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4.転移特典セレクト・タイム

 

 ボードを次々と見ていく。

 一番上に出ているのは、使用できるポイント。

 そして、全言語理解、オートマッピング機能、精神耐性、肉体適合の表示だ。それが全員に与えられる機能のようだ。


 それ以外は、ボードの表示から選ぶのだろう。


 不意に誰かが大声をあげた。

「時間制限だ、時間制限があるぞ!」

 え、と全員が顔をあげる。

「右下、数字が減っている!」

「あ、これ」

「たぶん、60分だぞ、3,800秒から減ってるんじゃないか」


 焦りが走るが、孔明コスが大声を出した。作り声は高いトーンだったが、地声は意外と太い。

「落ち着け! もう55分しかないと思うな! あと55分もある、残り30分までは見ていても大丈夫だ、書く物を持っている奴は、手の甲にでも腕にでも、メモを書きながらやっても大丈夫だ」

「焦ったら負けだぞ!」


 ありがたい、さすが参謀。 これで少し落ち着いて見られる。



 ポイントは1,000、項目は、職能、スキル、魔法、武具、道具、アイテム。


 職能は薬師で、他はそれが楽にできる構成にしたらどうだろう。だって、一番生存確率が高い。誰かが、たとえば魔王討伐とか瘴気浄化、あるいは迷宮踏破のような何かを達成したら全員が帰れるのだとしても、それまで生き延びていなくては何にもならない。


 治癒師ヒーラーも考えたが、聖女扱いはイヤだ。そうだ、自分は歯科技工士になるために勉強中だったのだから、入れ歯を作れるように錬金術師がいいかもしれない。

 うん? いや、聞いたこともないか、錬金術で入れ歯を作るなんて~。 う~~ん。 そもそも歯科医がいるのかどうかわからない。


 魔王討伐も迷宮探索もまったくできる気がしない。そういうのはもっと元気な人に任せるとして、ここは“生き延びる”一択だよ。


職能:薬師

スキル:鑑定、調薬

魔法:ヒールL1、火魔法L1、水魔法L1

武具:鋏、ナイフ

道具:調薬基礎セット、次元収納

アイテム:食料の袋x3


 この構成でどうかな。

 次元収納、これはマジックバッグだ。ポイント500を振った。持ちポイントの半分だけど、これだけは身の安全のために持っていよう。タップすると出る簡単な説明によれば、認証機能があって、最初に手を入れた人にしか使うことができない、とある。これさえあれば、お金やアイテムを盗られることもない。

 職能・薬師が30ポイント、スキル・鑑定、調薬がともに20ポイント、魔法がどれもレベル1で、各10ポイント。

 武具のうち、鋏がなぜか高くて50ポイント、これは薬草を採取するために必要だと思っただけで、何かを攻撃するためではない。なぜ道具でなく武器に含まれているかは、きっと行けばわかるのだろう。ナイフは1ポイントだった。

 調薬基礎セット、10ポイント、食料の袋が3で0.3ポイント、合計661.3ポイント、残り338.7ポイント。


 ここまで選び終わったところで、バルカン・コスが、ふたたび声を上げた。集中してボードを読んでいたせいか、口調は普通に戻っている。


「俺は選び終わった、すぐに転移される。ポイントの残りは金貨になった、最後に金貨で行き先を選べるから、残しておけよ、俺は、王都中央広場噴水前だ、金貨100枚だ、武器なんか買えるぞ、マジックバッグやスキ……」

 まだ言い続けている途中で光の粒になって行ってしまった。


 多分バルカンは、王都に行くんだから金貨を残しておけば武具は買える、それより手に入りにくいスキルや魔法を買っておけと言いたかったのだろう。行ってみなくてはわからないが、確かにそれは気にしておいた方がいいかもしれない。「あ、そうかも」という声も聞こえている。


 フーム、とみのりは考えた。マジックバッグは交換した。職能は薬師にして、関連するスキルとマジックを選んだ、いいかんじだよね。

 行き先について考える。王都の広場には、今日奇妙な服装の数十人が降って湧いたように現れ、王都は騒ぎになるだろう。それには巻き込まれたくない。


 生き延びたいけれど、冒険はしたくない。ヒロイン的マインドは全く持ち合わせておらず、ただモブとしてうすーく参加できればそれで充分ハッピー。それが何より安全だ。

 そう、キャラボイスなら、モブCとか、Dがいい。「9番ハッチが閉まるぞ!」とか、セリフひとつの役柄だ。


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