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「アイシャ!おめでとうぅ」
「うわっ」
背後からやたらボリュームのあるやわらかな体に抱きつかれて前のめりに倒れそうになり、たたらを踏みつつ振り返ると、目の前にはゴージャスな赤い艶やかな髪をして、金色の少し釣り上がり気味の大きな瞳を嬉しげに細めて。豊かな胸を私に押し付けて嬉しそうに笑うルッカが居た。
「もぅ~、出張中に昇進してお披露目まで済ませてるなんて酷すぎない?
まぁ、今回は長かったから仕方ないけど、今度一緒にお祝い行くからね日にち開けてよ」
そう、怒涛のように捲し立てるのに取り敢えずこくこくと頷いていると
「これは、美しい、生きて動くマルゴーのような方だ…」
「あら…?」
女神の名を上げてルッカの手を取る師匠。
ルッカも満更でもない顔をして師匠を見つめ返すのに師匠と一緒にシラーの部屋を出たのを軽く後悔しだす。
その後ルーニアとも顔を合わせようかと思ったものの、もうかなりの時間になっていることに気が付き、それを後日に回すことに決めると、シラーが師匠の歓迎に食事を用意したからこのまま皆で夕食をと誘われた。
そこまで世話になる訳にはと断りかけるも、もう注文したと笑うシラーに、せめて酒は持ってくると、先日祝いだと各所から渡されて膨大な量になっているそれの提供を申し出るとシラーは好きにしろというので、手伝いついでに寮を見てみたいという師匠と、伝説の存在である師匠から離れがたい様子のクライスも手伝いを申し出たので3人で寮に向かっていた途中での出来事だった。
ルッカは私と同じ平民出身の炎の術師。
豊かな流れるような赤い髪に、金色のとろりとした大きな瞳とグラマラスな体つき
壮絶な色気を放つ彼女は3期程上の女性で
「アイシャのお知り合い?まぁ、クラードのような体をしていらっしゃるのね」
師匠が女神に例えたのに応じてルッカも神々の一人を上げてにこりと笑っているのに頭が痛くなる、師匠とルッカの組み合わせ…最悪だ。
ルッカは一言で言えば、恋愛至上主義。
一度だけの人生だもの楽しまないと! なんて言ってその美貌に引き寄せされる男たちを手玉にとっているような所があって…何股も重ねるという不誠実なことはしないながらも、一人の人間が長続きしないという悪癖があり、しかも今までの遍歴を聞いている限りではかなりの年齢層を網羅していて…。
それだけに、彼女の素行に眉をひそめる人間、特に女性は多いのだけれど彼女はもてない女性のひがみだと気にもとめない。
そんな、彼女との切っ掛けは、数年前…。
修行を終えてスクォーラの廊下を歩いていると、目の前に燃えるような赤い髪に美しい金の瞳をした少し年上の少女が立ちふさがり
「なんで、こんな地味な子に私が負けるの? あり得ない」
等と唐突に言い出した
「何の話だ?」
「あんた、剣術師のアイシャでしょう? 光の貴公子と闇のアンジェロ独占しているという…」
周囲でそう呼ばれているらしいと聞いたことはあったが、実際に耳にすると目眩のするようなシラーとクロエの渾名に、とんでもないなとため息を付いていると…
「ちょっと、答えなさいよ」
睨み付けるようにこちらを見るのに
「別に独占しているつもりは無い、ただの友人だし、シラーはスクォーラから、決められた補充役だから良く居るだけだ」
そう答えると、ふっと目の力が弱まるのが分かった。
「そうなの…? でも、そうよね…、あんた色気の欠片もないし…」
思ったまま、そんなことを言っているのがおかしくて思わず吹き出し
「だろ? 一体何を吹き込まれたんだ?」
尋ねると
「変な子ね…」
などと呟きつつも、彼女が私に立ちふさがるまでの経緯を話してくれた。
どうやら同期の女生徒に呼び出されて囲まれながら、あまり周囲の男に馴れ馴れしくするななどと口々に言われ、けれど、そのような事に慣れている彼女は、もてない女の僻みだと鼻で笑ったらしい。
