第21話 緊急会議
「それで……あなたたちは何者なんですか?」
馬車に乗り街に戻っている途中、俺は助けてくれた3人組に正体を尋ねる。
すると、剣士の男が口を開いた。
「あぁ、オレたちは王国騎士団だ」
「お、王国騎士団?」
「正式には『マゼラン王国特別精鋭騎士団』。オレはその団長をやってる」
「え、だ、団長さん……?」
その自己紹介を聞いて、俺が驚いていると、
「団長って……ぐ、グラディウスさんですか!?」
と、マヨが声を上げた。
「おぉ、マヨ様、憶えてくださっていたんですね」
「鎧姿しか見たことなかったから気づかなかったわ」
どうやらマヨは、この団長のことを知っているらしい。
「どんな人なの?」
「グラディウスさんは、『聖なる武神』の二つ名で知られる帝国最強の剣士。十数年前、帝国の同盟国が戦争にあった際にその国を救った英雄よ」
「よしてくださいよ、英雄だなんてぇ。もったいないお言葉です」
グラディウスはマヨの紹介を聞いて、まんざらでもない様子。
「そ、そんなにすごい人なんだ。それで、他の2人は……」
「俺は副団長のソールだ」
俺が視線を向けると、それに応えるように槍士の男が短く話す。
それに続き、
「私は副団長兼『伝導騎士部隊』の隊長を務めているフリールよ」
と、魔法使いの女も自己紹介をした。
「そ、そんなすごい人たちがなぜこんなところに……?」
自己紹介を聞いた俺は恐る恐る尋ねる。だが、本当はなんとなく察しがついていた。
「それは――」
グラディウスが、少し表情を引き締めて話し始める。
「見ての通り、つい先程バグの予兆が確認された。それについての緊急会議の招集がかかり、君たちを探しに来たってわけだ」
「ちょうどマヨ様も来ていることだし、王様からマヨ様にも会議に出て欲しいと伝言を預かっております」
「なるほど……それで探しに来たら、たまたま俺たちがピンチだったと言うわけですか」
俺は納得したようにうなずく。そして、やはりあの暴走がバグの予兆だとわかり、馬車内の空気が一気に重くなった。
「まさか、冒険を初めてから3週間足らずで……」
(初日のフラグを回収したな……)
俺は初日のマヨの発言を思い出し、心の中でそう呟く。
それから、グラディウスは話を続ける。
「今回の予兆発生は異常だ。ちゃんとした記録が残っているここ3000年の歴史を振り返っても、バグ発生から次の発生まで、最低3、400年は間隔があった。
しかし、今回の発生は前回からたった130年ほどしか経っていない」
グラディウスの真剣な表情が、今回の事態の深刻さを物語っている。
「バグ……まさか生きて立ち会うことになるとはね。長年調査は進められているけれど、原因は不明。既存の魔法理論では説明がつかない現象ばかりで、もうお手上げよ」
それからフリールも続き、ハァーッとため息を着く。
そんな中、ソールが静かに口を開いた。
「唯一わかっているのは、バグ発生時に現れるエラーとゴーストの倒し方だけだ」
「倒し方……? あぁ、気になってたんです! 俺たちではダメージを与えられなかった魔物を、どうやって一撃で倒してのか」
ソールの言葉に、俺は少し食い気味に質問する。
ソールは少し間を置き、ゆっくりと話し始めた。
「さっきのアレは通称エラーと呼ばれ、ゴーストと同じく実体がないが干渉はできるという、とても厄介な敵だ。だが、そんな奴らにも弱点がある。それは、『コア』と呼ばれるヤツらにとっての心臓だ。そこだけは実体があり、破壊することで倒すことができる」
(なるほど。つまり、当たり判定が小さいだけで無敵ではないのか)
ゴーストは無敵ではないと知り、俺は少しだけ心が軽くなった。
さて、そんなことを話していると、街に戻ってきた。
王宮に着くと、そこにはたくさんの馬車が並んでいる。
「さぁ、詳しい話は王宮で話しましょう」
フリールがそう言うと、みんなは馬車を降りて王宮の会議室に向かった。
王宮内は、どこか重い空気が流れている。
やがて、俺たちは王宮の地下の奥深くにたどり着く。
重厚な扉を2つ抜けた先にある会議室は、張り詰めた空気に包まれていた。
円卓を囲むように、マゼラン王国の重臣、王国騎士団の上級騎士、伝導士たちがずらりと立っている。
そして、椅子には既に3人ほど座って待っていた。
「遅くなって申し訳ありません」
グラディウスはそう言うと、円卓の椅子に座り、ソールとフリールもそれに続く。
俺たちからはマヨが代表として椅子に座り、会議が始まった。
「改めて集まってくれて感謝する」
中央の少し高く設えられた椅子に座っていた国王ライトが、静かに口を開いた。
「今回の議題は、皆さんご存知の通りバグの予兆発生についてです」
その言葉に、重臣たちの表情が一斉に引き締まる。
