水中神殿の最終部屋
意外と減っていたスタミナを、持っていた保存食で適当に補完しつつ。敵影の無くなった水色の部屋で、俺たちは簡易休憩など挟んでみたり。
この部屋に設置された扉は、入って来たのと反対側にもう1つ出口があるのみ。水の神殿ダンジョンは、どうも分岐無しの簡単な造りらしい。
それは有り難いよね、とにかく迷う必要が無いってのは良い点には間違いない。こっちは時間制限があるし、確認するとあと40分程度だろうか。
師匠の庭での弓矢の練習で1時間、フィールドから安全地帯の往復で1時間ちょっと。そしてこの水の神殿で、約1時間とちょっとが経過している。
このダンジョン、めぼしい報酬こそ無いが経験値はたくさん貰えている。もうすぐレベルが上がりそう、今日2度目のアップで次は16だな。
転職しないで良いのだろうか、その点がちょっと不安だ。
琴音もまだ転職はしてないみたいで、その辺の相談も余りしてない。自由にやって良いのだろう、所詮は補正的な名目でしか無いとか言ってたしなぁ。
この『始まりの森』にいたら、そもそも転職自体が不可能だし。虹色の果実は目標の数をクリアしたけど、弓矢の上達は未だ道半ばである。
得難い師匠とも出逢えたし、もう少しこの地で頑張る所存。
短い休憩で、何とか体力と魔力と、ついでにスタミナは回復してくれた。それじゃあ探索を続けよう、ファーも元気に空中を飛んでいる。
次こそボス部屋かな、心の準備をしておかないとね。
ところが扉を開けてみると、今度は長い通路がお目見えした。神殿の形状に良く似合う、幅の広い柱が等間隔に左右対称に並んでいる。
そして敵の姿もあちこちに散見していて、戦闘無しでの通り抜けはちょっと無理そう。例の前衛カエルと魔法カエルのセットも、見える範囲で3組ほど巡回している。
柱の側の植え込みは、変な蔦植物がウネウネと蠢いていた。その側には水路が長く続いていて、つまりは蔦に捕まると色々と厄介なのかも。
その水路には大イモリが潜伏中、どこもかしこも敵だらけだ。
さっきみたいな集団戦は懲り懲り、例え今回は床の上でこちらに地形は有利と言えどもだ。扉前に陣取って、俺はおもむろに弓矢を取り出して構える。
これは戦闘ゲームの専門用語で“釣り”って言うらしい、師匠はもっと凄いけど。あの人は罠の設置も得意なので、釣った相手を罠に嵌めるとかお手の物!
最終的に殴るのは、本当に止めを刺す時だけとかプロですやん! まぁ、何のプロかはさておいて、俺のはそれ程に上手くは出来ない。
単純に、一度にたくさんの敵とは戦いたくないための戦法である。最終的には師匠並みに知恵と策謀を駆使して戦いたいけど、今はそんな技も知識も無いので無理。
とにかくまずは、近くの大イモリに攻撃を仕掛ける。幸先良く矢の一撃は命中、怒って水中から這い上がり向かって来るイモリ型モンスター。
アクティブじゃ無いにしても、ドロップは気になるし万一囲まれたら厄介だから倒すに限る。コイツの戦法は尻尾での叩きと噛み付き技、それから水の強化魔法かな。
ダンジョン補正があるらしく、戦った感触はそこそこに強敵ではある。しかも《粘膜》って特殊技で、突き攻撃が滑ってダメージが入らなくなると言う。
仕方ない、さっき拾った蛙のハンマーを使ってみるか。
うおっ、初めて使ってみたけど凄いなコレ! ハンマーの重みで、軌道さえこっちで修正してやれば強烈な一撃が敵に吸い込まれて行く。
ちょっと病み付きになりそうな使い心地だ、ダメージも上々だし。動きの悪い敵を相手するには、良い武器を得たかも知れない。
次は魔法使いのカエルで試し……おっと、前衛カエルちゃんも付いて来ましたか。やっぱり君たちセットなのね、薄々感付いてたけど。
関係ないぜと、俺は振り降ろしからの《撃ち上げ花火》を敢行!
