口を開いた。


「俺は当然ながら参戦することにした。だが正直、何が起こるかわからない。だから、お前たちは無理についてくる必要はない。どこか安全な場所にでも避難して――」


「何を言ってるの、テンコ」


 俺が話していると、マヨが言葉を被せてくる。


「私たちはあなたの従者よ。危険だから離れるなんて、選択肢にないわ」


 それに続き、カタルシアとミリアも言葉を繋ぐ。


「テンコさんが行くのなら、私たちもついて行きます!」


「あたしもテンにぃと戦いたい!」


 迷いのない声に、胸が熱くなる。


(……本当に、敵わないな)


 俺は小さく笑って、頷いた。




 夜。みんなが寝静まった客間の寝室で、俺は天井を見つめていた。


 豪奢な部屋で、ベッドもふかふかだ。


 だが、少しも落ち着かない。


「……はぁ」


 俺は小さく息を吐く。


(参戦するって、言っちまったな……)


 頭の中で、あの瞬間が何度も再生される。


 3人の視線。沈黙。決断。


 そこそこの力があるのに参戦しないのは論外だ。かと言って、前線で出しゃばるほどの実力は持ち合わせていないため、後続部隊は最善の選択のはず。


 だが、うまく逃げたようにも聞こえたかもしれない。


「……怖い」


 俺はそう不満を漏らす。


 この世界に染まって錯覚していたが、俺の本質は平和な時代の平和な国に生まれただけの、ただの高校生だ。命を賭けた戦いとか、普通ならそういうのは怖いに決まっている。


 しかし――


(なんだろうこの気持ち……今までにも命を賭けるシーンなんていくらでもあった。だがその時は、恐怖心はあれど戦闘の楽しさや高揚感の方が大きかったはず。精神も完全にこの世界に適応しているというのに……なぜ今……?)


 心の奥にある違和感を、どうしても拭いきれない。


(この恐怖は、魔神王の――)


 そうして異世界での日々は、また1日と過ぎていくのであった。


少しでも、


「面白い!」「展開が気になる!」


と思ったら、ぜひ☆☆☆☆☆評価、感想で応援お願いします。


ブックマークがいただけると、大変励みになります。



〈主な登場人物〉


テンコ:神のゲームの主人公に選ばれた、普通の高校生。性格は厨二病で、抜けてるところもあるが、意外と頭はいい。


マヨ:大魔ミルキーウェイ神皇国の第一皇女。性格は真面目だが、皇女として過ごしてきた反動で素が出る場面もある。意外と間が抜けている。


ミリア:獣人の少女。とても活発で食いしん坊。強い。


カタルシア:紫髪のエルフの少女。人間で言う14歳くらいの見た目。とても誠実で真面目。


ライト:マゼラン王国の国王。優しく真面目な性格をしている。


グラン:アンドロメダ魔王国の魔王。真面目。誠実な性格。若い顔だが威厳がある。身長205cm。


サクルム:大魔ミルキーウェイ神皇国の皇帝。マヨの父。しっかり者。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