いつもなら、そこで相手は悔しげに引き下がるのに、その日は一人の女生徒が
「何よ、あんたみたいな下品な子! 光の貴公子と闇のアンジェロ独占している子だって居るんだから、あんたなんてその子に比べたら従えている相手の格で負けてるんだから!」
と言ってきたらしく、とっさに
「その格で負けている男が私に寄って来ているからって文句言ってきたくせに、馬鹿じゃ無いの?」
と、辛辣に撃退はしたものの、敵わないだの言われた私のことが気になって、周囲に光の貴公子と闇のアンジェロ独占していると言われる人間など居るのかなど聞き回り…、私に至ったという。
「我が校でも有名な光の貴公子と闇のアンジェロ従えてるって聞いたから、顔だけでも見てみようと思ったのに…」
不思議そうに私を見て…、
「挑発されて頭に血が上って絡んで悪かったわ…」
最初の威勢は無く、しゅんと謝る姿が年上ながら妙に可愛くて
「んじゃ、その有り余る炎の気、少し貰って良いか?」
少しからかうようなつもりでそう答えると、その金色の眼をまん丸にせて見開いた
「聖剣術士が炎なんて使えるの?」
「あぁ…、私は少し変わり者なんだ」
冗談のつもりだったのだけれど、迷惑もかけたし面白そうだと気軽に彼女は私に炎を注いでくれて
私がそれを使いこなすと何故だかとても喜んで…以来、妙に懐かれてしまった。
「色気は無いけど、面白いわ、あの二人を従えてるんじゃ無くても、噂になる位だから、どうせ同性の友達少ないでしょう? 気に入った!」
何て、まだ幼いながらもボリュームのある体を押しつけられて…
最初は何となく勢いに飲まれた形での付き合いだったけれど、付き合ってみると女性特有の湿気が嫌いだという彼女だけあって、からりと明るく魅力的で。
何よりも色気が無いだの何だの初対面の私にずばずば言う率直さは、何かと陰口を叩かれがちな私には心地が良くて。
噂になりがちな男関係も彼女なりのルールがあるらしく、相手の居る男性に自分から近寄ったりはしていないし、回転率は高くても二股はしないなどと言っていて、それなら個人の問題だろうと思えたのもあり…、友人としての彼女は一緒に居ると驚く事も多いけれど楽しくて、今となってはあの時彼女を挑発した人間に感謝しても良いような気持ちになっていた。
「うわー、ルッカと対等にやりあっているよ…」
目の前で女神だの花だの宝石だのを散りばめた歯の浮くような会話にため息を付いていると、クライスがそんなことを言って
「閃光のグェインがルッカ口説いてる…」
どこか呆然としたように続ける彼に言うべきか一瞬迷って、結局口を開くことにする。
「クライス…あのな、前に私の剣を流動的と言ったな?」
「あぁ、うん、そうだね?」
「早いと思うか?」
「ん…? や、まぁそれなりに素早いと思うけど、でもアイシャの剣の特徴は速さじゃない気はするけど?」
今何でそんな話題?と不思議そうに私を見るクライスに
「だろ? 師匠の剣は確かに速さも凄いが、特徴はそれじゃない、じゃぁ、何故あんな2つ名だと思う?」
「あれ?そうだね…って、まさか!?」
「そ、手が早いんだ、で、閃光のグェイン」
途端固まるクライスを置いて、私はそろそろいいかと二人の元に歩み寄る
「ルッカ、それは私の師匠だ」
「えっ? って、あの伝説の?」
「アイシャ…相変わらず無粋な」
「も…申し訳ございません、私、アイシャの友人でっ」
珍しくあたふたとするルッカに、師匠は私を一瞬睨むと再び優しげな顔をルッカに向けて
「そんな言い方はやめてください、美しい方…」
なんて言葉を続けているのを見て、私はこれ以上は私の役目ではないかと諦めて、まだ固まっているクライスを連れて私の部屋へと向かった。
少しまだ推敲が足りない気もするのですが、一回上げてみて読み直ししないと判らないのもありupしました。
まだ、もう少し手直しはいるかもしれません
新しく書き足した部分とかがあると、やはりなじみ具合とかが自分では良く判らないものだなぁとしみじみ…。




