21
「アイシャが世話になっている、私はグェイン、剣術士だ」
私がスクォーラに入学するまで剣術士としての色々なことを教えてくれた師匠はそう言って、私の友人たちに軽く頭を下げた。
「ご高名は常々耳にしております、私はシラー・アルトハイム、光の術師でアイシャの補充役を務めております」
シラーはそう言って片膝を付いて胸に手を置き頭をさげるという王室の人間を前にした時のような丁寧な礼の姿勢を取り
「クロエ・ナリアと申します、闇の術師をしております、グエィン師の事はアイシャからもよく話に聞いておりました」
「リュージュ・クライスです、剣術士をしております、師の事は小さい頃から話に聞いておりました、直接お会いできるのは光栄です」
残る二人も同じ姿勢で師匠に対するのに驚く。
「丁寧な挨拶痛み入るが、頭を上げてくれ、私はもう村に隠居したただの剣術士だ、普通にグェインと呼んでくれて構わない」
「アイシャの師に当たる方にそのようなことは・・・・」
そう言って師匠を見るシラー
「ほぉ、アイシャの……とな」
師匠はそう言ってくすりと笑う
「まぁ、好きな風に呼んでくれ、取り敢えず本題に入りたいのだが?」
「そうですね、どうぞお座りください」
シラーはそう言ってソファーを勧めていて
「シラー、クラナスを持って来ましたお茶の支度は任せてもらって構いませんか?」
「あぁ、頼む、茶菓子も準備してるから適当に持ってきてくれ」
シラーの返事を聞き別室に向かうクロエ、私もそれくらいは手伝おうと後を付いて行こうとして
「何処に行く気だアイシャ?」
「アイシャ、あなたの話をするのですから、あなたはグェイン師の側に居なければ」
シラーとクロエにそう言われてしまい、何となく落ち着かないまま師匠の隣に腰を下ろした
「大体の事はアイシャからの手紙で知った、確かにこれは世界の根幹に関わるかもしれない」
「そうなのです、これが本当なら現在の魔の増加等の問題に説明がつく上、に解決策となるのですが…」
「だ…が、問題はそれを知ったスクォーラがどう出るか…だな」
統計的にこの数年魔の出現率は上がっていると言われている
けれど、その分それに対処法を持つスクォーラの必要性が高まり、結果一つの勢力としての発言力は高まっており
「しかも、光だけでなく、他の属性の力も遺跡に取り込むことで…というのは、今の光と聖剣術師優勢の状況で、…方々には少し面白くない話かもしれませんね」
スクォーラの中枢をしめるメンバーを方々と少しぼかした言い方をしながらシラーが皮肉げに呟く
「師匠、スクォーラのこの風潮は以前からなのですか?」
「まぁ、俺がスクォーラと距離をおいたのは、その風潮が気にくわないのに看板やってるのが馬鹿らしくなっててのを考えれば、俺が居た頃には有った考え方だ、でも、俺が学んでいた頃はこれほどじゃなかった気がするんだがな……やっぱ、あいつかな? セミドアが今の地位についてから…」
「セミドア…長ですね」
稀代の光の術師と呼ばれ、ここスクォーラの長であるセミドアは一見聖職者のように神々しい外見を持つ老人で、けれど、スクォーラ内部では評判の別れる人物である。
抜群の政治力とカリスマ性を持つことで知られる、このスクォーラの名実ともにトップであるセミドアは、徐々に魔が増え人々の不安が増す中、効率的な討伐隊の配置などを行い、人々の不安を退ける一条の光としてのスクォーラの名を高めてきた功労者だ。
けれど、同時に光とそれを行使する聖剣術師のみの地位を高める為に、他の系統の術師を軽んずる傾向も見受けられ、国への討伐に関する政策や市井からの討伐の要望に政治的偏りを生んでいる張本人であると言われる為、長に心酔するものと、適度に距離を置きつつその動向を苦々しく思うものでスクォーラは分かれていた。
それはそうだろう、光以外の闇、火、水、風、土と言った属性の術師にしてみれば徒に光のみを持ち上げる今の制度は気に入らないだろうし、なによりそれらの属性も立派にこの世界で必要とされ、だからこそ各地に派遣されている存在だ。