「本日未明、この王国を含めた6ヶ国でバグの予兆が確認されました」
そう言って、ライトは視線をグラディウスへ向ける。
「詳細をグラディウス騎士団長、お願いします」
「はっ」
ライトの右隣に座っていたグラディウスは立ち上がると、引き締まった声で報告を始めた。
「この度、王都ベガ南西部で、団員が最初のエラー出現を確認しました」
「被害はあったのか?」
ライトの左隣に座っていた、第一王子らしき人物が問う。
「市街地への被害は無し。小規模な交戦は発生したが、拡大は防ぎました。
エラーについての詳細は、記録の通り内部に実体化した中核部位を持ち、破壊すれば消滅します。ですが位置は極めて不安定で、高度な魔力探知能力を持っていないと把握が困難です」
「なるほど。報告ご苦労だった」
それを聞いて、ライトは眉をひそめる。
グラディウスが話終わり席に着くと、ソールとグラディウスの間に座っていた黒装束の男が、スっと手を挙げた。
「どうした? クロウ」
王子がその男に視線を向ける。
黒装束の男――クロウは、立ち上がると低い声で話し始めた。
「今回のバグ発生は、かなり危険です。その理由は、このミルキーウェイ皇国の衰退がウワサされている今、帝国が被害を受けたとなれば、その隙を狙って敵国が攻めてくる恐れがあるからです」
「なるほど……確かにそれは盲点だった」
クロウの鋭い指摘に、ライトは真剣な表情で手を顔の前に組んだ。
クロウは続ける。
「現在、我々『影騎士部隊』が各国の動向を伺っておりますが、今のところ不審な動きは見られません。ですが、これは時間の問題かと」
「これは予想以上の緊急事態ですね」
クロウの話を聞き、フリールはそう言って視線を伏せた。
そしてしばしの沈黙の後、マヨが口を開く。
「周期の短縮についてはどうお考えでしょうか?」
その問いに、ライトは重くうなずく。
「記録上、バグの発生間隔は最低300年。だが、今回は前回から約130年しか経っていない」
「明らかに異常だね」
「前提のない初めての状況……今後何が起きるかわからないわね」
マヨの言葉に、会議室の空気がさらに張り詰めた。
「最も警戒すべきはアレスの発生だな。記録によると過去に二度発生しており、一度目は魔神王の一柱がいると言われている、ビーステリア帝国の軍隊によって倒されたが、二度目は2ヶ国が滅んでいる」
「考えたくもないですね」
王子の言葉に、ソールがため息をついた。
それから会議は続き、今回の報告を一通り確認した後、
「――今日の会議は、ひとまずここまでとしよう。情報はまだ不足している。憶測で動けば、無用な混乱を招くだけだ。明日、正式に帝国の代表と合同で協議会を開く」
と、ライトが告げる。
「帝国直々、ということですか」
王子が確認するように言うと、ライトはうなずいた。
「うむ。バグの可能性、これは一国だけで抱える問題ではない」
その言葉に、重臣たちも黙って同意を示す。
「本日集まった者たちは、各自持ち場に戻り、警戒を強めてほしい。騎士団は王都周辺の巡回を倍に、伝導士たちは探知網の再構築を急ぐのだ」
「「はっ」」
それを合図に、会議は解散となり、重臣や騎士たちが次々と重い足取りで部屋を後にしていく。
俺たちもその流れに従いながら、胸の奥に広がる嫌な予感を押し殺していた。
(バグ……何もわからなかった。なんの力もない俺は、どう立ち回ればいいんだ……)
話を聞けば聞くほど、事態は想像以上に大きい。
会議室を出る直前、グラディウスがこちらを見て小さく笑った。
「巻き込まれたな、少年」
「……そうみたいですね」
俺はそう言って、どこかぎこちなく笑い返す。
心に大きな不安を抱えたまま、俺は静かに王宮の廊下を進んでいった。
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〈主な登場人物〉
テンコ:神のゲームの主人公に選ばれた、普通の高校生。性格は厨二病で、抜けてるところもあるが、意外と頭はいい。
マヨ:大魔ミルキーウェイ神皇国の第一皇女。性格は真面目だが、皇女として過ごしてきた反動で素が出る場面もある。意外と間が抜けている。
ミリア:獣人の少女。とても活発で食いしん坊。強い。
カタルシア:紫髪のエルフの少女。人間で言う14歳くらいの見た目。とても誠実で真面目。
ライト:マゼラン王国の国王。優しく真面目な性格をしている。
グラディウス:帝国の英雄と言われる剣士の男。マゼラン王国騎士団の団長。身長178cm。
ソール:寡黙な性格の槍士の男。マゼラン王国騎士団の副団長。身長174cm。
フリール:お姉さん気質な魔法使いの女。マゼラン王国騎士団副団長兼伝導士部隊隊長。身長171cm。




