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ミックスブラッドオンライン・リメイク  作者: 鳥井雫
始まりの森編

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逃走劇



 あの雷鳴交じりの土砂降りの雨だが、いつの間にやら止んでいた。そして分厚い灰色の雲を割って、次第に陽光が差し込み始めている。

 巨大キメラの自壊が加速される点で言えば、これは朗報だ。


 一方こちらの情勢だが、ゴブリン集落跡地で敵の大将と(にら)み合っている際中だ。いや、好きでこんなシチュエーションを望んだ訳では決して無い。

 飽くまで偶然の産物で、確かにさっきまで敵の気配は無かった筈なのだが。ちょっと寄り道のつもりが、何故か敵の大将とバッタリ遭遇してしまった。


 それが現在の状況なのだが、さてどうしよう……こちらが虹色の果実を収集していた現場を、しっかり見咎(みとが)められてしまったと言うね。

 いやいや、別に火事場泥棒的に集落の棲み家には手を付けていない。なのでここは見逃して欲しい、ダメだろうか……うん、駄目みたいだ。


「¥&$#=%#!<¥?」


 何やら詰問されている様子、ゴブリン語だろうか……ひょっとしたら、冒険スキルか何かでコミュニケーションが取れるようになるかもだけど。

 今の所は、全く理解出来ない雑音でしかない。このバーチャル世界では、外国語も割とラグタイム無しで翻訳とかもされるそうなので、言語機能のバグとかでは無い筈。


 つまりは、話し合いでの場の収拾は不可能っぽいのは理解出来た。離れた場所に仁王立ちのゴブリンは、やはりこの集落の王様で合ってるみたい。

 名前も“ゴブリンキング”だし、バリバリのレア種で間違いなし。豪奢な鎧を着込んでいて、手には大振りの両手剣を抜き身で抱えている。


 さっきまで激しい戦闘をこなしてたのか、手負いではあるみたい。そんなレア種との遭遇だが、今は戦いたくないな……主目的の依頼は別にあるし。

 サブの目的である果実採集も、既に果たしてしまってるしね。集落を出たら諦めてくれるかな……何よりここで戦闘なんて、いつ他の雑魚ゴブが湧くか分かったモノじゃない。


 幸い、完全に見失った巨大キメラの追跡は、滅茶苦茶に容易である。そっとポーチに手をやって、なおも(いきどお)っている感じのゴブリン王との距離を測り。

 爆裂玉を投げつけて、俺はこの場からの逃走を図る。



 ファーもビックリしつつも、すかさずこちらの動きに追従してくれたのは流石だ。そんな訳で、ゴブリンの集落からの遁走劇(とんそうげき)の始まりだ。

 観客は1人もいないけど……いや、無粋な王様が誰か呼び寄せた様だ。振り返ってみると、いつの間にやら御付きの魔術師ゴブリンが湧いていた。


 恐らくゴブ王の特殊能力か何かだろう、嫌なレア種ではあるなぁ。逃げるから関係ないとは言え、追い付かれて戦闘になったら大変かも。

 岩場の上り斜面を一気に駆け上がり、念のためにと《ストーン(ウォール)》で遮蔽物を作成する。丁度崖と岩場の間隔の狭い場所があったので、(ふた)をするように(ふさ)いでやる。


 時間稼ぎには良いだろう、呑気にその上から敵の動向を覗いているファーとネムに一声掛けて。再び逃走を開始する俺、これで完全に連中を撒ければ良いのだが。

 ところが目の前は、倒れた木々でアスレチック模様。全力疾走はちょっと無理なグラウンド状況、相棒達みたいに宙を飛べれば楽なんだけどな。


 倒れた木々もそうだけど、枝葉が壁のように立ちはだかっている。さっきは巨人の姿が見えていたので、斜め後ろから後を追っ掛けていたんだけど。

 今は完全に姿を見失っているので、そんな訳にはいかないのが辛い。取り敢えずは、進みやすい端っこをルート設定して進行開始だ。




 少し進んで、タゲはもう切れたかなと後ろを振り返る余裕は出来た。そしてビックリ、何故か知らないけど追手のゴブ達の数が増えてるんじゃね?