なのに、闇に至っては光と対応するというその対比のためにどこか影のあるものと世間に広がっている感はあって…
そのような誤解など簡単に解くだけの実績を有しながら、あえて広めていないような所がいまのスクォーラにはあった。
「で、王と相談してきたんだが…」
師匠がニヤリと笑い私の顔を見て顔見つめると子供がいたずらに誘うような顔をして
「あの遺跡、ちょっと目覚めさせてみねーか?」
そう言った。
「成る程、そうすれば遺跡の実態も少し判るし、ルーニアの力が高まればカイの事や遺跡の事を彼女本人にもう少し聞くことも出来ますね」
「あぁ、王も魔の氾濫には困って入るが、スクォーラの発言力が余り高まるのも面白く無いらしくてな、遺跡を触る許可なんてものを簡単に発行してくれた」
「師匠、何だか随分王と親しくないですか?」
師匠の市井での地位というものは何となくは周囲から聞いていたり、先ほど、目の当たりにしたシラー達の態度から改めてうかがい知ることは出来た。
けれど、それにしても相手はこの国の王である、余りに気安くはないかと不思議に思い聞いてみると
「まぁ…、ちょっと色々有ってな」
師匠は少し困ったような顔をしてへらりと笑ってごまかすのに、経験的に余りつつかないほうがよさそうだと悟り私は話題を変えることにした。
「けれど、どの程度目覚めるかはわかりませんが、あまり目立つことをすると中途半端にスクォーラを刺激するんじゃないですか?」
「あぁ、だから、今度の連休、人が少なくなるときに様子を見つつ実験しようかと思っている、場所もスクォーラ中枢の直ぐ側って訳じゃないし、元々余り人が近づく場所じゃないしな、俺とお前が力を貯めといて注ぐことでどの程度変わるか……面白そうじゃないか?」
スクォーラは基本的には学術組織に近く固まった休みというのは休止状態になり実家に帰る人間も多い、だからその期間はメインストリートなどの店も休みであることが多くて
「解りました、力を貯めておきます」
「私も立ち合って宜しいでしょうか?」
「アルトハイム、構わないが、光の術師である君が立ち会うのは面倒が起こるかもしれないぞ?」
「構いません、セミドアといえどアルトハイムを敵に回す気はないでしょう、それに今回の実験では恐らくそこまで大きな事にはならない…、まずは確認段階、そうですよね?」
「シラー、けれど立場を考えたら危険なことは…、私は元々ここでの立場はあまり良くは思われていないだろうから良いが」
「そんなところに師が同行されるにせよ一人で行かせることなんて出来るか、グェイン師宜しくお願いします」
頭をさげるシラーに
「私も、立ちあわせてくださいね」
にこりと優雅に笑ってクロエが私を見る、こういう時のクロエはきっと何を言っても聞かないのを知っている私がため息をつくと。
「それに、あそこの内部に行くには僕が必要だよね」
クライスまでそんなことを言って笑ってくれていて
「すまない」
頭を下げると
「良いよ、面白そうなことになりそうだし、ちょっと楽しみ」
軽く答える様子になんて答えたらいいか判らなくて、言葉に詰まっていると、ぽんぽんと師匠が黙って私の背中を軽く叩いて…
「ま、今回は極力面倒なことにはならないよう立ちまわるつもりだ、正直ここの術師の力を借りれるのは有難い、まだ大事にしたくないんでな、済まないが力を借りる」
そう言って頭を下げていて、私はその隣で一緒に頭をさげることしか出来なかった。
随分、間が開いてしまいました
まだ、作業が終わったわけでは無いのですが、一息つけたところなので続きに手を入れる事が出来ましたので、少しだけupします。
今後はもう少し間を開けずにupしたいとは思うのですが、先を書けていないのでupは少しゆっくりになるかと思います。
まったりペースになってしまうかもしれませんが、おつきあい頂ければ嬉しいです。




