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14.ポイント・ボード

 

 5人は、中畑さんだの柴崎さんだの、他所の国で自国の苗字で呼び合うのもこちらの人に余分な違和感を持たせるだけだから、もう呼ばれた名前を受け入れちゃおう、ということになった。


 で、

 野中正則は、マッサ

 柴崎桜マリーは、マリ

 永田明久は、アッキー、でいこうとなった。


 中畑みのりと岬友花里は、どちらも“ミ”と呼ばれたため、苗字の方をとることにした。


 中畑みのりが、ノーラ

 岬友花里が、サキ、となった。サキーは普段呼ばれるには抵抗があるそうだ。


 5人とも名前の一部を取った形だから、不意に呼ばれて「だれ?それ?」になることもないだろうが、早く慣れるように互いに呼び合ってがんばろう、と慰め合った。ここで生きて行かなくちゃならないのなら、照れている場合じゃないのだった。


 ちくそー、あの門番め、許せん! と、まあ、全員が思ったのだが、どうしようもないことだった。





 呼び名が一段落したところで、もう自己紹介なんてどうでもよくなった。それよりこれからどうするか、だ。

「赤煉瓦の建物から怒って出てきたみたいに見えたんだけど、なんかあった?」

 マッサが聞く。

「ああ、あれね。永田、いや、アッキーね、こほん。 アッキーが受付のおねーさんまでたどり着けなくて」

 いきなり、愛称? で呼ぶのに違和感がある。日本人にはキビシイ。



 赤レンガ2階建てのなかなか魅力的な建物は、やはり冒険者ギルドだったそうだ。

「最初、あの広場で冒険者ギルドの看板見つけた瞬間、アッキーそのまま飛び込もうとしたんだよね」

「そうそう。必死で押さえて、とにかくまず、泊まるところ! って、ここにチェックインしたんだけど」


 住所も書けない状態で冒険者登録を受け付けてもらえるとでも思ってんのと、ふたり掛かりで引き留め、ぶーたれるアッキーを引っ張りながら近場を回って宿を探した。

 なんとかチェックインして部屋に案内され鍵をもらったら、アッキーはその鍵を握りしめて宿を飛び出したのだそうだ。マリとサキはすぐに追いかけたが、追いつけず、冒険者ギルドの扉を音高く開いて飛び込んでしまった。取り押さえようとしたが。


 服装がどう見ても“依頼者”で、とても“冒険者”には見えなかった、らしい。いきなりタキシードの男性が飛び込んできて、ロングドレスとピンクワンピの女性が必死で追いかけてきたのだ……そりゃそうだよ。

 逃げる婚約者と追いかける姉妹? 

 お見合いから逃げ出した兄を捕獲しようとする姉と妹?


 受付嬢が見えて、突進しようとしたが。

 とっても熟練冒険者風のガタイのいい強面こわもてのおにいさんがひょいと出てきて、

「依頼者の方ですね、こちらにどうぞ」

 と言いながら、受付嬢のいない方角に案内され、小部屋できっちり事情聴取を受けたのだそうだ。


「そりゃ、お疲れさまでした」

 ノーラとマッサには、他に言える言葉がなかった。


「だーかーらー、せめてそれらしい服ぐらいは買って、ポイントでもらった剣なんかも装備してから行こうよ、って言ったんだよ? わたしは」

「そうなのよ、全部私が預かってんのよ、アイテムバッグに、あ、次元収納だったっけ。交換した?」

 と、サキ。

「うん、私は」

 ノーラが答える。慎重派同士だね、ふたりは少し親愛感を覚えた。



「あ、ポイント交換って言えば」

「そうだった、話してみようか」

「そうだよ、秘密にしない方がいいよ、買い物してもらえるかもよ」

「うん」


 なになに? ってことで、マッサはポイント・ボード・アクセス権について説明した。思いっきり食いついたのは、アッキーだった。


「えー、そんなの持ってんのか、やた! 俺欲しいの一杯あったんだよ」

「何言ってんの、もうお金ないでしょ、入街税もホテル代も、誰が払ったと思ってんのよ。冒険者登録しようとしたって登録費用なかったでしょう、どうするつもりだったのよ」

「あー、うん」

「捨てちゃうよ、永田」

 冷たい声のマリちゃんこと桜マリー、さっき決めた異世界名ですら呼んでもらえない。デザイン・スクールでの関係性が垣間見える。

「う、スイマセン。お金貸してください」

「ふん」


 まあ、あの状況ならあるあるだよ、よく転移のポイント残してたよと、慰めるノーラ。

 甘やかすと借金しに来るよ、と脅すマリ。


「ちょっとステイタス・ボード開いてみるよ、なんか面白いのないかな」

 まあまあ、とか言いつつ話題を変えるマッサ。

「ええ、楽しみね」

 大人の対応で同調するのはサキだ。



「で、何が交換できるの?」

「あー、まず金貨をポイントに交換しなくちゃいけないんだけど、俺金貨交換したら生活できないんだ。今全部グレイになってて読みにくい」

「もう」


「えーっと、俺はもう一回受付嬢にトライしたいんだけど、行っていいかな?

 と、アッキー。 事態が進まないので飽きてきたらしい。しかも彼は無一文で役に立てない。

「もう~、あんたそのタキシードの上に胸当てつけて、剣持って行くの? ぜーったい無理だから!」


 お怒りのマリちゃんとふて腐れるアッキー。なんとか気をそらそうとノーラががんばる。

「あ、そうだ。なんか食べよう」

「そうか、みんなお腹減ってるんだよ。食べよう、ね?」


 4人は自分の食料袋を取り出し、ポイント交換しなかったアッキーは、3個交換したノーラに1個もらって、パンとリンゴを食べ、水を飲んで甘いバターケーキを食べた。


「はー、少し落ち着いたかな~、どうする? この後」

 一番冷静なのは、サキのようだ。


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