 ファーと共に驚き顔で、そんな現実が視界に飛び込んで来て戸惑っていると。例のゴブリンライダーが、意外な速度で間近に迫って来ていた。


 これは完全に撒くのは無理かも知れない、ってかこの騎獣どっから出て来たんだ? ゴブ王の召喚だろうか、上限が分からないのは厄介だがどうしたモノか。

 コイツに手古摺(てこず)っていては、追手の連中に追い付かれるのは必至だ。或いは騎獣を素早く始末すれば、逃走する時間を稼げるかも知れない。


 とは言え、こちらはSPも貯まっていないし、そんな器用な真似は出来そうも無い。手詰まり感が流れる中、倒れた木々の端っこギリギリを遁走(とんそう)すること数分。

 とうとう追手のゴブライダーの息が、背中に掛かるような距離まで迫って来た。これはもう仕方が無いな、立ち止まってなるべく素早く退治しよう。


 こちらは目潰し魔法も足止め魔法も幾つか持っているが、ライダーは騎乗ゴブもいる。その場(しの)ぎを続けても、タゲが切れないと仕方が無い。

 一応こっちは《風疾(かぜはし)り》は掛けてあるが、障害物の多い森の中では効果も不充分。逃走計画は半分諦めて、殲滅戦へと移行する事に。


 とは言え、たんまり従者付きのレア種のゴブ王とは遣り合いたくないのも事実。とにかく雑魚ゴブだけは、合流前に速やかに抹殺すべし。

 さっきも対戦したので、コイツとの戦い方は既に流れを決めてある。まずは騎乗しているゴブを叩き落として、大型の肉食獣の動きを単調にしてやる。


 そうすれば騎乗ゴブの厄介な統制力も発揮出来ないし、どちらからでも倒して行けばオッケーだ。なるべく騎乗ゴブにダメージが入る落とし方だと、なお良しって感じかな。

 ってか、今気付いたけどこのライダー、やたらと豪奢じゃないか?


 騎獣の毛並みもさっきの奴より濃いし、騎乗ゴブの着ている鎧も豪奢に見える。しかも手に持つ武器は長槍で、それで突撃されたら威力は如何(いか)程かって感じ。

 ゴブリンキングの召喚したライダーだと、ひょっとしてランクが自然と上がるとか? 嫌な仕様ではあるが、こちらの作戦に変更は無い。


 奴らの合流前に、取り敢えずこのライダーを始末するべし。そんな訳で槍の突き合いは、高所から長槍を操る相手に軍配が上がってこちらは不利。

 しかもチャージ気味に騎獣を操って、巧みに槍の威力を底上げする厭らしさ。こちらも魔法で対応して、まずは《フラッシュ》で定番の目潰しをしてやる。


 すると肉食獣も騎乗ゴブも、見事に引っ掛かって付け入る隙を(さら)け出してくれた。そこに突っ込む、ファーとネムの飛行コンビ。

 こちらも騎乗兵には違いないが、妙に張り合わなくても良いと思う。しかしその強引なチャージで、騎乗ゴブは見事に落獣して行ってくれた。


 よくやったと誉めつつも、自分は人すら乗れる巨獣の相手に手一杯。反対側に落っこちたゴブとネムは、それぞれを対戦相手と見定めた様子で互いに威嚇(いかく)し合っている。

