第6話 人間、図書室で学ぶ
制服が届いた翌朝、ルカスは朝食を終えるなり図書室に直行した。
試験まで、まだ数日ある。その間にできることをしておきたかった。
教材を脇に抱えて、窓際の机に座る。
まず一冊手に取って、解析をかけてみた。
『解析』
【解析】
▶ 題名:魔法概論・入門編
▶ 内容:魔法の基礎理論、魔素と魔力の関係、属性分類、スキルの概要
▶ 対象:初学者向け
(内容の概要まで出るのか)
次々と解析をかけながら読み進めると、難しいはずの内容がするすると入ってくる。
(便利すぎる……)
魔法概論を読み終えると、魔法史を手に取った。
『解析』
【解析】
▶ 題名:魔法史・基礎編
▶ 内容:魔法の歴史、各種族と魔法の関係、魔法体系の変遷
▶ 対象:初学者向け
次に魔法陣基礎——
そこで手が止まった。
最初のページに描かれた複雑な図形に、目が釘付けになった。
『解析』
【解析】
▶ 題名:魔法陣基礎・第一章
▶ 概要:魔法陣の起源は精霊や幻獣との交信に使われていた文字。現代では術式の図式として使われている
(精霊や幻獣との……交信?)
ページをめくったが、その話はそこで終わっていた。
(続きが書いていない……)
(もっと知りたいな)
そこから先のページが、急に気になった。
次々と解析をかけながら読み進めると、どんどん引き込まれていった。
「ルカス様」
声がした。
顔を上げると、扉の前にパンテラが立っていた。
「……いつから、ここにいらっしゃるのですか?」
「朝食の後すぐです」
パンテラが部屋を見回した。机の上には開きっぱなしの本が何冊も積み重なっている。
「お昼の時間はとうに過ぎておりますが」
「え」
窓の外を見ると、日が傾いていた。
(そんなに経ってたのか……)
「す、すみません、夢中になってしまって」
「お食事をお持ちいたします。少々お待ちください」
パンテラが出ていこうとした時、廊下から少し焦っているレグルスの声が聞こえた。
「パンテラ、ルカスはどこへ行ったか知って——」
「図書室にいらっしゃいました。朝からずっと」
「朝から?」
レグルスが扉から顔を覗かせた。
机の上の本の山を見て、それからルカスを見た。
「……大丈夫なのか?」
「あ、はい!大丈夫です!魔法概論が面白くて読んでたら魔法陣の本も気になって、解析かけながら読んでたらどんどん先が気になって——魔法陣の起源って精霊や幻獣との交信に使われてた文字らしくて、でも本には続きが全然書いてなくて——あと試験に出そうなところをメモしてたら——」
途中で、レグルスの表情が変わったのに気づいた。
固まっている。
(あ、喋りすぎた……?)
「す、すみません、一方的に」
「……いや」
レグルスが、小さく——本当に小さく、笑った。
「楽しそうだな」
「……はい」
「そういう顔をするんだな、お前は」
顔が熱くなった。
「……知らないことをたくさん知れて楽しくて」
「そうか」
パンテラが昼食を持って戻ってきた。
「本日は図書室でお召し上がりになりますか、ルカス様」
「良いんですか!」
「レグルス様も、いかがでしょうか」
レグルスが少し間を置いてから、椅子を引いた。
「……俺もここで食べる」
(一緒に食べてくれるのか)
嬉しいような、照れくさいような。
窓から差し込む午後の光が、本棚を金色に染めていた。