うっひょー、これは凄いかも。さっき苦戦した蛙の全後衛コンビが、雨上りのアスファルトの惨劇のよう、ペチャンコ蛙が量産されちゃってます。
コイツ等に限っては、打撃を跳ね返す能力は持っていないみたい。大きい奴だけなのね、ってか言った先からその巨大ガマガエルが柱の影から出現して来た。
1匹だけみたい、それなら弓矢で釣って倒しちゃおうか。そしてそいつを斃した結果、この通路のモンスター達はドロップがショボい事が判明した。
さっきの部屋のフィーバー振りが嘘みたい、それでも木の蔦だけはとても美味しかった。何故ならコイツ、根を張って動けないタイプの敵らしいのだ。
遠隔攻撃を使えば、向こうの反撃なしにずっとこちらのターンと言うね。弓矢の練習とばかりに、俺は一方的にこの植物モンスターを撃破して行く。
ドロップもちょっと珍しい、初見の頑丈な木の蔦をゲット。これはクライフ師匠へのお土産か、または工作に良い素材になってくれそう。
水中神殿の通路を半分も進むと、変と言うか嫌な予感が脳裏を掠め始めた。このままではボス戦を前に、レベルが上がってしまいそう。
通路の両端には、入り口でも見た椿の木が並んでいる。とても綺麗なんだけど、雑魚でレベルアップはあんまり美しくは無いかな。
いや、椿は綺麗なんだけどね、ポトリと落ちた花が水路に浮かんでいる情景なんて特に。雅と言うか風流ですな、大輪の花の潔さよ。
地域とか時代によっては、それが首切りを連想させて不吉と言うらしいけど。実用的でもあるらしく、この木の種子から油も取れるっぽいね?
それはさておき、いよいよ通路は踏破完了っと。
名前:ヤスケ 初心者Lv16 種族:ミックスB
筋力 31(+6) 体力 36 HP 152(+15)
器用 34(+2) 敏捷 32(+4) MP 124
知力 25 精神 24(-4) SP 109
幸運 18(+10)魅力 8(+1) スタミナ**
職業(1):『新米冒険者』Lv16
武器(5):《ブン回し》《落とし突き》《撃ち上げ花火》《二段突き》
《捻り突き》
補正(4):《投擲威力20%up》《防御力10%up》《》《》
冒険(3):『野生』『』『』
武器:弓矢2P
:短剣1P
:短槍12P《落とし突き》《捻り突き》《二段突き》
:片手棍1P
:両手棍8P《ブン回し》《撃ち上げ花火》
:盾4P《防御力10%up》
:投擲5P《投擲威力20%up》
魔法:『闇』8P《Dタッチ》《バグB》
:『風』12P《風の茨》《風属性付与》《風疾り》
:『光』4P《フラッシュ》
:『水』9P《清き水》《水中呼吸》
:『炎』4P《キャノンB》
:『雷』4P《スパーク》
種族:『ミックスB』(幸運+2、魅力-1)
称号:『蝶舞』『猪突』
モネー:98、400
スキルP:9
***『新米冒険者』ヤスケ 装備一覧***
武器 :海賊の短槍(6) 攻+10
武器2:蛙のハンマー(10) 攻+12、水耐性+20%up
予備 :研ぎ直した粗末な石斧(3) 攻+4(投擲可)
盾 :甲殻の手甲(4) 防+4
頭 :質素な帽子(5) 防+4
上着 :丈夫なベスト(8) 防+7
鎧 :護衛の胸当て(6) 防+6、器用+2
下着 :クールな下着(5) 防+1、耐寒+20%up
アクセ:幸運の御守り(2) 防+1、幸運+2
指輪1:耐魔の指輪(2) 耐魔20%
指輪2:契約の指輪(-) 従者+3
腕 :野生の腕輪(4) 防+3、筋力+6、敏捷+2
ベルト:革の幅広ベルト(7) 防+5、ポーチ×4
下肢 :疾風のズボン(8) 防+7、敏捷+2
靴 :蛙のブーツ(8) 防+6、水耐性+30%up
背中 :海賊のマント(8) 防+7、敵対+2、魅力-2
従者:妖精Lv1 幸運+6、魅力+4、精神-4
鞄:魔法の鞄(初心者用)+商人の鞄
アイテム:ポーション(大)×2、ポーション(中)×7、ポーション(小)×18
:マナポ(中)×5、マナポ×12、毒消し×6、マナP×8、Sポ×7