 俺は強化魔法を掛けて、自分の獲物に突きを見舞って戦闘再開。


 相手の巨獣もいきなりブレスを吐くとか、何か仕様が酷い事になっている。レア種では無いようだが、間違いなくそれに準ずるモノには違いなさげ。

 殴り合いは一進一退の様相で、ダメージもお互い蓄積しまくる泥仕合に。何しろこっちは、時間が無いと言うハンデを抱えているのだ。


 その心理的な負担が意外と大きいが、迫り来るゴブ本隊まではさすがに気にしていられない。向こうは単に、獣なので回復手段を持っていないだけ。

 合間にファーの水晶玉投下が、良い感じに範囲ダメージを与えてくれている。向こうもすぐ近くで戦闘をしている様子、ここはこちらも手助けを行うべきか。


 そんな訳で《白垂飛泉槍》を敢行、周囲は途端に水(びた)しの酷い惨状に。巨獣は四本足なのでそれ程足場を気にしないが、ゴブだとそうも行かないだろう。

 ネム達は宙を飛んでるので、足場は全く関係ない。


 それにしても、なかなかにタフな敵ではある。炎のブレスには驚いたが、噛み付きやかぎ爪攻撃も威力は高いので連続で喰らうと厄介だ。

 HPも普通に高いし、動きも俊敏で攻撃を避ける動作も素早くて思わず舌打ちするレベル。複合スキル技のダメージは、かなりいい線言っているとは言え。


 気を抜くと、たちまち逆転される雰囲気を漂わせている。そこに来て、HP半減からの大暴れとか好き勝手し放題な巨獣モンスター。

 何故かそれに巻き込まれて、ダメージを受けている騎乗ゴブは良いとして。こちらはステップを駆使して、何とか酷いダメージは受けないように必死。


 そうこうするうちに、最悪のシナリオがとうとう訪れてしまった。つまりは、さっさと倒して逃走と言う、こちらの目論見(もくろみ)は敢え無く(つい)えた様子。

 残念ながら、後方からゴブ王とその一行様が到着したっぽい。




 いやいや、これは酷い……ゴブ王が魔法使いゴブを召喚したのは見ていたが、他にも鎧を着込んだ戦士タイプが2匹も追加で増えている。

 王様の側近なのか、明らかに雑魚とは違う装いだ。つまり雑魚より体格も良いし、武器や防具もゴブには勿体(もったい)無い品質の物を着込んでいる。


 ちなみに魔法使いタイプは、後方からいきなり呪文の詠唱を開始していた。こちらは戦闘ダメージを負ったままだ、今攻め込まれたら非常に不味い。

 慌てて近くの倒木の隙間へと避難する俺、これは簡易要塞に出来そうな造りかも?


 ゴブ王の意味不明な怒鳴り声が、相変わらず周囲にこだましている。それに呼応するように、護衛ゴブ達がこちらを追って突進して来た。

 俺はファーとネムにも声を掛けて、同じく避難するように指示を飛ばす。行きがけの駄賃だと、瀕死の騎乗ゴブにとどめを刺してこちらへと飛び込んで来る仔竜はタフだなぁ。


 そのせいなのか、全く大暴れが止む気配のない巨獣の大暴走。何か、近付いたゴブ兵士達にも被害を及ぼしてるけどいいのか?

 それでも兵士達のタゲは、しっかり俺に向いているようで追走に余念が無い。


 倒木越しにそれを眺めていた俺だが、何とかポーションで回復は出来たし強化魔法も掛け直せた。うん、この簡易籠城(ろうじょう)作戦は良かったな。

 後は倒木を潜って入ろうとする、ゴブを順番にタコ殴りにして行けば良い。この好位置を、相棒たちとキープしながら敵の数を減らして行こうか。



 そんな思惑が崩れ始めたのは、ゴブ王がこの場に到着してすぐの事だった。奴が最初にしたのは、手に持つ巨大な両手剣で無闇に暴れる騎獣の始末だった。

 それから統制力を発揮して、別々の入り口からの同時突入を部下ゴブに指示。魔術師ゴブリンも炎魔法をブッ放して、周囲は割とカオス状態へと突入。


 肝心の王様ゴブリンは、自慢の大剣で邪魔な倒木を破壊に掛かっている。当然ながら、この簡易要塞は倒木の薄い場所はスカスカの入り放題である。

 ってか、これを要塞とか秘密基地と呼んでいいのは小学生までかも知れない。


 片手剣を装備している護衛ゴブ×2匹は、それぞれ左右の隙間から挟み撃ちを仕掛ける算段らしい。慌てて両方向を指し示しているファーは可愛いが、こちらも案は考え済みだ。

 まずは片方の護衛ゴブに、風魔法の《風の茨》で束縛をプレゼント。次いで侵入を果たした護衛ゴブは、堂々と短槍で相手をしてやる。


 倒木の隙間要塞はやたらに狭いので、振り回す武器はどうにも不利ではある。そんな地の利を活かしつつ、確かコイツ等は闇魔法が苦手だったっけと思い出して。

 試しに《(ダーク)タッチ》を喰らわせてやると、突如の暗闇に慌てふためく戦士ゴブ。その隙に《四段突き》敢行で、ガッツリ敵の体力を減らしてやる。





 ――よしよし、こんな感じで数的不利は頭脳でカバーだ。








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