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『神』のゲームの主人公~突如巻き込まれた異世界ゲームで、最高のエンディングを目指します~  作者: トランス☆ミル
第三章 バグの脅威編

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第18話 不穏な影

「では、お気をつけて」


「はい、お世話になりました」


「ルシアもしっかりやるんですよ」


「頑張ります、おじい様」


 翌朝。俺たちはレインに見送られ、ルミナスの街を出た。


 行き先は隣の小国、『マゼラン王国』だ。マヨが言うには、行く価値の高い国らしい。


「あの~、思ったんですけど歩きで行くんですか?」


 街を出てすぐに、カタルシアが少し戸惑ったように口を開いた。


「あっ。そう言われてみれば、馬車とかそういうの考えてなかった」


 馬車に馴染みのない俺は、移動手段がすっかり頭から抜けていた。


「盲点だったわね」


 どうやらマヨも気づいてなかったようだ。意外と天然らしい。


「どうするか……荷車なら俺のスキルでなんとかなるが、生物はちょっと無理だぞ」


「それならいい考えがあります」


 俺が悩んでいると、カタルシアが提案をしてきた。


「なんだ?」


「私の召喚魔法で召喚獣を出せます。この召喚獣は戦闘には向きませんが、荷車を引くことはできます。ただし制限があって、1日1回6時間までとなっていますが」


「なるほど、召喚獣か……6時間もあれば十分だな。足りない分は俺が引いてやるよ。速度は落ちるけど、疲労がない分夜でも安全に移動できるしね」


「それじゃあ決まりね」


 俺たちの作戦はこうだ。まず速度の速い召喚獣で6時間移動した後、休憩などをしながら、次の召喚まで俺がゆっくりと引っ張っていく。こうすることで、圧倒的に早く目的地にたどり着ける。


「よしっ……」〔創造クリエイト:荷車〕


 俺は手をかざし、スキルを発動する。


 食料や色々なアイテムを持ち運べるよう、少し大きめの荷車を創造した。中には申し訳程度に座るための段差がある。


「おぉ、結構いいじゃない」


「改めて見ると、すごいスキルですね」


「まさに、冒険者の馬車って感じだろ!」


 出来上がった荷車を見て、マヨもカタルシアも満足な様子。


 そして、


「それでは私も。来たれ、錚々(そうそう)たる異界の影たちよ。我が呼び声に応じ、その姿を此処に顕現せよ――召喚!」〔ナイトホース〕


 と、カタルシアが詠唱し、大きな魔法陣から3体の黒い馬のような魔獣が現れた。


 その魔獣は夜のように綺麗な色をしており、髪や尻尾などの毛並みが、まるで星空のようにキラキラとたなびいている。


「うわ~、大したもんだなぁ」


「キレーなお馬さんだねぇ」


 俺たちの反応にカタルシアは、エヘヘッと照れた表情を浮かべた。


「んじゃ、改めて出発しますか」


 それから俺たちは馬車に乗ると、マゼランに向けて再び進み始めた。


「おぉ、この馬車思ったより速いな」


「そうですねぇ。風が気持ち良いです」


「さいこー!」


 平坦な野道を馬車が加速していく。時速2、30kmは出てそうな速さだ。


 心地よい風が俺たちの間を通り抜ける。


「このスピードなら1週間もかからずに着きそうだな。向こうに着いたら何しようか?レベル上げ以外で」


「う~んそうねぇ……まぁ、まずは国王に挨拶しないとね。マゼラン王国はミルキーウェイ皇国の従属国だから、国王とは顔見知りなの。それに、いずれ関わることになるでしょうし」


 どうやらマゼランはミルキーウェイと親交が深いらしい。


「確かに、お忍びで行くって訳でもないしな。でもそんな急に行って大丈夫なのか?」


「私が冒険に出てるのは、パパが魔法通信で報告済みだから大丈夫よ。それにマゼランとミルキーウェイは姉妹国でもあるから、隣人を訪ねる感覚で行けるのよ」


「ほ〜、意外と軽いノリで行けるんだな」


 そんな風に雑談をしながらどんどん進んでいく。




 そして俺たちは、野道の次に森を進み、岩肌の見える山を登りながら5時間と少し経ったところで、小さな川を見つけた。


「そろそろ6時間経つし、この辺で休憩でもするか」


「そうしましょうか」


 川のほとりに馬車を止めると、河原の岩に腰掛け、レインに持たされたサンドイッチの入った包みを広げる。


 今日の昼食だ。


「なぁ、マゼランってどんな国なんだ?」


 俺は食べ終わると、マヨにそう尋ねる。


「マゼラン王国ねぇ……ひと言で言うなら"可愛い国"かな」


 マヨはサンドイッチを飲み込みながら、話し始めた。


「可愛い国?」


「う~ん、説明するの難しいけど、ミルキーウェイって凛とした雰囲気でしょ?あれとは真逆って感じ」


「へぇ~、想像つかねぇな」


 するとマヨの話を聞いて、カタルシアがうなずく。


「マゼランは観光の国でもあります。他に類を見ないほど魔力にゆかりがある地で、魔法の歴史も古く、ルミナスみたいに教会や神殿もあるんです。


 そして街は大気中の魔力濃度が非常に高く、夜になると月明かりが散乱して、淡く光るんですよ。おとぎ話の中みたいで、小さいころ両親に連れられて、初めて見たときは感動しました」