:ポーションP×4、万能薬×2、炎の神酒×3、蜂蜜ジュース×3
:土の術書、潤いの蜂蜜×7、闇の秘酒×3、聖水×6、薬品箱
:虹色の果実×5、魔石(小)×9、魔石(中)×2、経験の飴玉×2
:料理キット、冒険者セット、蟷螂の大鎌、護衛の腕輪、枝切り鋏
:緋色の頭巾、闇の眼帯、護りの腕輪、海賊の大斧、調味料
:魔除けの香炉、金のメダル×6、松脂1瓶、野生の手斧、蛙の王笏
:巨大な大腿骨、幽霊の呼び水、大猪の牙の短槍、海賊のサーベル
:闇の契約書、探索のコンパス、飛竜の血、闇蝙蝠の牙、闇蝙蝠の皮膜
:旅人のマント、護衛の刀、庭師のエプロン《四段突き》《秋波斬り》
:護衛の弓、護衛の盾『隠密』『交友』『地図形成』野生のサーベル
:初心冒険者の服・帽子・杖セット、魔法の腐葉土、銀葉樹の苗木
:壊れやすい鉢、魔水連の球根×8、淡い水瓶、大猪の毛皮、水のマント
:森狼の毛皮、風の牙、時の狭間の香木×5、骨工ギルドの推薦状
:奇妙な頭蓋骨、野蛮な大腿骨、三色珊瑚、白い甲羅、豹柄のマスク
:『妖精使い』『精霊下請け人』『蝶舞軽戦士』『猪突戦士』
:蛙の歌笛×7、翡翠の指輪、翡翠の飾り、頑丈な木の蔦『水中適正』
:憩いの香木×2《マナプール》
てへっ、結局はレベル上がっちゃった……とうとうレベル16ですな、感慨深いと言うか何と言うか。何かもう、途中で引き返しても良い気分。
ここまでの冒険で、充分に経験値的にも美味しかったし。でもまだ放置している宝箱とか、どこかにあるかも知れない訳だしねぇ。
仕方ないからも進もうかな、ボス戦を前に強くなって望めるって考え方もあるよね。それにしても、余計な荷物がまた増えてしまったな。
スキルPも順調に増えてくれて、全く嬉しい限りである。次は何を伸ばそうかな、ってか『投擲』スキルが勝手に1P伸びてくれてます。
そんなに使った覚えはないけど、考えたらさっきの部屋でも水晶玉をポイポイ投げてたなぁ。そのせいだとしたら、コスト的には納得出来る気もする。
水晶玉の売値なんて、自分は全く知らないとしてもだ。コレって使い捨てだけど、やっぱりお店で買うとそれなりには高価なんだろうね。
幸い冒険の途中で補充は出来ているので、まだ無くなる気配はない。なので集団の敵や強敵が出て来たら、躊躇なく使う予定ではいる。
他は取り立てて、報告するような変更点は無いかな。新魔法の《水中呼吸》も《スパーク》も、無いよりはあった方が嬉しいし安心出来るって感じかな。
さて、それじゃあ次の扉を開けますよ?
そこは見た目からして、最終部屋に相違なかった。エリアの半分は水の張られた水路で、もう半分は乾いた床パネルにくっきりと二分されている。
壁の形も凹凸が多くて、その1つが壁に隠し部屋のような窪みを作っていた。そこに宝箱が見て取れて、我知らず気分は高揚して行く。
ただし、宝箱との間は滝の流れで遮断されていて簡単には取りに行け無さそう。つまりは、水に濡れないと回収するのは不可能だな。
そして部屋の高い場所にも、さりげなく宝箱は置かれていた。そこは壁の凹凸を、上手に登って行けば取れる仕組みとなっているらしい。
ただし天井までは建物の3階分程度の高さ、落ちたら相当痛そうである。ってか、この部屋に限って敵の姿が全く見当たらないのが逆に不気味なんですけど?
宝箱取り放題ですか、そしてこの部屋のどこにも次の部屋への扉は無し。つまりは完全な行き止まりで、何かが隠されてる感がヒシヒシと伝わって来る。
もし隠されてなかったら、どうやって戻るんだろうかって話である。しかし隈なく探し回っても、入った扉以外は出入り口らしき場所は見当たらない。
う~ん、参ったな……取り敢えずは宝箱の中身を回収して次の手を悩もうか。まずは滝の奥に透けて見える、扉の反対側の奴からかな。
最悪、敵でもボスでも良いから、出て来てくれないと寂しいじゃないか。
――そんな俺の願いは、この後すぐに叶えられるのだった。




