24.孔明は提案する
「マッサに聞きたいのだが」
マッサが孔明の顔を見る。
「はい?」
「ポーション瓶を作るためにガラス工房を買ったわけじゃない、と書いてあった」
「そうなんですけど、成り行きで」
「それ私のせいです」
はっとしたサキが説明に入る。ポーション瓶の口が細いこととコルク栓が不便なことから、マッサにあの形でネジ蓋にできないかと頼んだ、と。
「そうだったのか、わかった。
マッサ、本当にやりたいのは鋏を作ることだったな」
「あ、そうか、ごめんねマッサ」
「そうだ、みんなで便利に使っちゃったよね、鋏だ、鋏、忘れてたわ、ごめん」
フォッシャーズがちょっと焦って謝る。
「いや、るつぼや炉の扱いに慣れるのにちょうどよかったから」
マッサが、イヤイヤと手を振りながら問題ないという。
「ノーラがキャストに詳しくて、教えてもらいながら練習もできたし、蓋を作る時に金属の扱いも練習できた。謝られることなんてないんだ」
「そうか。
提案をもってきたので、聞いてもらいたい。
この新しい形の瓶と蓋の形成とパッキンの作成は、メイバートンに移したらどうだろうか。
マズーラ組の意見を聞きたい」
「移すのですか? 王都じゃなくて、メイバートンですか?」
「そうだ。王都噴水前には、75人転移した。大騒ぎになって、城から役人が派遣されてきて、ひとりずつ事情を聞かれた。全員実に冷静に対応してくれてね。
結論だけ言うと、全員兵舎に連れていかれて、私とカーンが代表で役人と話し合った。
結局帰る方法がわかるまではこの国にいてもいい、ただしできるだけ早く市民として自立して生きていくこと、難民としては扱わないが、半年ほどなら兵舎で寝起きしていい、ということになった、この事情は聞いているね」
「はい、このまえカーンさんから」
「私たちは、王都噴水前に来なかった12人を探すこと、王都に集中していないで、他の街にも分散して拠点を作ったり、旅をするチームを作ったりして、日本に帰還できる情報を探そうという方針を立てた。
3人は王都の冒険者ギルドでフォッシャーズという登録名を見て、カーンが探しに来た。そして、ノーラとマッサに会い、5人の居場所がわかった」
「ええ」
「南の辺境に3人いることがわかって、私が訪ねた。そこでもさらに2人見つけた。
残るのはあとふたりだが、情報不足で探せない。
分散の方は、まずはメイバートンという街に、3人組の冒険者チームと4人の音楽チームが行くことになった。音楽チームは旅の楽士になるつもりでいる。
この話にも興味があるだろうから、場を改めて話そう」
「いま兵舎にはカーン、カリョウテン、私、そして、迷宮探査に失敗した4人組が残っている」
「え? 失敗して? 無事だったんですか?」
「問題ない。戦闘に対して適性がなかったのだ。他に仕事がないから冒険者登録して迷宮に潜ったところが判断ミスだったということだ。
この4人は気が合っている。冒険者チームを組んで何とかやって行こうとしたが、どちらかと言えば職人向きだ。ふたりが錬金術師の職能をとっている。
ひとりが剣士を取ったが、からだは大きいものの気が優しくてね、戦闘職よりも体力担当の方が向いているかと思う。
もうひとりがこまごまと気を配って、チームの世話役を務めている。迷宮もこの男がいるから無事に何度か潜って帰ってきた。これ以上は無理だと判断したのもこの男だ。見た目は小柄で非力だし侮られやすいが、胆力があって頼りになる」
「このチームをメイバートンに送り込んで、瓶を作る仕事を任せられたらと思う。
ただ、私にできることは提案だけだ、決めるのはマッサ、君だよ。王都に来て、4人と会ってもらえればありがたい。どうだろうか」
「あ、はい」
マッサは少し首を傾げたが、錬金術士ならガラス作りは十分できるだろう。むしろ、形を自由自在に作れて、芸術作品もできるのではないだろうか。蓋のほうは瓶に合わせて作るから、慣れるまで金属の扱いについて練習してもらわなくてはならないだろう。
パッキンは、錬金術師でなくても大丈夫だ。ただ、材料がスライムと知られないようにする工夫が必要になるだろうが。
「すこし検討させてください」
「よろしく頼む」