「おぉ! それは楽しみだなぁ」


「今の時期はちょうど満月付近なので、晴れていればきっと見れますよ!」


 カタルシアはニコッと笑う。その笑顔を見て、俺も自然に笑みを浮かべた。


 その後も少しゆっくりしていると、ナイトホースたちは召喚時間を終えたのか、光の粒になって消えていく。


「んん~……よっし、ここからは俺が引く番か」


 俺は背伸びをすると荷車の前に回り、取っ手を掴む。弱体化しているとはいえ、荷車を引くには十分な力があるため苦ではない。


「無理しないでくださいね?」


「大丈夫だよ。それに少しずつ体を慣らしていかないといけないしな」


 そう言って歩き出すと、荷車はギギッと音を立てながらゆっくり進んでいく。


 森の葉擦れの音、川のせせらぎ、鳥の鳴き声。昼下がりの空気は、少し暖かく心地よかった。




 その日の夜。俺たちは少し小高い丘の上に火を起こし、晩ご飯を食べる。保存しておいた鳥系の魔物の肉だ。


「今日もお疲れ様」


 俺は労いの言葉をかけながら、肉にかぶりつく。


「テンコさんも疲れたんじゃないですか?」


「うーん、なんというか、俺は人間じゃないから疲れてはないんだよな。お腹も空かないから、ただ娯楽のために食べてるようなもんだし」


 生物という枠組みではない俺は、睡眠、食事、呼吸、排泄といった行為が必要ないため、疲労が存在しないのだ。


 俺の体がどうなっているかは、俺が一番知りたい。


「そ、そうだったんですね」


「まぁ、テンコは良く言えば神、悪く言えばバケモノだからね」


「バケモノって……まぁ、バケモノか」


(なんせ呼吸器系がないのに言葉を発せるからな)


 正直疑問に思ってはいたが、この辺の矛盾は異世界モノ特有のご都合設定だということにして、それ以上気にする事はなかった。


「それにしても、魔物の肉って案外美味いんだな」


「そうですね。普通の動物と違って戦闘に特化してるからでしょうか?まぁ、魔力に浸されていますから、一般人は食べれませんけど」


「あ〜、早く王国のごちそう食べたいなぁ」


「よし! じゃあマゼランに着いたらまず観光して、うまい飯食って、それから国王に挨拶だな!」


「順番逆じゃない?」


「まぁまぁ、細かいことは気にすんな!」


 そんな他愛もない掛け合いをしながら、晩ご飯を食べ終わると、俺たちは再び目的地へと歩みを進めた。




「――ねぇ、みんな」


 しばらく進むと、不意にマヨが口を開いた。


「もし……もしもこの冒険が終わったら、その後どうしたい?」


「ん? なんだよ急に」


 突然の空気に俺は少し困惑する。なんだかいつものマヨらしくない。


「いやっ、なんでも。ただ、この冒険も永久に続く訳じゃない。目的が完遂されたら、その後どうなるのかなって、ちょっと思っただけ……


 まだこの世界でたった16年しか生きていないけど、こんな素晴らしい経験は後にも先にもないなって、そう感じたの……」


 マヨの言葉に、カタルシアもミリアも笑っていた。


「私もです!会って少ししか経っていませんが、みんなと過ごすのは夢のような時間です」


「あたしも、みんなと冒険できて楽しいよ!」


 荷車から聞こえてくる会話は、俺の足取りを軽くする。カタルシアもミリアも暗い過去を持っているだけに、よりこの日常がかけがえのないものになっているのだろう。


 だからこそ冒険の終わり……俺はそんなものがあると、思いたくなかった。


「……この冒険は終わらない」


 俺はそっと口を開く。


「目的が完遂されたとしても、また冒険をしよう。マヨが皇帝、もしくは魔王になって俺が王座に戻ったとしても、お前たちを側近に置いて、また……」


 俺の言葉に、3人の表情が揺らぐ。そして、


「……そうね」


 と、マヨはどこか嬉しそうに呟いた。




 真夜中。荷車の中で寝息をたてている3人。俺はそんな3人に癒されながら、ゆっくりと荷車を引く。


 だがそんな中、空気に微かなノイズが走るのを肌で感じた。


「……気のせいか」


 平穏な日常。しかし、その日常を破る厄災が近づいていることを、この時の俺は知る由もなかった。


少しでも、


「面白い!」「展開が気になる!」


と思ったら、ぜひ☆☆☆☆☆評価、感想で応援お願いします。


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〈主な登場人物〉


テンコ:神のゲームの主人公に選ばれた、普通の高校生。性格は厨二病で、抜けてるところもあるが、意外と頭はいい。


マヨ:大魔ミルキーウェイ神皇国の第一皇女。性格は真面目だが、皇女として過ごしてきた反動で素が出る場面もある。意外と間が抜けている。


ミリア:獣人の少女。とても活発で食いしん坊。強い。


カタルシア:紫髪のエルフの少女。人間で言う14歳くらいの見た目。とても誠実で真面目。

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